大学における環境講座の実施(2007年度横浜国立大学大学院)

(地球環境委員会)
 地球環境委員会では、環境分野での社会貢献活動として、環境講座を実施している。2007年5月10日および10月4日に、横浜国立大学大学院環境情報学府の大学院生を対象として、地球環境委員会委員会社4社の方にご講義いただいた。
 質疑応答では、学生から専門的かつ具体的な質問があり、テーマに対して高い関心や興味がある様子がうかがえた。
5月10日(木)
「環境報告書からCSRへ」
三菱商事(株) 社会・環境室長
滑川 修 氏

今回は、商社が、幅広い事業領域の中で、実際にどのように環境問題に取り組み、社会貢献やCSRとかかわっているのか、具体的事例を交えて紹介するよう努めた。横浜国立大学の環境情報学府は、文理融合型の環境教育研究を旨としていることから、受講者にはできるだけ幅広い知見を得てもらいたいとの思いからであった。ビジネスの本流に環境や社会貢献、CSRといった要素をどう組み入れるか、その実態についてある程度、紹介できたと考えている。

<講義のポイント>
1.社会貢献への取り組み
(1) 基本理念
(2) 社会貢献活動事例
 

@母と子の自然教室(国内 )
A地域貢献施策(海外)

    ○フィリピンの公立小学校への学級(教室)寄贈
○インドの無電化村への太陽光発電外灯寄贈
○中国の生態・教育援助林プロジェクト
2.環境問題への取り組み
(1)環境問題に対する取り組みの歴史
(2)『環境憲章』
(3)環境保全取り組み事例
 

@熱帯林再生実験プロジェクト
Aサンゴ礁保全プロジェクト

3.CSRへの取り組み
(1)企業理念『三綱領』
(2)三菱商事のCSR定義
(3)CSRとは
 

@日本、AEU

(4)ビジネスと社会的価値
滑川修氏


山本隆三 氏
「政策としての排出権取引制度」
住友商事(株) コーポレート・コーディネーションオフィス部長(環境ビジネス)
山本隆三 氏

地球温暖化問題とその対策が注目されるにつれ、一部のマスコミでは「排出権取引」を導入すれば、問題は解決するとの論調の記事も目に付くようになってきた。実際には、温室効果ガスの排出権取引の有効性については、経済理論からはかなりの疑問があるように思われる。今回の講義では排出権取引制度の有効性を欧米の例から論じたが、時間の制約があり、環境政策全体の中での位置付けについて論じることができなかった。次の機会があれば、もう少し広い範囲から環境政策を論じさせてもらえればと思う。

<講義のポイント>
1.温暖化問題とその影響
(1)科学的な問題
 

@気候変動、A海面上昇、B海流、降雨量の変化

(2)政治経済的な問題
 

@環境問題、環境政策は産業政策に
A国際交渉、国益を巡る争いに
Bエネルギー問題、成長の制約要因にも

2.排出権取引制度
(1)利点と仕組み
(2)世界の排出権市場
 

@米国、AEU

(3)京都議定書の排出権市場
(4)排出権取引の政策効果−温暖化ガスの排出権取引の効果は経済学的に疑問がある
3.日本企業の取り組み−日本の省エネ・環境技術を利用した削減と資金援助


10月4日(木)
山本隆彦 氏
「三井物産のCSR活動」
三井物産(株) CSR推進部長
山本隆彦 氏

今回は、環境をCSRというより大きな枠組みでとらえる観点から、当社のCSRに関する考え方や活動の一端を紹介した。皆さん、非常に意識が高く、本業を通じたCSRの大切さ、その実践や浸透の難しさ、また当社の社有林の活用等について活発な質問や意見をいただいた。こうした大学の方々との対話も、CSRの要諦であるステークホルダーダイアログの一環として、今後とも継続していきたいと考えている。

<講義のポイント>
1.三井物産とは
(1) 三井物産の歩み
(2) 三井物産の事業活動
 

@資源・エネルギー分野
A物流ネットワーク分野
Bコンシューマー分野
Cインフラ分野

2.経営基盤・制度改革
(1)国後・DPF問題を通じての経営基盤・制度の改革および社員の意識改革
 

@経営基盤の整備 
A会社のコミットメントの明示
  (経営理念、CSR活動の基本方針、グローバルコンパクト10原則など)
B社員の意識改革

(2)再発防止策
 

@DPF問題を引き起こした原因 
A再発防止策(制度面) 
B再発防止策(社員の意識改革)

3.三井物産のめざすCSR
(1)CSR推進体制
(2)本業を通じたCSRへの取り組み
 

@環境ビジネス 
Aバイオマスエネルギー 
BCSR調達・サプライチェーンマネジメント
C社有林の保全

(3)本業を越えたCSRへの取り組み
 

@環境基金 
A国際交流 
B教育 
C社員によるボランティア活動

(4)社会が直面するグローバルな課題と企業の役割
 

@社会が直面するグローバルな課題(地球環境、貧困・格差、汚職・腐敗等)
A企業の役割

  (グローバルな課題解決のために、ダイバーシティとワーク・ライフ・バランス、CSR経営を考えるにあたって)


金子哲哉 氏
「世界のバイオ燃料の動向と丸紅のバイオ燃料ビジネス」
丸紅(株) 経済研究所国際情勢分析担当主査
金子哲哉 氏

地球環境問題は、今後、人類が一丸となって速やかに対処すべき大きな問題であり、商社の貢献が待たれる分野でもあると感じている。中でも、バイオ燃料は世界中で盛り上がりを見せているテーマであり、商社もさまざまなプロジェクトに着手している。バイオ燃料の動向と商社の取り組みについて紹介させていただいた今回の講座では、学生の皆さんからも多くの質問を頂戴し、大変嬉しく思った。本講座が学生の皆さんの理解を深める一助となれば幸いである。

<講義のポイント>
1.バイオ燃料とは
(1)バイオ燃料がつくる循環型社会
(2)バイオエタノールの原料と用途
2.世界のバイオ燃料の動向
(1)世界のバイオ燃料生産と利用
(2)各国の動向
 

@日本:着々とバイオ燃料を推進
A米国:高いバイオ燃料目標導入、再生可能燃料基準の導入、手厚いエタノール支援措置
Bブラジル:世界市場でプレゼンスを高める
CEU:環境対策として急速にバイオ燃料の導入が進む
D中国:5ヵ年計画でバイオ燃料の導入が進む
Eタイ:サトウキビを原料にエタノールを生産

3.丸紅のバイオ燃料ビジネス
(1)進行中のバイオ燃料ビジネス
 

@バイオエタノール生産(大阪府堺市)

  :国内初の商用エタノールプラント、新技術の導入(廃木材処理によるエタノール製造)
Aバイオエタノール生産(タイ):サトウキビを使用したエタノール生産
Bバイオディーゼル生産(ブラジル):バイオディーゼル生産拠点の確保
(2)今後のビジネスの展開
  @大型フルターンキー案件の獲得
A今後のビジネス開拓


受講生の様子