会長挨拶・コメント

定例記者会見

2014年7月16日に開催された会長定例記者会見要旨

早いもので貿易会会長に就任して1カ月半が経過した。この間の日本経済の動きをあらためて振り返ると、何といっても成長戦略の改定に注目すべきと考えている。

昨年発表された日本再興戦略が安倍政権による改革のスタートであったとするなら、今回の改訂版は、その改革をさらに深めて、本格化させたものとして高く評価できると思う。戦略に盛り込まれた各項目については、まず法人実効税率を20%台へ引き下げることを目指すと明記されたことを歓迎したい。

グローバル化が進んだ現在の世界においては、国の税制も国際比較の中で考えていかざるを得ない時代になっており、日本企業の国際競争力強化や外国企業の日本進出の促進といった国際的な観点が非常に重要になってきている。さらなる規制改革の実行も含めて、日本という国が産業立地の観点で、よりいっそう魅力ある国となっていくことを大いに期待している。また、農林水産業に対する攻めの姿勢が示されたことや、当会がかねて要望してきたグローバル人材の育成について盛り込まれたことも高く評価したい。

これらの個々の戦略が今後迅速に実行されていくことを大いに期待しているが、それにとどまらず日本が少子高齢化に立ち向かい、成長力を維持していくためには、これからも今回以上の改革を継続して打ち出し、実現していく必要があると考えている。

もう1つグローバル化について申し上げると、私はグローバル化には2つの側面があると思っている。1つは日本人が海外に出て活躍する「外へのグローバル化」。もう1つは外国人が日本に来て働いたり勉強したりする「内なるグローバル化」である。日本ではこの「内なるグローバル化」が「外へのグローバル化」と比べて立ち遅れている。

今後日本が現在の生活水準を維持し、向上させ、かつ、世界への貢献を果たしていくためには、世界とのつながりをいっそう強めていく必要がある。そのためには「外へのグローバル化」に加えて「内なるグローバル化」も強力に推進し、海外と日本がヒト、モノ、カネの相互交流を通じて、WIN-WINの関係をより多くの分野で実現していくことが必要だと考えている。

最近の訪日外国人数の増加は、こうしたWIN-WIN関係の実現に向けた明るい兆しであると思う。成長戦略にもこれに関連する項目が非常に多く盛り込まれているので、こうした施策の実現を通して、「内なるグローバル化」が一気に加速することを期待している。

次に日本貿易会の活動についていくつかご報告する。まず政府の成長戦略に関連して、当会はこのほど『日本の成長戦略と商社 日本の未来は商社が拓く』と題する書籍を出版した。この本は昨年4月に特別研究会を組成し、我が国の成長戦略の実行において、商社がどのような役割を果たしていけるかについて掘り下げて研究し、まとめたものである。この本の出版記念シンポジウムを7月29日に東商ホールで開催するので、ぜひ記者の皆様にも多数ご来場いただければと思っている。

2つ目は日本貿易会賞懸賞論文の募集についてであり、今年も募集を開始した。例年国内外から多数ご応募いただいているが、本年も幅広い層から斬新で示唆に富む論文が多く寄せられることを期待している。

最後に商社シンポジウムの開催についてである。正式には9月にあらためてご案内するが、今年も商社に関するシンポジウムを10月3日に開催することで準備を進めている。このシンポジウムを通して、とかく分かりにくいといわれる商社について、具体的な事例も交えつつ、果たしている機能などをご紹介できればと思っている。記者の皆様にもぜひご来場いただきたいと思う。私からは以上です。

質疑応答

(記者) 法人実効税率減税の代替財源についてお伺いしたい。法人税率を1%下げると4,700億円の財源が必要だといわれている。その中で有力視されているのが外形標準課税の範囲拡大、あるいは租税特別措置(租特)の縮小である。商社の場合、外資とジョイントベンチャーなどを組む関係で、法人実効税率が下がっても、資本割で納める税額が一緒になる、あるいは高くなってしまうことがあるように思う。外形標準課税の成り行きは、今後12月の税制改正で非常に気になるところではないかと思うが、日本の財政健全化との兼ね合いから、外形標準課税についてどのような意見を主張していくのかをお伺いしたい。

