会長挨拶・コメント

定例記者会見

2015年2月18日に開催された会長定例記者会見要旨

今年に入って、パリ、あるいはヨーロッパ、中近東のテロから始まってウクライナ問題など、めまぐるしく状況が変化しており、世界が何か混沌としている感じがする。その意味で地政学的なリスクというのは、我々商社業界においてもいろいろと出てくるのではないかと感じている。

また資源、エネルギー価格の問題に関連して、ロシアやブラジル、ベネズエラの経済は、将来の見通しがなかなか立ちにくい状況になっており、非常に難しいスタートを切ったと思う。しかし、世界経済そのものは、米国を筆頭として、ASEANを中心にアジアも頑張って3.5%前後の成長は見込めると感じている。

日本に関しては、本日常任理事会に厚生労働省の村木事務次官をお招きしていろいろお話を伺ったが、人口問題は、やはり正面からとらえて対処していかなければいけないと感じた。

特に地方でどのように雇用を創り出すかについては、いろいろな問題がある中で、我々も政府に何か協力できれば、あるいは、我々自身が主導的に何かできればと思っている。その意味で政府の日本再興戦略に関して、日本貿易会としてできるところはしっかりと協力していきたいと思っている。

農協改革、JA改革については、岩盤規制の打破に半歩、もしくは一歩踏み出したということであろう。現実にこれから農業従事者の所得をどう上げていくか、それが地方の活性化にどうつながるかなど、具体的な課題がたくさんある。農業の競争力を強化するために、農産品やその加工製品をどのように販売していくか、全体のバリューチェーンで我々はどんな貢献ができるか、農業界の人ともいろいろ話をしてみたいと思っている。

一方、TPPがどうなるかについては先が見えないところがあるが、政府にはできるだけ早い妥結を目指して交渉していただいているので、それを後押ししていきたい。また、今年はASEANの共同体が発足するので、ASEANの10カ国も含めて、新しい日本の在り方と、その延長で商社の活動をどうすればいいかということについてもTPPと並行して考えていきたい。

私は、「外へのグローバル化」に対して、「内へのグローバル化」ということを何度もお話ししているが、これは地方再生等に直結するので、引き続き力を入れて取り組んでいきたい。いろいろ課題はあるが、今年も明るく楽しく元気にやっていきたいと思っているので、引き続き商社業界に対するご支援をお願いしたい。

私からは以上です。

質疑応答

(記者) 今国会でJA全中の監査権を廃止する改正案が成立する見通しである。この改正案の評価をお伺いしたい。また、商社として具体的に農協関連でどのようなビジネスが広がると考えているのかを教えていただきたい。

(会長) 全中は創立から既に60年が経過しており、その意味では、700の農協にいろいろな自由度を与えるなど現状に合わせた改革を行い、新しい農協の在り方を追求していくスタートが切れたのではないかと感じている。

商社ができることはたくさんあるが、一番大きなポイントは6次産業化に対する支援だと思う。今は(農業生産法人への)出資制限などがあるので、これがどのように緩和されるかといった規制改革などの動きと歩調を合わせて、推進していかなくてはいけないと思う。現状でも、商社は、日本の農協等が農産品をアジア中心に展開していく際の支援も行っているし、日本の畜産業等に必要な穀物を安く輸入する努力も行っている。業としての農業を育成するために我々としてできるところは、全体のバリューチェーンの構築などを通じて、競争力のある農産品を素早くお客様に届けることであろうと思っている。

(記者) 商社と農協がアライアンスを組みやすい環境を整えるために、政府にどのようなことを求めているのか。昨日も肥料業界でJA系と商社系が統合するニュースがあったが、そのようなトレンドも含めて教えていただきたい。また、農産品輸出というとどうしてもTPP問題が絡んでくると思うが、農協はTPP反対であり、日本貿易会は推進する立場である。そのあたりの整合性をうまく取るために政府にどのようなことを求められているかを教えていただきたい。

(会長) 農協改革の骨子は、農業従事者の所得をどう上げていくかということと、業としての農業をどのように繁栄させていくかということに尽きる。一番大事なのは、まずは競争力のある農産品を作ることであり、それにどのように付加価値を付けて製品として販売し、輸出できるかということだと思う。

農産品の競争力強化に関しては、ICT技術やロボットの導入など、我々はいろいろな意味で協力ができると思っている。販売やバリューチェーンに関連したところは、まだこれから連携拡大の余地が大きい。

2014年の農林水産物の輸出額は6,000億円を超えたので、これからは1兆円、2兆円という目標に向けて努力することになると思う。例えば、北海道の農産品は北海道というブランドだけでも結構売れる。また、日本の農産品は安心、安全と健康などいろいろなアピールポイントがあるので、積極的に展開していけると思う。そのあたりのお手伝いも我々商社業界はできると確信している。

またTPPとの関係に関しては、全農や全中の方と話してみると、日本が自由貿易、つまり「貿易立国」でいかなければならないという必要性については共通の理解があると思う。

