会長挨拶・コメント

定例記者会見

2017年7月19日に開催された会長定例記者会見要旨

はじめに、九州北部での記録的豪雨で犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に対して心よりお見舞いを申し上げたい。

早いもので前回の5月17日の記者会見から2カ月が過ぎた。前回はベトナムで開催されたTPP11閣僚会合、イタリアで開催されたG7サミットの直前でもあり、保護主義や反グローバリズムの流れに対抗して、TPP11をはじめとする自由貿易体制推進の動きをぜひ前に進めてもらいたいというお話をさせていただいた。

その後もG20の場などにおいて、依然として保護主義と自由貿易の駆け引きが続いているが、そうした中、7月6日に日EU・EPAの大枠合意が宣言された。日EU・EPAでは、GDPで全世界の3割弱、貿易額の3分の1以上という、世界経済で大きなシェアを占める29カ国が大幅な関税の引き下げに加え、投資の促進、貿易手続きの円滑化など、非常に高度なレベルでの自由化に大枠合意をしたわけである。

このEPAが自由貿易体制の維持、拡大、さらには今後の世界経済の動向に大きなインパクトを与えることは間違いない。本格交渉開始から4年余りにわたり、粘り強い努力を続けられてきた関係者に、あらためて敬意を表したい。また、この流れに乗ってTPP11も一刻も早く実現することを強く期待をしている。

日本貿易会は貿易と投資を通じて国際社会の発展と、我が国経済の繁栄に寄与することを目指す商社の業界団体である。当会にとって自由貿易推進はまさに「一丁目一番地」の活動テーマであるが、これに関連してもう1点、ご案内したい。お手元にご案内をお配りしているが、現在、募集活動を行っている日本貿易会賞懸賞論文のテーマも、当会の創立70周年に当たり、ずばり、「自由貿易体制の今後のあり方」としている。

この懸賞論文募集は今年で13回目となるが、国内外を問わず、英語、日本語、いずれでも応募できるユニークな懸賞論文として注目を集め、昨年は日本を含め世界53カ国から189点の応募をいただいた。今回あらためて自由貿易体制の意義、その課題と解決策について、多くの方から提言をいただき、世論喚起に役立てていきたいと思っている。

貿易記者会の皆様におかれても、ぜひこの論文募集につき広くご周知をお願いしたい。私からは以上です。

質疑応答

(記者)冒頭のご発言で、日EU・EPAの大枠合意は大きなインパクトを与えるというご指摘があったが、具体的にこの合意内容について、どのようなところを評価しているのかお伺いしたい。

(会長)日本は明治維新以降、貿易立国として自由貿易の流れに乗って成長し、今後ともその維持・発展に力を注がなければいけない状況にある。そういう意味で、非常に高度な経済連携協定をつくっていくということが国是であると考えている。日本とEUの間で、関税引き下げなどの自由化措置につき深い議論が行われ、大枠に合意したことは、TPP11や、その先のRCEP交渉につながる1つのベースになると確信している。

RCEPの場合には、参加国の中には、「高度な水準の自由化ではなく、もっと平均的な水準でもいい」という発想もあり得るわけであるが、日EU・EPA大枠合意を通じて「世界の大きな流れはこうなっている」ということを示すことができたのではないかと考えている。

まだ大枠合意であるから、最終合意・発効に至るまでにこれから多少の道のりがあるが、合意ができたということは非常に大きな成果であり、わが国の戦後の貿易の歴史の中でも最大のイベントと言ってもよいのではないか。

これを前例として、TPP11あるいは米国を含むTPP12、そしてRCEPにも展開していくことを期待している。

(記者)明日で米国のトランプ大統領の就任から半年になるが、この半年間の政策の推移をどのように評価されているかお伺いしたい。

(会長)トランプ政権に関しては、まだ各省の次官級より下の幹部が任命されていないなど、政策をきちんと議論し作り上げていくための体制が未整備との印象。日米経済対話についても、実務的に政策を議論する相手が見えていない。駐日大使が最近決まったことは大きな前進だが、国務省のアジア局長なども含め、早く任命されることを期待する。

(記者)トランプ政権が鉄鋼製品の輸入に制限をかけようとする動きを見せているが、これが世界経済や日本経済に与える影響についてお伺いしたい。

(会長)鉄鋼製品の輸入制限の動きは、中国をターゲットとしたものだと思うが、これが日本に対してどこまで影響を及ぼすのかを判断するのは時期尚早ではないか。トランプ政権のこれまでの半年の動きを見ていると、一旦、施策を打ち上げたものの、その後の反応によって別のアプローチを取っている。本件についても取りあえず「アドバルーン」は上がったけれども、本当にどうなるのかということに関しては、まだ見えていないというのが現状ではないか。

(記者)米国経済について、自動車など消費にやや陰りも見えているが、今後の景気の見通しについてお伺いしたい。また、カタールに対する制裁問題の解決が長引いているが、これが長期化するという前提に立つ場合、どのようなリスクがあるのかお伺いしたい。

(会長)米国経済の景気については、堅調という見通しを我々は持っている。ファンダメンタルズという観点からすると、新しい産業が生まれている、また住宅市場を見ても、強い需要があるなど良好で、2%強の成長は当面続くのだろうという感じがする。FRBが、利上げに続いてバランスシート縮小にも着手する方向性も見せていることは、他国への波及効果を懸念しながらも、自国の経済に自信を持っているということではないか。

現地からの報告を聞いても、米国経済は非常に強いということで、当面は米国が世界経済を牽引していくだろうと見ている。特に新しいビジネスでの米国の存在感は大きく、日本も追いついていかなければいけない状況にある。

カタールの件は、従前は米国の影響力によって顕在化を抑えてきたが、状況の変化もあり、摩擦が起こっていると思う。現時点では、経済的にそれほど大きなインパクトがあるとは見ていないが、どのように今後動いていくのか留意が必要だ。特に「イスラム国」の問題がようやく鎮静化しつつある中で、イランやトルコが絡んで中東全体の混乱に拡大するのは避けたい。誰かがきちんと仲介をして、うまい形で着地点を見つけられることを願っている。

(記者)米国もNAFTAの再交渉を本格化させており、今後、日米経済対話も具体化していくと思うが、日米の二国間交渉についてのお考えをあらためてお伺いしたい。

(会長)米国側から具体的に何か要求や提案が出てきているという話は聞いていないし、おそらく実際に議論はなされていないのだろうと推察する。

分かっている話としては、「米国の対日貿易赤字が7兆円あるから、それをどうにかしてほしい」という問題意識を米国側が持っている程度である。

もう少し実務レベルでの議論に入った段階で、我々から要望等を政府にお出しすることもあると思うが、現在のところ時期尚早という感じがする。ペンス副大統領と麻生副総理との会談が次にどういう形で行われるのかを注視しながら、じっくり構えていくということしかないのではないか。

一方でTPP11については、日EU・EPAの大枠合意を受けて、少なくとも11カ国がこういう形で合意したという1つの結論を出せば、RCEPにもいい影響を及ぼすであろうし、米国に対しても翻意を促す、あるいは、もう1度TPPに参加する価値をレビューしてもらいたいというメッセージになるのではないか。

以上