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平成になってバブル景気が崩壊して日本経済も商社も大打撃を受けた。商社は大胆な経営改革を行い、この厳しい時期を乗り越えていくんだ。やがて世界はグローバル化が進み大きく変化しはじめる。それに合わせて商社は投資など貿易以外の事業にも力を入れていく。21世紀、エネルギーや環境など重要な課題が出てきた。商社はその解決に貢献するため新たなチャレンジをしていくんだ。

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平成~現代

大きく変わる世界に、商社も変化し始めた

1991年、日本が好景気に沸(わ)いたバブル景気が終わった。不動産の価格や株価(かぶか)が大きく下がりはじめ、景気がどんどん悪化した。バブル崩壊(ほうかい)だ。商社も大きなダメージを受けた。他の企業と同じように株など金融(きんゆう)商品にたくさん投資(とうし)していたからね。そのため大きな不良資産(ふりょうしさん)ができてしまった。不良資産というのは、本来の価格より大きく価格(価値)が下がってしまった土地やビルなどの不動産、株などの金融商品のことだ。不良資産を抱えてしまったことから経営も悪化した。だから、まずはこの不良資産を減らしながら、新しい分野への進出など、これまでとは違った事業展開に向けて動き出した。そして、そこで起きたのが商社同士の合併(がっぺい)や吸収(きゅうしゅう)だ。つまり商社の再編(さいへん)だね。

そのころ世界も大きく変わりはじめていた。1989年に起きた「ベルリンの壁の崩壊」で、自由主義体制の西側諸国と共産主義体制の東側諸国との間の冷戦が終わり、1991年には巨大な国家、ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)がばらばらになり消えた。このソ連の崩壊(ほうかい)により自由貿易圏が拡大し、さらにはこの時代に運輸と通信技術が爆発的に発展したことから、世界経済は国単位でなく地球規模(きぼ)で動くグローバリゼーションの時代へと変わっていくことになるんだ。

地球規模の新しい課題へ挑戦する商社

90年代半ばになっても日本経済は停滞(ていたい)したままだった。1998年ごろから、政府は財政構造(ざいせいこうぞう)改革(かいかく)に取り組んでいたけれど、消費税(しょうひぜい)の引き上げやアジア通貨(つうか)の暴落(ぼうらく)などの影響から景気回復はできなかった。大手の証券(しょうけん)会社や銀行が破たんしたのもこのころだ。

経済に良い兆(きざ)しが見えはじめたのは、2002年ころになってから。産業では、IT分野の成長が目立っていた。バブル崩壊(ほうかい)後、経営不振(ふしん)に苦しんでいた商社も徐々に業績が上がってきた。90年代から行ってきた業績の良くない部門の整理統合などの経営改革や海外市場、新ビジネスへの事業投資の取り組みがうまくいき始めたんだ。その後、2008年に起きたリーマン・ショックによる世界同時不況という大きな出来事があったけれど、商社の業績はバブル崩壊後のようには悪くならなかったんだ。それどころか「商社 夏の時代」と呼ばれるくらい安定していた。

それでは今後はどうか。今、グローバリゼーションはさらに進み、地球環境、資源エネルギー、食料、水という地球規模(きぼ)で考えなくてはいけない大きな課題(かだい)が生じている。21世紀も、これら地球規模の課題克服に向けた商社のますますの活躍、貢献が求められる時代になりそうだ。

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詳しい解説 不況でも商社はチャレンジを忘れなかった 1989~2002年ごろ

