会長挨拶・コメント

定例記者会見

2019年5月15日に開催された会長定例記者会見要旨

皆さん、おはようございます。

本日は、令和になり、最初の会見になります。平成の時代、世界は、東西対立の終焉で始まり、米中対立激化のさなかに終わりましたが、日本経済はバブル崩壊後、長期の停滞を経て、やっと明るさが見えてきました。現在、自動車産業に象徴されるように、産業と産業が、クロスオーバーして、新しいビジネスが次々と生まれる状況にあり、第四次産業革命にともなう産業再編の中、商社はその総合力を発揮して、各産業分野でのプラットフォーマーへと進化を遂げつつあります。

一方で、国内では、少子高齢化が急速に進み、労働力不足や働き方改革、地方創生などの課題が山積しており、AI やIoT をはじめとした革新的な技術も駆使しながら、一つひとつ課題を解決していく必要があります。

日本貿易会も、引き続き、会員企業及び団体の活動を通じて、持続可能な社会の実現に、微力ながら貢献していきたいと考えています。

さて、ゴールデンウィーク前後に、総合商社各社が2018 年度の決算発表を行いましたが、大半は最高益を更新し、業界全体として、好調な決算となりました。これは、各社が、リスク管理体制を整えつつ、攻めの経営をされた結果だと思います。ただ、国内外ともに景気や市況等の不透明感が高まるとともに、米中関係、イラン情勢やBrexit など、様々な地政学的リスクも高まっており、引き続き諸情勢を注視していく必要があることに加え、先行きに対して、様々な事態を想定し、慎重にならざるを得ない状況にあります。

最後に、6月28日よりG20大阪サミットが開催されます。米中間の対立が貿易分野から先端技術の覇権争いにまで拡大し、先鋭化・長期化の様相を呈している中、日本が議長国として、多国間の自由な貿易及び投資の旗振り役となることを期待しております。

私からは以上です。

質疑応答

(記者) 米中の貿易摩擦が貿易戦争に発展しているが、商社業績への影響はどうか。また米中貿易戦争の今後の展開につきどう見るか。

(会長) 一時期、収束するのではとの期待もあったが、報復の応酬に発展してしまい、現時点での一番深刻な問題として、懸念している。米中の対立は、両国のみならず、サプライチェーンに組み込まれた諸国にも影響が徐々に及ぶと見ている。商社のトレードへの影響は、商社ビジネス全体に占める比率が小さく、限定的だ。中長期的には、関税引き上げの影響で投資先の業績が悪化すると、商社全体の業績にも跳ね返ってくる恐れがある。米中首脳会談の開催が調整されているとの報道があるが、そうした場で解決への道筋が見えてくることを期待したい。

(記者) 米国の対中追加関税の対象が消費財にも拡大することが予想されているが、従来とのインパクトの違いなどについてどう見るか。

(会長) これまで追加関税の中心となっていた素材分野でも、徐々に価格転嫁されて消費財に値上げが及ぶはずだが、消費財に追加関税をかければ、即座に影響が出る。輸入業者やメーカーに加え、今回は消費者も声をあげると思うので、トランプ政権も慎重にならざるを得ないのではないか。

(記者) 商社業界で、米中摩擦の影響により、投資を見送ったり延期したりという動きは出ているか。

(会長) 個別に確認しているわけではないが、先行きが不透明な状況下、新規投資だけではなく、追加投資や設備投資なども含め、投資全般に慎重にならざるを得ない。

(記者) サプライチェーンを組み換えるというような動きもあるのか。

(会長) 生産拠点の移転はすぐにできることではないが、長期的観点から見て必要と判断すれば、そうした動きも出てくるのではないか。

(記者) 商社が展開している東南アジアの工業団地で、具体的な動きは聞いていないか。設備投資を牽引すると期待されているIoTなどデジタル関連の投資には変更はないか。

(会長) 工業団地に関しては、現時点で具体的な話は聞いていない。デジタル関連の投資は、産業の構造改革にもつながるため、必要なものは、着実に実行していくという認識に変わりはない。

(記者) 米中間の合意について、長期化するとの見方と、いったん合意が成立するとの見方があるが、期待感は別にして、中村会長はどう見ておられるか。

(会長) 関税問題についてはどこかで折り合えると見ている。一方で、知的財産権やITの問題は、両国の根幹に関わる問題であり、合意には相当時間がかかると思う。

(記者) 5月13日に発表された3月の景気動向指数において、国内景気の基調判断が「悪化」に下方修正されたが、足元の景気と10月の消費増税を控えた先行きについてどう見ているか。

(会長) 基調判断については、そこまで悪化しているだろうかという感覚で受け止めている。日本は経済も政治も非常に安定しており、この先も急激に景気が冷え込むという懸念はあまり持っておらず、状況次第では、景気の回復も期待している。

(記者) 政府内部でも追加経済対策を示唆する発言も出始めているが、必要性につきどう考えるか。

(会長) 米中摩擦の先行きや、その他の地政学的なリスクなどを考えると、発動は様子を見ながら判断するという前提で、準備だけはしておく必要があるかもしれない。

(記者) 10月に予定されている消費税率の引き上げは予定通りに行うべきか。

(会長) 消費落ち込みへの対策もしっかり準備されている一方で、少子高齢化や社会保障費用の増加に備えた財政再建は重要課題であり、消費税率引き上げは予定通り実行すべきだ。

(記者) 商社のビジネスモデルから考えて、SDGsについては、他団体をリードするような積極的な取り組みを展開する考えをお持ちか。またその際の重点項目は何か。

(会長) 日本貿易会としてはSDGs達成を念頭に置いて活動していくことを目標としている。各論のところでは、各社の事業形態によって重点の置き方は異なるが、各社がそれぞれ、自らの事業を通じて社会課題を解決していくことを当会の基本的な考え方としている。

(記者) 経団連が採用活動の自由化、通年採用の拡大の方針を表明した。日本貿易会の過去の提言とは逆の方向だと思うが、見解は。

(会長) 学生の本分は勉強であり、企業は学生がしっかり勉強ができるように配慮し、何を勉強してきたかをしっかりと見極めて採用するのが基本だと考える。通年採用については、商社業界は留学生向けの秋採用や、中途採用も既に積極的に行っている。採用の多様性拡大について、学生、大学、企業がよく話し合って進めていくべきだ。

(専務理事) 当会は採用時期の後ろ倒しを提案し、当時の議論に一石を投じた経験がある。それで一気に変化が起きたというわけではないが、議論が進んだという面では貢献できたと認識している。

(記者) 冒頭にも触れられたイラン情勢は相当緊迫化している。エネルギーなどに影響が出てくる可能性は。

(会長) 双方とも武力衝突まではいかないと表明しているが、偶発的衝突が心配。中東で紛争が起きれば、日本や東南アジアが大きな影響を受ける。早期に話し合いで解決策を見つけてもらいたい。

(記者) 財界を中心に終身雇用を前提とした日本型雇用のあり方について、議論が起きているが、中村会長の見解は。

(会長) 終身雇用だけを取り上げるのではなく、採用から人材育成、シニアの処遇、年金制度という一連の流れを踏まえた議論が必要だ。個人の考え方や働き方は大きく変化してきており、ダイバーシティ、インクルージョンも含め、多様化の流れに沿った形で、日本型雇用のあり方を議論すべき。

以上