(会長) 日本の財政状況を考えると、やはり財政健全化は大事であり、同時に日本という国の競争力を上げていくことも大事である。

「内なるグローバル化」の関連では、ある時に振り返ったら日本にいる企業が少なくなってしまったということがないようにしたいと考えている。そのためには、日本を魅力的にする、「内なるグローバル化」を進めていただきたい。そうした思いから、法人税は下げていくべきだという気持ちを非常に強く持っている。

代替財源については政府内でもいろいろ議論されており、我々もいろいろなところで協力をする必要があると思う。しかし、代替財源によって企業そのものの力が弱まるような形になると、結局、日本経済に大きなダメージを与えることになる。その辺をよく考えた上でいろいろなことを合わせ技で実施いただく必要があると考えている。

(記者) 「内なるグローバル化」についてお伺いしたい。これから人口の減少が加速する中で、人材の多様化が必要であることは政府も指摘している。その中で、特に外国人の活躍というか、働き方について、具体的にどういうネックがあるのか。また、取り除くべき障害は何か。例えば医療など人材が不足している業界もあるが、特にどういった業界、分野において外国人の活用が日本の国力を高めることにつながるとお考えなのかをお伺いしたい。

また、「内なるグローバル化」に関連して、安倍政権は海外企業の対内投資の倍増という目標を掲げているが、法人税率の引き下げだけでなく、海外企業の対日投資増加について、政府への要望はあるか。商社が海外でいろいろな事業投資を行う中で、海外企業を日本に呼び込むチャンスについて、例えば、再生可能エネルギーや農業など、どういった分野にチャンスがあるのかをお伺いしたい。

(会長) 「内なるグローバル化」の観点でいえば、これまで日本で働くことに対する魅力があまりなかったのではないかと思う。その意味では日本の雇用形態を柔軟にする必要があるかもしれない。

米国のシリコンバレーなどを行き来してよく感じたのは、世界の優秀な技術者、あるいは若い人がシリコンバレーで起業できる環境にあったということである。翻って日本をみると、まだまだ受け入れが不十分なのではないかと思う。言葉の問題もあるが、いろいろな問題も含めて、外国人を受け入れやすい社会環境を作っていくことが必要ではないかと思う。

例えば、日本で留学生がアパートを借りようと思ったら、誰か保証人が必要である。企業の場合、それに加えて法人税や、エネルギーの問題などもある。ここは、日本全体として、総合力を発揮して、国際的に非常に競争力のある立地条件を提供できるようにすることが必要だと思う。一朝一夕に実現はできないが、着実に進展させていく必要がある。

また、インターナショナル・リニア・コライダー計画では、岩手県などの東北と、福岡県などの九州が誘致競争したが、1兆円規模とも言われる巨大事業が実現すれば、非常に優秀な海外技術者数千人が日本で働く環境ができる。こういう話が具現化すれば、瞬く間に日本が生まれ変わると、海外から受け止められるだろう。技能のある人をより多く日本に迎え入れることは、日本にとって非常にプラスになると思う。

従って、対日投資増加に向けた方策は、法人税だけでは不十分であって、いろいろな合わせ技が必要になると思う。特に、これからエネルギーのコスト、つまり電力代等は大きな要因になると思う。

「地産地消」という言葉があるが、日本では、実は「産」が少なくて「消」が多いという問題がある。例えば介護や、エネルギー、食料分野などは、ぜひ海外企業に来てもらったらいいと思う。シリコンバレーの話ではないが、海外の人たちはイノベーションを牽引する発想や実行力の面で、日本人にないものを持っているので、うまく融合できたらいいと思う。

(記者) 先日、経団連が女性活用について発表し、商社もいくつか事例が取り上げられていたが、小林会長はこれからどういった形で女性活用を進めていくべきとお考えか、また、特に商社は男社会と言われたこともあって、まだまだ古い体質が残っているのではないかという指摘もある中で、どのようなことをしているのかをお伺いしたい。