社会のできごと

1989年
消費税導入
前年に成立・公布されていた消費税法が4月1日施行された。当時の税率は3%
1989年
ベルリンの壁崩壊
東ヨーロッパで民主化の動きが高まる中、東ドイツで出国規制緩和(かんわ)が発表されると、東西ベルリン市民がベルリンの壁に押しよせ、国境ゲートが開放された。さらに市民が壁を破壊し、ついになくなった。壁の崩壊から11カ月後に東西ドイツが統一された
1991年
湾岸戦争
1990年にイラクがクウェートに攻め込んだことから、アメリカを中心とした多国籍(たこくせき)軍がイラクに軍事介入(かいにゅう)して戦争になった。多国籍軍の圧倒的な軍事力によって、イラクをクウェートから追い出した
1995年
GATTからWTOへ
自由貿易の促進を目的とした国際協定GATTが発展して、WTO(世界貿易機関)が発足。物品だけでなく、金融、情報通信などサービス分野の貿易についても協議できるようになった
1995年
阪神・淡路(はんしん・あわじ)大震災
1月17日早朝に発生した兵庫県南部地震によって、震源に近い神戸市市街地をはじめ近畿圏(きんきけん)の広い地域が大きな被害を受けた。死者6433名、行方不明者3名、負傷(ふしょう)者は4万人以上。被害総額はおよそ10兆円に達し、戦後に発生した地震災害としては東日本大震災に次ぐ規模である
1996年
ペルー日本大使公邸(こうてい)人質事件
12月に、ペルーの首都リマでテロリストが日本大使公邸をおそい、大使館員やペルー政府の要人、日本企業のペルー駐在員ら約600人を人質に取った。事件が解決したのは発生から4カ月間以上たった97年4月だった
1997年
アジア通貨危機
機関投資家の通貨の空(から)売りによって、タイの通貨バーツが急落。それをきっかけにインドネシア、韓国など東・東南アジア諸国でも通貨が大幅に下落した。その影響でアジア各国では銀行の破たんや企業の倒産が起きた
1997年
地球温暖化(おんだんか)防止京都会議(COP3)
温室効果ガスの排出(はいしゅつ)量を削減(さくげん)するために京都で開かれた会議で、削減の取り組みを決めた「京都議定書(ぎていしょ)」が採択された
1998年
インド・パキスタン地下核(かく)実験
5月にインドとパキスタン、となり合う2カ国が相次いで地下核実験を行った。核開発の経験が浅い国でも核兵器を保有できることを示し、世界にショックを与えた
1999年
EU通貨統合スタート
ヨーロッパで導入された通貨統合(とうごう)で、フランやマルクなどそれぞれの国の通貨に代わって、単一通貨ユーロが使われるようになった。ドイツ、フランス、イタリアなど11のEU(欧州連合)加盟国が参加したが、イギリス、デンマーク、スウェーデンなどは未参加
2001年
米国同時多発テロ
9月11日、アメリカでハイジャックされた4機の旅客機のうち、2機がニューヨークの世界貿易センタービルに、1機がバージニア州のアメリカ国防省に突っ込んだテロ事件。世界貿易センタービルは爆発炎上(えんじょう)して崩壊した。死者数はニューヨークだけで3000人近くに達した

商社も大きな不良資産を抱え、業績悪化に苦しんだ

昭和が終わって平成になると、日本経済は大きな打撃(だげき)を受けた。バブル崩壊(ほうかい)だ。どうして崩壊したのか分かるかい?実は、バブル景気のとき金利(きんり)が低いこともあって、企業も個人も土地やビルなどの不動産に積極的に投資(とうし)していたんだ。銀行にお金を預けても、金利が低いから利息は期待できなかったからね。また、金利が低いことからお金を借りてまで不動産や株に投資をしてたんだ。そのため、不動産の価格が実態(じったい)より、とても高くなってしまったんだよ。あまり高くなりすぎると経済に悪い影響を及ぼすと考えた政府は、不動産への投資を抑制(よくせい)する政策を取ったんだ。すると不動産価格が急激に下がってしまい、その影響で株価も暴落(ぼうらく)した。1989年の末に38,900円もあった株価は、翌年の秋には2万円近くも下がってしまった。不動産や株に投資をしていた企業や個人は、大きく損をしてしまい、多額(たがく)の借金をつくってしまったんだ。その後も景気はどんどん悪化した。

こうした一連(いちれん)の出来事を「バブル崩壊」と呼ぶんだ。なぜバブルと呼ぶのか分かるかな?それは好景気(こうけいき)の実態(じったい)が、実は中身のない泡(バブル)のようなものだったからだ。バブル崩壊によって、多くの会社は価格が下落(げらく)した不動産などの不良資産や大きな借金を抱(かか)えてしまったり、たくさんのお金を失ってしまった。
1990年代後半には、大手銀行や証券(しょうけん)会社が倒産したんだ。この崩壊の波は、「バブル景気」の時代に積極的に金融商品に投資して、資金運用(しきんうんよう)をしていた商社にも押し寄せた。この時期には、伝統のある大きな商社が倒産したこともあったんだ。商社もかつてないほど大きなピンチを迎えた。

スリム化と再編で不況を乗り切ろうとがんばった

後に「失われた10年」と呼ばれるんだけれど、バブル崩壊(ほうかい)の1991年から2002年まで、日本は景気低迷(けいきていめい)の時期だった。消費税も、1997年に3%から5%に引き上げられて、経済活動は停滞(ていたい)していた。株価(かぶか)や不動産の価格も下がったままで、企業も設備投資をあまりしなくなっていた。経済が元気をなくしていたんだね。