(記者) 農業に関する規制改革はまだ不十分なところがあるとのご指摘があったが、それは農地に対する企業所有の完全開放などを指すのかをお伺いしたい。

(会長) 農業所得を上げるためには6次産業化が必要だが、6次産業化、あるいは農業そのものに企業がどのように参入できるかという点については、いろいろ問題がある。現在、規制が緩和されつつあるが、今の状況では参入に踏み切れない企業が多いと思う。

農業の効率化の好例としてオランダがよく挙げられるが、地方を活性化させる観点で、日本の農業の生産性向上について我々ができることはたくさんあると思う。

その中で、特にレビューしなければいけないのは、農林水産省が設立したA-FIVEファンドがほとんど使われていないことである。これは、使い勝手が悪いためだと思うので、その改善もこれから必要になると思う。

(記者) イスラム国関連の問題で日本人の人質が殺害される事件が起きた。イスラム国問題や中東情勢の変化によってビジネスに影響が出ているのか、今後どのような影響が予想されるかを教えていただきたい。

(会長) 今回の惨状は本当に悔しくて残念で仕方がない。亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りする。

今回の一連の事件をみると、地政学的に本当に難しい時期に入ってきたように感じる。

テロは、世界中いつどこで起きるか分からない怖さがある。我々商社業界は、グローバルに事業を展開しており、難しい国に駐在、あるいは出張される方もいる。その意味で、安全を最優先として業務に当たるように指示しており、外務省や大使館等といろいろ協議をしながら、日本のために、あるいは個社のために社員に頑張ってもらっている。

ビジネス関係において、危険を冒してまで駐在や出張を命じることはないが、そのために、今日現在でビジネスに顕著な影響が生じているということはないとご理解いただいて結構である。

(記者) 春闘がこれから本格化していくと思うが、商社業界として他業界に先駆けて目指す方向があるのか。また、全体としてどうあるべきなのか。今年の春闘についての見方と対応について教えていただきたい。

(会長) 商社業界ではいわゆるプロフィットシェアというコンセプトがあり、業績がよければ従業員の給料が上がる体系になっており、伊藤忠商事も同じである。すべての会社の状況を把握しているわけではないが、労働組合ともそういう形で合意していると思われる。その点が春闘に関しては多少ほかの業界と違うところかもしれない。

(記者) 先日のODA大綱見直しで、卒業国に対しても資金を付けることができるようになりそうだが、そうなるとブラジルや中東、トルコなども対象となり、いろいろチャンスが広がるかと思う。その辺の手応えとご意見をお伺いしたい。

(会長) いわゆる「ODA卒業国」でも日本からのサポート、援助を必要とする国は多い。それにきちんと応えていくことは非常に大事なことであり、今回の見直しに関しては我々としては大歓迎だということがまず言えると思う。

それが商社の仕事につながるかどうかは個々のケースを見ないと分からないが、日本の立場をどう引き上げていくかという観点も含めて、一緒にできるところはぜひお手伝いしていきたいと思っている。

(記者) 来月から大学生に対する採用説明会が解禁になる。これは大学生の採用活動が後ずれになって初めてになるが、いろいろ短期決戦になって人材の獲得が非常に厳しくなるかもしれないし、ルールがどう徹底されるかという懸念もある。採用企業側の向き合い方について、会長としてお考えがあったら、あらためて教えていただきたい。

また、日本貿易会としては、多様な人材の確保のために通年採用の実施も求めてきた経緯があったと思うが、そもそもグローバルに活動する中でスケジュールを縛った形での採用活動の在り方についてどう思われるのか、についてもお伺いしたい。

(会長) 採用活動についてはお話しの通りである。当会からもいろいろ意見を発信した経緯もあり、これに関してはきちんと約束事を守っていくことで特に今何か支障があるとは感じていない。

採用方法については、日本の教育制度や文化とリンクしている面があるので、新卒採用をやめるというオプションはおそらくどの企業も取らないと思う。ただ一方で、その都度必要な人材を採用していくことは、日本でも世界でも必要になっているので、新卒採用と通年における中途採用との2本立てでいくとご理解いただいて結構である。

(記者) 来月で東日本大震災からまる4年になる。復興がどの程度進んでいるのか、商社業界としてどういうお手伝いができるのかについて、何かお考えがあったらお伺いしたい。

(会長) 震災に関しては、我々商社業界としては、例えば米国大使館などと組んで被災地の青少年を米国に派遣するなど、いろいろな方法で被災された方を鼓舞してきた経緯がある。

一方、個人的な感想としては、東北の方が一番心配しているのは震災の記憶が風化することだと思う。それに関しては、我々自身も一国民として自分自身の記憶を風化させない努力をして、3年、5年、10年と継続的にいろいろな支援をしていきたい。

伊藤忠商事のケースを紹介すると、例えば陸前高田で環境の悪化に強い米を作って、そのお米を東京のデパート等で販売している。いろいろな取り組みをいろいろな商社が続けており、引き続き頑張ってやっていきたいと思う。私自身は、3月15日から東北で開催される国連防災世界会議の関連事業に参加する予定であり、これからも協力を続けていく。

以上