会長挨拶・コメント

定例記者会見

2017年2月15日に開催された会長定例記者会見要旨

本年最初の会見になるが、年初から世界情勢は極めて混沌としており、先行きの不透明感が強く、予断を許さない1年になると予想される。米国の新政権が打ち出してくる経済政策、さらには欧州の政治の動き、党幹部人事を控える中国の動向など、全世界的にさまざまな動きが出てきている。日本企業はこれらをしっかりと見据えて、正確な状況分析と的確な経営判断をしていく必要がある。

注目を集めていた安倍総理とトランプ大統領の首脳会談は非常に前向きな内容となり、日米双方にとって成功、かつ満足のいく結果になったと判断している。麻生副総理とペンス副大統領の下で経済対話を立ち上げることが決まったが、この対話から現在の良好な日米関係をさらに発展させていく政策が生み出されていくことを強く期待している。

一方で、当会が長く切望してきたTPPの発効については、当面は停滞し、先が見えないという状況にある。しかしながら貿易と投資が国際分業を通じて、経済活動の効率化をもたらし、世界経済の成長を力強く牽引していくという基本理念には変わりはなく、これは日米で引き続き共有できるものと確信している。当会は今後も自由貿易と国際投資活動の重要性をアピールし、その促進に向けて積極的に提言活動をしていきたい。

また欧州では、これからの数カ月、英国のEU離脱通知、フランスの大統領選挙など、重要な政治イベントが「めじろ押し」の状況になっている。欧州がどのような決断を下し、世界がどのような影響を受けるか、しっかりと見極めていく必要がある。このように政治経済環境が不透明で不安定になっている状況下では、ともすると短期的に過剰反応したり、あるいは長期的な経営方針を過度に変更したりといったことになりがちであるが、不安定な環境下でこそ冷静沈着に、長期的視点を失わずに経営方針をしっかりと考えることが必要である。

特に大切なことは、政府、経済諸団体、個々の企業がよく連携し、重要情報を共有して、それぞれの組織が的確な判断を下していくことである。当会は今年も貿易業界、さらには日本経済のために精いっぱい貢献をしていきたい。

私からは以上です。

質疑応答

(記者)政府の「働き方改革」において、残業時間は年720時間の上限が示された。貿易会としてどのように受け止め、どのように対応していく予定か。

(会長)貿易会の加盟企業は、さまざまな工夫をしており、すでに取り組んでいることがほとんどであろう。従業員がより健康的な生活をし、しかも業務に集中できる、あるいは家庭と会社とをうまく両立させるという観点から、各企業の努力はまだまだ続くと思うが、それほど違和感なく、受け止めている。

(記者)本日、全日空が日本―メキシコ直行便を就航させた。それについての期待感や意義を伺いたい。一方で、トランプ政権の下で、メキシコでビジネスを展開するリスクをどのように捉えているか?

(会長)中南米の拠点であるメキシコにフライトを就航させるのは非常に良いことであると思う。少なくとも日本企業にとって、特に米国、カナダを中心とするNAFTA市場に対するメキシコの重要性は、トランプ大統領の様々なコメントがあるとしても、決して変わるものではない。

おそらく、多少の調整はあるかもしれないが、米国にとっての、日本にとっての、あるいは他の中南米諸国にとってのメキシコの重要性は決して変わるものではない。そういう観点では、引き続き日本企業として注力してよい国のはずであり、特に現在の日本と米国は、今回の安倍総理の訪米を通じて非常に良好な関係を築いているため、日本企業のいろいろな立場も含めて良い形でのまとまり方をしていくと期待している。

リスクがあるか、ないかということについては、少なくともトランプ大統領の発言の推移をそれなりに注視する必要はあるが、グローバル化、NAFTA、あるいは今後の米国の将来の成長の方向性を見たときに、現在の状況から大きく逸脱することは想定できない。その意味では今回の全日空のフライト就航についても期待するところ大である。

(記者)トランプ政権の政策によって、特に中国経済の鈍化、景気失速のリスクを懸念する声も聞かれるが、新政権の政策が中国経済に与える影響をどのように見ているか伺いたい。

(会長)米中関係の今後については現状では予測できないが、現在の中国経済を見ると多少なりとも下降気味の側面があるかもしれない。それでも、少なくとも今年1年で見れば、しっかりとした景気の状況になると確信している。

秋の党大会等もあるため、それに向けて当然、国としての対応がみられると思う。グローバリズムに関しては、それほど変わるはずがないし、世界の大きな流れの中で、全く違った方向に向かうようなことはなく、全体としてはそれほど心配していない。

(記者)日米首脳会談では、2国間FTAを求めてくることや為替相場について注文が出ることはなかったが、あらためて会長の受け止めを伺いたい。また、米国のムニューチン財務長官の議会承認も行われ、これから対話が始まると思うが、逆に政権の体制が整ってきたことによって、「日本は為替操作国だ」といった大統領の無謀な発言は今後控えられると考えるか。