この頃、商社の業績(ぎょうせき)も下がっていった。バブル崩壊で発生した不良資産(ふりょうしさん)の影響もあるけど、それだけじゃないんだ。不況に苦しむメーカーがコスト削減(さくげん)のために、商社に頼(たよ)らないで直接取り引きをするようになったり、取り引きする商社の数を減らしたりしたのも影響したんだ。つまり、国内販売や輸出入の仲介(ちゅうかい)取引による手数料収入が減ったということだ。バブル崩壊で作ってしまった不良資産と、商社を取りまくビジネス環境の変化による利益の減少(げんしょう)というダブルショックが、業績悪化(あっか)の原因なんだ。

この背景には、メーカーが自ら国内販売や輸出入取引をできるようになってきたこと、インターネットの普及等により世界中の企業との取引が容易になったことなどがあげられる。この時期は、「商社 冬の時代」と言われたんだ。だから、商社も思いきった経営改革(かいかく)が必要になった。そこで商社は会社のスリム化を行った。不良資産の処理(しょり)を進めながら、設備(せつび)や人員(じんいん)を減らした。いわゆるリストラだね。数千人も減らした商社もあったし、うまくいっていない赤字(あかじ)の事業を切り離して規模を小さくした商社もあった。また、合併(がっぺい)や吸収(きゅうしゅう)で商社どうしがいっしょになる、つまり商社の再編(さいへん)もあった。中には、鉄鋼(てっこう)や建材(けんざい)部門の事業を商社どうしで統合(とうごう)させて別会社を作ったこともあった。得意な事業や分野を選択して集中させていくために必要だったんだ。このように商社はみずから経営改革を進め、時には銀行の資金援助(えんじょ)を受けながら、経営の立て直しに取り組んだんだよ。

資源エネルギー分野へ積極的に投資をした

さて、仲介(ちゅうかい)取引による収入が期待できなくなった商社は、別の事業に力を入れはじめた。それが事業投資(とうし)だ。投資は商社の仕事のひとつで、昔から行ってきたのは知っているよね。バブル崩壊(ほうかい)後、商社は今まで以上に投資に力を入れたんだ。利益(りえき)が出ない事業は他の企業へ売ったり、他の企業と一緒にさせる一方で、大きな利益が期待できる事業には、積極的に投資をしたんだ。中でも、資源エネルギーに関する事業には力を入れた。

商社は、これまでにも日本の産業に必要な資源エネルギーの確保のために、世界各地に投資をしてきたんだけど、最近では中国などの新興国が大きく経済発展する中で、鉄鋼石(てっこうせき)や石炭、銅、天然ガスなどの資源エネルギーの需要が急拡大した。そのため、これら資源エネルギーの販売価格が大きく上がり出した。そして、新興国の経済発展は今後とも続き、資源エネルギーの需要はますます大きくなると予想し、石炭や鉄鉱石などの採掘(さいくつ)事業に、さらに多くの投資を行ったんだ。中東(ちゅうとう)やロシアでは、火力発電所の燃料(ねんりょう)や都市ガスの原料になるLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)の開発に取り組んだ。インドネシアでは鉱山(こうざん)開発に取り組んだ。その他にも、インターネットに不可欠な海底光ケーブルの敷設(ふせつ)をはじめ、情報通信分野にも力を入れた。不況(ふきょう)期でも、商社は世界中で積極的に事業投資を行っていたんだよ。そして、この判断は正しかった。これらの事業投資は、その後の商社に大きな利益をもたらすことになったんだ。

また商社は、小売事業にも積極的に投資した。中でもコンビニ事業に注目した。平成の不況でスーパーの経営は非常に苦しい状態だったんだけれど、便利なコンビニは好調だった。そこで商社はコンビニ企業に投資して自分たちのグループ企業にした。いま街の中にはいろいろなコンビニがあるけれど、実はほとんどのコンビニに商社が出資(しゅっし)しているんだよ。

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詳しい解説 変わる商社のビジネス「商社 夏の時代」へ 2002~2007年ごろ

2003年
イラク戦争
3月19日、アメリカ中心の多国籍軍が、フセイン政権のイラクに攻め込んで戦争が始まった。多国籍軍は約3週間で主要都市を攻め落とし、5月には戦闘終結(しゅうけつ)が宣言された。その後、イラクは多国籍軍に占領統治されたが、2010年8月にアメリカのオバマ大統領が戦争終結を宣言した
2005年
京都議定書発効(はっこう)
1997年に開かれた「地球温暖化防止京都会議(COP3)」で、温室効果ガス排出の削減目標について「京都議定書」が議決された。その後、アメリカ、ロシアの受け入れ拒否などから発効まで時間がかかったが、2004年にロシアが批准(ひじゅん)し、2005年に発効となった

