日本貿易ぼうえきの課題

(産業の空洞くうどう化/食料自給率/貿易摩擦ぼうえきまさつ

産業の空洞(くうどう)

日本は1980年代に急速な円高に直面しました。円高になると、買い手が日本から輸入する商品は高くなるので、売れ行きが悪くなります。そのため日本企業はできるだけ安く商品を作って輸出しなくてはならなくなりました。
日本人の賃金(ちんぎん)のレベルは他のアジアの国々に比べて高いので、アジアの他の国や地域で、そこの人たちに作ってもらったほうが安く製品が作れます。こうして、日本企業は次々にアジアに工場を移して、そこに生産拠点(きょてん)を造るようになりました。
そうすると、その産業における日本国内の工場は減って、そこで働いている人も減ることになるので製造業の力はどんどん弱くなっていきます。今まであった国内産業がどんどん別の国に移転して日本の中身が空っぽになっていくようなので、このことを「産業の空洞(くうどう)化」といいます。
しかし、逆に海外の伸びる企業に投資して育てていけば、そこから収益を得ることができます。これを「所得収支」といいますが、日本は今この所得収支の黒字額が、貿易収支の黒字額を上回っています。「産業の空洞化」は避けられなくても、今後、日本は高度な技術開発に専念し、海外に対しては積極的に事業投資に取り組んでいくことがより大切になってくるといえるでしょう。


日本の食料自給率

国内で消費される食料のうち、国内で生産されている食料の割合のことを食料自給率といいます。 日本の食料自給率は約40%で、世界的に見てもとても低いのです。
特に 日本は土地が狭(せま)いので、大規模農業によるコストの削減(さくげん)もできず、また賃金も高いので、農産物の価格を引き下げることはなかなかできません。したがって外国から輸入された安い農産物に価格面で対抗(たいこう)できないのです。
しかし、たくさんの農産物を外国から輸入していますが、もしその国との関係が悪くなったり、その国が飢饉(ききん)などで農産物を輸出できなくなったりすると、日本に食料が入ってこなくなる可能性があります。
今後は、安全・安心な食料を確保するためにも、商社が、海外の生産地と契約(けいやく)して、農産物を育てていくことや、国内でも経営や販売ノウハウなどの面で、農業者の育成や支援を行っていくことが重要です。


貿易摩擦(ぼうえきまさつ)

日本もアメリカも基本的には自由貿易(ぼうえき)主義です。しかし、日本は食料自給率をこれ以上、下げないように、コメなど、特定の農産物については価格の安い輸入品の関税を高くすることで、日本の生産者を守ってきました。 一方、日本は、低燃費で高性能、しかも価格が安いという特長を生かして、アメリカに対する自動車輸出を伸ばしてきました。そして1970年代後半には、アメリカの自動車産業に大きな影響(えいきょう)をあたえるほどになりました。そこで、アメリカでも、国内の自動車産業を守ろうと、日本車の輸入規制を要求したり、日本もアメリカからの輸入を拡大する努力をすべきだという声が大きくなっていきました。日本は、最大の貿易(ぼうえき)相手国であるアメリカに輸出できなくなるのは非常に困るので、自ら自動車の輸出を制限することで、この問題を切りぬけました。また、アメリカでの現地生産を拡大していくことにしました。


資源エネルギー問題

石油、石炭、原子力、LNG(エル・エヌ・ジー:液化天然ガス)など、日本で消費されているエネルギー資源は大部分(約80%)を輸入に頼(たよ)っています。しかも、こうした鉱物資源には限りがありますので、近年世界の国々では、その輸入の権利を確保するためにいろいろな手立てを考えてきました。日本の商社も、輸入の権利と引き換(か)えに高度な技術力を提供し、ロシアのサハリン沖で産出されるLNGの開発プロジェクトなどに参加してきました。
また、地球温暖化など環境(かんきょう)問題が国際(こくさい)化し、CO2(二酸化炭素)やメタンガスを各国が努力して減らしていこうという取り決めがなされました(京都議定書)。しかし、先進国では、減らさなければならない量が多いので国内だけで減らすことが難しい状況にあります。そういう場合には他国で削減すれば、その分はその先進国が減らしたことにする「排出(はいしゅつ)権」がビジネスとなり、日本の商社も取り組むようになりました。


日本貿易相手国