また、安倍政権は2020年までに女性幹部を30%にする数値目標を掲げている。経団連の発表では、数値目標を掲げている商社もあったが、数値目標を設けていないところもあった。これについては、各企業の事情があると思うが、安倍政権の掲げる30%という目標の達成についてどのようにお考えか。また、この数字自体をどう思われるかを教えていただきたい。

(会長) 確かに商社は男社会で、特に管理職のほとんどが男性ということもあり、女性をうまく活用することに不得手だったという面はあったと思う。しかし、21世紀になって、各社ともマインドセットを変えようと努力しており、その考えが定着してきている。その意味で、どういう定量的な目標を持つかは企業によって違うと思うが、現在は間違いなく女性が働きやすい環境になってきており、しかも女性が会社の発展に貢献できる形になっていると思う。先行しているところ、遅れたところといろいろあるが、21世紀に入って採用された人たちが2020年には40歳、45歳になっていく。おそらく、そのころからリーダーのポジションになる人が増えていくと思う。

従って、今の状況で30%が到達可能かどうかを考えると、すでに到達している企業もあるし、なかなか難しい企業もある。官公庁も含め、全体として実現していく努力が必要だが、多少時間のずれなどがあるにしても、この目標は実現できると思う。

(記者) 今後、成長を継続するためには今回以上の改革が必要とのお話があったが、今回の成長戦略で積み残した部分があればお伺いしたい。

(会長) ここで一番大事なのは、今回の成長戦略の中でいろいろと網羅されている各項目について、着実に、それもスピードを上げて実行していくことであろうと思う。

(記者) 安倍政権は非常に熱心に外交を行っており、7月下旬にも南米を訪問する予定である。南米は、商社も非常に重要なエリアとして考えているところと思うが、貿易会としても、そうした海外ミッションに期待するところなどがあればお伺いしたい。

(会長) 政府の海外ミッションについては、商社も非常に協力している。特に従来からの資源・エネルギー外交ももちろんだが、それに加えて、現在10兆円のインフラ輸出を2020年までに30兆円にするとの目標については、我々も国のトップと一緒に協働していきたい。

(記者) 政府は農水産物・食品の輸出を2020年に1兆円にする目標を掲げているが、ブランド戦略など商社として考えていることがあればお伺いしたい。

(会長) 2020年の1兆円の農水産物輸出目標に関しては、商社もいろいろなことができると思っている。従前から日本は、農産物を安定的に作って供給することには非常に力が入っていたが、半面、いかに安く物を作るか、どういう強力な販売ネットワークでそれを捌くかという議論が欠けていた。その辺に関しては、我々商社は、1次産業の人たちと一緒にいろいろな協業をし、全体としてのバリューチェーンを構築する機能を提供できるものと確信している。

(記者) 集団的自衛権が政府の解釈で行使できることになった。これについては、特に中国、韓国の反発があるが、ビジネス上で影響が出ているのかをお伺いしたい。

(会長) 集団的自衛権について、中国、韓国とのビジネス上のインパクト、影響が特に出ているわけではない。ただ、国と国の話ということで、きちんと相手に理解してもらうことが大事だと思うし、その努力はぜひ行っていただきたい。

(記者) 川内原発の審査が合格する見通しとなって原発再稼働となるので、エネルギーミックスについてどうお考えなのかをお伺いしたい。

(会長) 原子力の話については、やはり安心、安全な原子力は、ぜひ稼働してもらう必要があると思う。原発停止に伴って燃料輸入が増加しているが、それが貿易収支赤字の要因にもなっている。現状をみると、政府の省エネ方針が非常によく守られているので、原発稼働がなくても乗り切っていけるように思えるが、経済が成長し、いろいろな海外企業が日本に進出してきたときに、エネルギーコストが一番大きな問題になるのは明らかである。従って、安全なものから着実に動かしていくのが、日本の国益に合致すると確信している。

以上