新興国BRICsに進出、多彩な事業を展開した

2002年ごろには、不良債権(ふりょうさいけん)の処理(しょり)も進んで日本経済の景気も回復しだした。外国への輸出が増えたことも経済の好転(こうてん)に貢献(こうけん)した。「いざなみ景気」のはじまりだ。ただ、国内の消費(しょうひ)もいっしょに回復するというところまでにはいかなかった。一方、このころインターネットのサービスを中心にIT産業が盛んになりだし、ベンチャー企業と呼ばれる、新しいサービスや製品を開発した会社が数多く生まれた。ITバブルといわれるほどのブームが起きたんだよ。

世界経済も2004年くらいから好況(こうきょう)になってきて、特にBRICs(ブリックス)と呼ばれる新興(しんこう)国(ブラジル、ロシア、インド、中国)が、高い成長を見せていたんだ。商社も事業拡大の大きなチャンスと考え、BRICsを中心に積極的に事業展開を行った。資源エネルギー関連の開発をはじめ、電力や水道といった社会インフラの整備、鋼材(こうざい)などの原材料や部品などの流通(りゅうつう)や加工、それに製品や原料を運ぶ物流(ぶつりゅう)ネットワークなど工業分野に関わるようになったんだ。また商社は、自動車やマンション、食品加工やベーカリーショップ、小売りチェーンなど消費者(しょうひしゃ)向けの事業にも積極的に取り組んだんだ。こうした事業を商社は得意の情報ネットワークや事業の知識やアイデアといったノウハウを生かして展開していったんだ。またBRICsに進出する日本企業も応援(おうえん)した。進出企業と合弁(ごうべん)会社を作って、進出国で製品を作ったり販売したりしたんだ。

秀才君のためのミニ知識

「商社の仕事は貿易仲介」は昔のイメージ?

商社の事業は貿易の仲介(ちゅうかい)というイメージはもはや20世紀のものかもしれません。21世紀の商社は商取引だけでなく、投資、情報、金融(きんゆう)、オーガナイズ、リスクマネジメントなど様々な機能をもった企業体へと進化しています。2007年のリーマンショックの時にバブル崩壊後のときのような業績悪化にならなかったのは、資源エネルギーへの投資が好調(こうちょう)だったからと言われています。商社の中には利益のうちなんと7割以上が投資からのリターンで、仲介手数料はわずか3割というケースもあったほどです。21世紀の商社はもはや貿易仲介会社ではなく、世の中の課題を解決するソリューション・プロバイダー(問題解決)企業と言えるかもしれません。

活躍の場が拡がり、商社の業績は最高に

「いざなみ景気」のころは、商社も「夏の時代」と呼ばれるくらい好調(こうちょう)だった。どれくらい良かったかというと業績(ぎょうせき)をみると分かるよ。2006年から2008年にかけて、商社上位(じょうい)5社の利益合計はなんと1兆円!を突破(とっぱ)したんだ。「バブル景気」の時代と比べても約10倍もあるんだ。好調の理由は、バブル崩壊後から積極的に取り組んだ資源エネルギーへの事業投資だ。この時期は石油などの資源エネルギー価格が高とうしたため、こうした商品の輸入・販売や投資からの利益が増えたんだね。

でも理由はそれだけじゃない。商社はバブル崩壊(ほうかい)後から思いきった経営改革(かいかく)をしてきたよね。一番の理由は、収益の柱となる新たな事業の創造だ。かつての貿易仲介(ちゅうかい)料を稼(かせ)ぐコミッションビジネスから、インフラやエネルギー資源などの事業投資ビジネスへ変えたことが大きかった。それにバイオテクノロジーや環境といった時代の流れやニーズに合った分野への進出も良かった。そうした取り組みが実ったんだ。産業には「川上(かわかみ)=原料、資源)・川中(かわなか)=生産、卸し・川下(かわしも)=小売り)」という、3つの段階(だんかい)があるけど、この時代になると商社は、そのすべてに関わるようなビジネスを行うようになっていたんだ。つまり、商社が活躍(かつやく)できる機会がたくさん増えたということなんだ。商社も時代とともに進化してきたんだよ。

