会長挨拶・コメント

定例記者会見

2018年11月21日に開催された会長定例記者会見要旨

皆さん、おはようございます。

最初に、今後の世界の政治・経済を見通す上で、重要なポイントになると注目されていた米国の中間選挙が終わった。結果は大方の予想通り、上院は共和党が多数派を守り、下院では民主党が多数派を奪回した。トランプ大統領としては、下院の承認が必要な法案などは、民主党の協力が必要となることから、超党派での合意が見込めるインフラ投資などの推進に注力する一方、議会承認が不要な政策は、大統領権限を駆使して、一層強力に進めることが予想される。その代表例が通商政策であり、まさにこのタイミングで、日米交渉が始まることから、日本としては厳しい交渉を覚悟しておく必要がある。

通商政策については、10月末までに6カ国がTPP11の手続きを終えたことで、12月30日の発効が確定し、大変喜ばしい。一方で、RCEPの妥結が来年に持ち越されたのは大変残念だが、分野ごとの合意は着々と積み上げられており、高いレベルで妥結できるよう、関係者の一層のご尽力を期待したい。

また、先週12日には、ジュネーブのWTO会議で、日米欧が共同で、WTO改革案を提案した。加盟国がWTOへの報告なしに自国産業への優遇策を継続すれば、罰則の適用を可能にするのが柱である。アゼベドWTO事務局長もこの提案を「改革の第一歩」と評価しており、早期に承認、実施頂きたい。ここで重要なのは、WTOに不満を持つ米国を巻き込み、日米欧による共同提案を実現できたことである。WTOが機能不全に陥り、一番困るのは、他ならぬ貿易の主要プレイヤーである日米欧である。米国にも多国間のルールに基づく 貿易・投資の重要性を粘り強く訴え、共同歩調をとって頂く必要がある。同時にTPP11や日欧EPA、RCEPなどの地域経済連携の輪を可能なところから広げていく地道な努力も重要である。

日本貿易会の活動に関しては、当会初の海外イベントとなる、日中平和友好条約締結40周年記念シンポジウムを 9月21日に北京で、また、第6回目となる商社シンポジウムを10月26日に東京で開催し、いずれも多数の聴衆に参加いただいた。

特に北京で開催した記念シンポジウムの参加者は、日本語を学んでいる学生や大学院生が中心で、強い関心を持って頂けたことが印象的であった。日本の商社の説明に加え、日本貿易会や商社が関わった日中経済交流の歴史、それに現在の米中貿易摩擦の回避策を検討する上で、80年代の日米貿易摩擦の経験を生かすなどというテーマや視点に、真剣なまなざしで聞き入っていた。質疑応答では質問がやまず、時間を延長したが、その後に学生食堂で開催した交流会でも、私を含めた日本側参加者が熱心な学生に囲まれ、質問攻めに合った。

東京で開催した商社シンポジウムも、500名近い参加者のうち100名程度が学生であった。日本貿易会としては、若い世代の人たちを中心に、商社の機能や活動に対する理解を深めて頂ける様な活動をぜひ継続していきたい。

私からは以上です。

質疑応答

(記者) APECは首脳宣言をまとめられなかった一方で、米中間に妥協点を探る動きもある。米中摩擦の見通しについてどう見るか。米国経済も貿易摩擦の影響は顕在化せず、実体経済は強い様子だが、今後の見通しは。

(会長) APECで首脳宣言が発表されなかったのは、非常にショックだ。アルゼンチンで開催されるG20で妥協点を見いだしてほしい。貿易面では何とか合意できるのではと期待しているが、知的所有権や安全保障の分野については、予想がつかない。

米国経済は、底堅いと思っている。制裁関税の影響はまだ顕在化しておらず、消費のピークとなる感謝祭からクリスマスにかけても、それほど影響を受けないだろう。ただ、予定通りに来年1月から対中関税が引き上げられればどうなるか、慎重に見守る必要がある。

(記者) 日産自動車のゴーン会長が逮捕されたことについて感想を伺いたい。この問題をどう見ているか。

(会長) このニュースを知ったときには驚いたが、個社の問題であり、コメントするのは差し控えたい。ただ、本件に限らず、このところ続いている他社の不正問題なども含め、突き詰めれば、コーポレートガバナンスの問題なのではないか。

(記者) コーポレートガバナンスは、かなり制度が整備されてきたが、まだ不十分な部分があるのか。

(会長) コーポレートガバナンス・コードの改訂など、制度上の整備は進んでいるが、重要なのは、実際にどれだけ機能しているのか、ガバナンスを利かせているのかという点だ。

(記者) 日産自動車の問題が、日本経済や世界経済に波及すると見ているか。

(会長) コメントするには、時期尚早である。

(記者) 来年のG20で議長国を務める日本政府に何を期待するか。同様にWTO改革で日本政府が果たす役割への期待についても聞かせてほしい。

(会長) 米中貿易摩擦がエスカレートしていけば世界経済にも悪影響を与えかねないので、日本政府には両国間の調整役を期待する。TPP11は12月30日に発効するが、既に追加加入を希望する国もある。これを拡大することは、自由で公正な貿易、投資ルールの強化につながるので、TPP11をまとめる際に日本政府が見せた強いリーダーシップを引き続き発揮頂きたい。

WTOについては、世界経済で圧倒的なシェアを持つ日米欧が共同で改革案を提出した。各国が寄り所とする組織となる様、強固な枠組みを構築して頂きたい。日本は世界で最も政治、経済が安定しており、他国からもリーダーシップの発揮を期待されているので、是非その期待に応えてもらいたい。

(記者) 日米TAG交渉に、日本政府はどう対応していくべきだと感じているか。

(会長) まず日米両政府はしっかりと話し合い、相互理解を深めてほしい。例えば、米国製の自動車が日本で売れないのは規制があるからだという主張を耳にするが、現実には一切ない。もし、誤解があるならば、米国政府、米国民に正しく理解してもらうことが出発点になる。

(記者) ロシアに対する経済協力について、商社はどのような貢献ができると考えているか。

(会長) 経済原則に基づいたビジネス展開が基本であり、成長が見込まれるマーケットやビジネスがあれば、前向きに検討する。ビジネスを推進する上で、企業努力では解決が難しい障害があれば、日本政府に解決や支援を求め、日ロ政府間で協議してもらう。

(記者) 徴用工判決以降の日韓関係をどう見るか。

(会長) 一番の頭痛の種が日韓関係である。相互に貿易・投資を行っており、経済界としても正常な関係を続けたい。しかし、65年合意が覆されるようなことになれば、何を信じて良いのか分からないという状況にもなりかねず、両国政府がしっかり話し合って問題を解決し、安心できるビジネス環境にしてほしい。

(記者) シリコンバレーなどから新しいビジネスモデルが次々と生まれ影響力を持つようになっている。商社では、人事制度改革の動きもあるが、こうしたイノベーションや新しいビジネスへの対応ではと見ている。現状における商社としての危機意識やイノベーションへの対応策について考えをお聞きしたい。

(会長) 特にIoTやAIに関わるビジネス分野でのイノベーションは、過去に経験したことのないスピードで進んでおり。こうしたビジネスに対応できる人材の確保は、商社にとっても重要な課題である。各社で、キャリア採用や人材育成など工夫して進めているが、社内ベンチャー制度を立ち上げた会社もある。従来の延長線上の取組みを続けていては将来がないことは、各社が十分認識されており、危機感を持って対応されておられる。

以上