(会長)まず2国間関係に関して、非常に緊密な関係構築ができ、両国のトップが意思疎通できる関係になっているのは素晴らしいことである。具体的な経済政策についてはこれからの議論次第だと思うが、麻生副総理とペンス副大統領との対話が為され、全体の大きな流れに関しては、それに誰もさおを差すはずはなく、世界のこれからの発展に必ず寄与すること、すなわち、個々の国民にとってプラスになるという判断をするはずであることから、非常にスムーズな方向に進むと思う。

ただTPPそのものに関しては、トランプ大統領が離脱とまで発言しているため、見直しの議論が出るのはやむを得ないと思う。それが今後、2国間での交渉となるのか、あるいはもう少し包括的な形となるのかは分からないが、やはり世界全体で成長していくという大きな方向性を踏まえると、そこからは逸脱しないと思っており、大きな心配はしていない。経済の現実に基づいて、非常に現実的な路線に向かうのではないかと考えている。

(記者)米国がTPPから離脱することに関して、また日米FTAという可能性に関して、会長はどのように見ているか。TPP交渉は12カ国のマルチで行われたため、ある意味、米国からも良い条件を引き出せたとも言われている。日米2国間での交渉の場合、特に農業分野の交渉は厳しくなるとも言われているが、米国との2国間交渉への懸念といったものはないか。

(会長)その件に関しては、メディアで報じられる以上の情報を持ち合わせていないが、日米2国間交渉が提起された場合には、当然きちんと議論しながら、次のステップにいくということになる。ただ一つだけはっきりしていることは、TPPを経由していろいろな議論をしてきたため、少なくとも米国との対話、あるいは他の11カ国との対話も、そのTPPの議論から大きく逸脱することは考えにくいことである。

おそらく12カ国で交渉するよりも2カ国の交渉の方が厳しくなるとは言えると思う。その意味で、日本として受けられるところ、受けられないところ等、我々経済界も含め色々な議論をする必要があり、真剣な議論になる可能性があると思う。

(記者)TPPに関して、米国抜きの形を模索したらどうかという動きがあると思うが、それに関する所見を伺いたい。

(会長)個人的には、やはり米国と日本がこのTPPの中核となるという思いで支援してきたし、さまざまな要望も出してきたという経緯があるため、米国がその枠組みから抜けることについてはイメージし難いことではある。米国が枠組みから抜けた場合、他の11カ国にどのようなメリットがあるのか。例えば、東南アジアの交渉参加国は、特にアパレル製品等の自国から米国への輸出のメリットを考えたはずである。そういう意味で、基本的に市場としての米国を重視していた背景を考えると、その米国が枠組みから外れることはイメージが難しい。だからその辺についても、もう少し分析が必要であろうと思う。

貿易立国である日本は、大きな自由貿易の枠組みの中で成長した国であり、今後もそのはずであるから、やはり大きな自由貿易圏を形成していくという思いで、これからも我々としては提言をしていきたい。

(記者)TPPの発効が難しい状況になった現在、日EU・EPA交渉がマルチの枠組みとしては唯一動いている状況にあるが、日EU・EPAの意義、期待感について伺いたい。

(会長)EUとのEPAをどういう形で決着させるかということについては、日本にとって非常に大きな意義を持っており、経済連携のモデルケースの1つになると思われ、我々も大きな期待をしている。

昨年12月末までに交渉を決着させるところであったものが、先延ばしにはなったが、EUとの経済連携の関係構築は、貿易立国、自由貿易という大きな枠組みをつくる上で、どうしても必要であると考えており、引き続き、特に政府に対してさらなる交渉決着に向けた取り組みをお願いしたいと思っている。

(記者)NAFTAに関連してメキシコでの受注減少等の影響が出てきているのではないかと思うが、今後、NAFTA再交渉でメキシコに不利なことにならないと思われる根拠、理由について伺いたい。

(会長)米国経済は非常に堅調で、順調に成長していると理解しており、FRBのイエレン議長も上半期中の利上げの必要性に言及している。

米国がどこから必要なものを購入するのかを考えると、国内に代替品が無い以上、従前から買っている国、例えばメキシコから買うという以外のオプションは考えられない。やはり現状の流れが続くということが、まずは前提として考えられる。

今後どのように投資をしていくかということについては、米国政府がどのような圧力をかけてくるのか、政策を打ち出すのか等、不確実な要因があるが、「昨日までメキシコで製造していたものを、すべて明日からは米国で製造する」などということはあり得ない。その意味では、多少の調整はあるかもしれないが、それ以上のことは今のところ想定できない。

(記者)日米首脳会談までの動きを見て、トランプ氏のイメージ、評価に何か変化があったか、現在、どのようにお考えになっているか伺いたい。

(会長)コメントは難しいところであるが、案外、主要な人物の発言には耳を傾ける人物ではないかというのが、今回の日米首脳会談を見て感じるところであり、基本的に現実的な路線を取る方ではないかと思う。経済人は基本的に現実路線を考え、利潤を上げながら従業員を養い、社会に貢献するという当たり前のことを基本としているため、その点に関しては共有できるところである。

ただ、大統領の「ケミカルが合う、合わない」という発言については、要は好き嫌いがあるということをはっきり表明しているわけであり、やはり注意しなければいけないという点は、従前とあまり変わらない印象である。

以上