会長挨拶・コメント

定例記者会見

2018年9月18日に開催された会長定例記者会見要旨

皆さん、おはようございます。

本日は最初に、北海道地震で犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表すると共に、被災され、不自由な生活を送られている皆様に、お見舞いを申し上げたい。西日本を直撃した台風21号も含め、自然災害による被害が頻発しているので、企業としても危機管理体制を万全にしていく必要があると、改めて感じている。

ところで、前回7月の記者会見以降も、米国を中心に、貿易や投資環境をめぐる様々な動きが見られる。先ほど米国が、中国からの輸入品2,000億ドル分に対して、第3弾の制裁関税10%を課すことを発表した。これで米国の対中制裁は累計で2,500億ドル分が対象となり、中国からの年間輸入総額の半分に達する。しかも、米中間の摩擦はまだ収束の気配が見えない。

一方で、トランプ政権が進める個別交渉では、EUと7月末に、自動車以外の工業品の関税撤廃や米国品の輸入拡大に向けた交渉を開始することで合意した。NAFTAについても、メキシコとは見直しに合意し、残るカナダと詰めの交渉が続いている。日米間では8月9日、10日とFFRの初会合が行われた。米国はFTAを念頭に2国間交渉を求めたが、日本がTPPなど多国間の枠組みを主張したため、実質交渉は2回目以降に持ち越された。

次回FFR交渉は月内開催との報道もあるが、NAFTA見直しに目処を付けたことで、日本への交渉圧力がさらに強まることが予想される。日本貿易会としては、WTOの機能強化とTPPなど地域経済連携の拡大により、公正なルールをベースとして自由貿易体制を堅持するよう訴えている。日本政府には、商社を含めた日本企業が、米国経済において多大なる貢献をしていることも踏まえ、自由貿易の原則に立った粘り強い交渉を期待する。

最後になるが、日本貿易会の活動を2つご報告させて頂く。ひとつめは、9月21日に北京で開催するシンポジウムである。日中平和友好条約締結40周年を記念し、北京外国語大学・日本学研究センターの協力を得て、同大学内のホールで開催する。当会が日中経済交流で果たしてきた役割や、今日の商社機能などにつき、中国の大学生にアピールしたいと考えている。

もうひとつは、今年で6回目となる商社シンポジウムで、10月26日に東京で開催する。今回はイノベーションとパートナーシップをキーワードに、学生・社会人など幅広い方々に、「商社のいま」をご理解頂く場として位置付けている。IoTビジネスなどの開拓に取り組んでいる最前線の商社幹部が登壇するので、多数の皆さんにご参加頂きたい。

私からは以上です。

質疑応答

(記者) 米国による対中関税第3弾の日本と世界経済への影響について、どのように見ているか。

(会長) 米国・中国は日本にとって大きな貿易相手国、投資先国であり、日本経済への影響は少なからず出てくると考える。同時に世界でGDP第一位と第二位の国であり、世界経済への影響も避けられないであろう。何とか話し合いによって、対立がエスカレートすることを食い止められないかと考える。世界経済は、自由貿易体制を踏まえた上で発展していくのが本来のあり方であり、このような関税は、遠くない将来に、必ず消費者に影響を及ぼし、さらには企業活動も抑制されかねない。立て直しには時間もかかるので、自由で公正な貿易体制に早く戻して頂きたい。

(記者) 米国による対中関税第3弾による商社への影響はどうか。また、中国経済へのリスクについても、お聞かせ願いたい。

(会長) 短期的には、関税が上がれば、貿易量が減少する可能性が高いので、商社の取扱量に影響が出てくる。中長期的には、投資判断の先送りによる影響が懸念される。中国は、海外志向から国内市場重視へ方向転換を図っているとの報道もあり、インフラ投資や内需拡大への期待はあるが、今回の制裁関税の影響がどの程度出てくるのかはまだ見えておらず、投資には慎重にならざるをえない。

(記者) 第3弾は関税の対象品目が広がり、消費財関連も増えているが、米国経済のどのようなところに影響が出ると見ているか、具体的に教えていただきたい。

(会長) 米国では、サンクスギビングデーからクリスマスにかけて年間消費のピークを迎えるので、この時期に消費財全般が値上がりするとかなり影響が出るのではないか。特定の分野というよりも、かなり広い分野という意味での心理的な影響が、消費全般に広がることを危惧する。

(記者) 経団連会長発言を受けて、大卒一括採用ルールのあり方について、議論が始まっている。見解をお伺いしたい。

(会長) 経団連の中西会長は、同じようなルールが続いてきた中で、その必要性も含め、改めて考えてみるべきではないかと問題提起をされたととらえている。当事者である企業、大学、学生の3者がしっかり議論した上で、3者にとって最もよい解決策を追求すべきだと考える。留学生の秋採用や、キャリア(中途)採用の拡大など個別企業で行える解決策もあるが、一括採用ルールは企業全体の対応が前提であり不可欠。仮にルールを廃止して、就職活動が長期化すれば、学業に影響が及びかねない。しっかり勉強した学生を企業が採用するという前提も崩れてはならない。そのあたりを当事者である3者でよく議論してもらいたい。

(記者) トルコ、ベネズエラなど新興国経済のリスクをどう見るか。

(会長) 新興国は対外債務を多く抱えており、経済が為替変動の影響を受け易い。不安定な為替変動等により、経済危機が起きた場合、他の債権保有国に負の連鎖が広がる可能性があり、動向を注視している。

(記者) 本日開催予定の南北首脳会談に期待されること、商社を含めた経済への影響につき、どう考えられているか。

(会長) 経済界としては、ビジネスを行っていく上で、平和な環境下での経済成長が一番望ましく、まずは朝鮮半島の平和確保に向けてできる限りのことをしていただきたい。

(記者) 米国による対中関税第3弾の商社業績への影響について、見解をお伺いしたい。

(会長) 現在の総合商社の収益構造からすれば、短期的に多少トレードが減少しても 業績全体に対する影響は大きくない。一方、中長期的には、米国や中国の事業会社の収益に影響が出てくる可能性がある。加えて、中国経済の先行き不安などにより、資源価格などの市況に影響が出てくると、商社の収益にも影響が及ぶ可能性がある。

(記者) 中国の株安、人民元安のリスクをどう見るか。

(会長) トレードは輸出入両方あり、人民元安がプラスに働く場合と、マイナスに働く場合がある。現在のところは、商社に大きな影響があるという話は聞いていない。中長期的には、中国の経済が内需志向から、過去のように外向きに戻っていくかどうかが、大きな注目ポイントになろう。

(記者) 英国がEUから合意なしに離脱する場合、世界経済や商社ビジネスへの影響について、教えて頂きたい。

(会長) 商社によって違いはあるが、英国内取引規模は限定的であり、また大陸側にも、オフィスを構えているので、影響の度合いはさほど大きくないのではないか。むしろ、離脱問題などで、EU各国の足並みが乱れ、結果としてEU経済全体が停滞してしまうことの方が影響は大きいと考える。

(記者) FFRで日本に関して、貿易会として一番懸念することは何か。

(会長) 自動車への課税問題の行方に一番大きな関心と懸念を持っている。日本としては、2国間ではなく、TPPなど広域での経済連携の中に米国を引き入れていく、もしくは加盟国を増やしていくような形で環境を固めていくことが大事だと思う。

以上