ハイレベルなことを知りたいなら

商社のビジネスは「バリューチェーン」へ

これからの商社を理解する上で重要なのが「バリューチェーン」です。従来(じゅうらい)、商社は主に貿易の仲介をビジネスとして行ってきました。しかし、時代とともに商社は様々な機能を備えるになりました。そのため幅広いビジネスを行うことができるようになったのです。そこで考えられたのが「バリューチェーン」というビジネスモデルです。これはある商品が生産され販売されるまでのプロセスそれぞれに関わって、ビジネスを行う方法です。商品には大きく分けて、原材料の段階、加工されて製品になった段階、商品として販売される段階があります。商社はこれらの3つの段階に、投資、共同参画(さんかく)などで関わることでビジネスを行います。多機能化で培(つちか)った様々なビジネスノウハウと、世界規模のネットワークを持つ、商社ならではのビジネスモデルと言えます。

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詳しい解説 21世紀の商社は地球上の問題を解決して貢献する 2007年~

2008年
リーマン・ショック
アメリカの大手証券会社・投資銀行のリーマン・ブラザーズは、サブプライムローン問題により、巨額の損失(そんしつ)を出し、株価も暴落、約64兆円という巨額(きょがく)の負債(ふさい)をかかえて倒産した。リーマン・ショックとよばれ、世界金融危機のきっかけになった
2009年
ゼネラル・モーターズが倒産
販売(はんばい)台数世界1位のアメリカの自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)が倒産した。主な原因として、2007年のサブプライムローン問題による金融危機やガソリン価格の上昇からくる販売不振、そして巨額の債務(さいむ)があげられている
2010年
中国GDPが世界第2位に
改革開放路線をとった中国は1980年代から外国企業の進出などにより急速な経済成長をとげ、「世界の工場」として役割を担うようになり、この年、世界第2位のGDP(国内総生産)を達成した
2010年
欧州ソブリン危機
ギリシャの財政(ざいせい)問題に始まった債務危機が、南ヨーロッパ→ユーロ圏→ヨーロッパ全体へと影響の範囲を広げていき、ヨーロッパ全体の金融システムまでゆるがす事態となった
2011年
東日本大震災
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれにともなって発生した津波(つなみ)により引き起こされた大規模な災害。福島第一原子力発電所事故をはじめ、北海道南岸から関東南部までの広い範囲で被害が発生した。震災による死者・行方不明者は1万8000人を超え、多いときには40万人以上が自宅を離れて避難していた。政府は震災による直接的な被害額を阪神・淡路大震災を大きく上回る16兆円から25兆円と試算している
2011年
タイ大洪水(こうずい)
7月から3カ月以上続いた洪水は、死者800人以上などタイ各地に多くの被害をもたらした。また、被害により多数の工場で生産が止まった結果、自動車や電機などの部品の供給が計画どおりに進まなくなり、日本の生産活動にも重大な影響を与えた

世界金融危機でも、商社のダメージは小さかった

2007年、再び世界経済を揺(ゆ)るがす出来事が起こった。「世界金融危機(せかいきんゆうきき)」だ。アメリカで起こったサブプライムと呼ばれる住宅ローンの危機で、住宅バブルが崩壊(ほうかい)したんだ。また、バブルの崩壊だ!これをきっかけに世界の経済が危(あぶ)なくなった。なぜアメリカだけでなく、世界に広がったと思う?じつは、サブプライムローンは証券(しょうけん)になって、銀行の投資信託(とうししんたく)や証券会社が提供する株や社債(しゃさい)などの金融商品に組み込まれて、世界中で売られていたからなんだ。そのため、アメリカだけでなく日本を含め世界中で株価(かぶか)が暴落(ぼうらく)した。その影響で大手のリーマンブラザースという証券会社が破たんした。いわゆる「リーマン・ショック」だね。日本では輸出が低迷(ていめい)し、さらに円高になったため、輸出に頼っていた企業の業績は悪化したんだ。

輸出が振るわなくなったから商社も大打撃(だいだげき)を受けたと思うだろう?ところが違ったんだ。たしかに収益(しゅうえき)は下がったけれど、バブル崩壊後のように経営が悪化(あっか)することはなかった。新興国の需要(じゅよう)が高く、価格の高とうしていた資源エネルギーや金属分野への投資が大きな収益(しゅうえき)を生んでいたからだ。それにバブル崩壊後の経営の効率化(こうりつか)や金利が低いままだったのも良かったんだ。また、バイオテクノロジーや先端(せんたん)技術ナノテクなどの成長分野への参入も行っていた。こうしたしっかりした経営基盤(きばん)を作っていたので、商社の業績は安定していたんだよ。

大人も知らない商社のヒミツ

バイオやナノテクなど新技術を開拓する商社

バイオテクノロジーやナノテクノロジーは、応用範囲(おうよう・はんい)の広い新技術で将来優れた製品を生み出す可能性を持っています。昔から常に新しい分野の事業開発に取り組んできた商社にとって、バイオやナノテクは21世紀の新事業を担(にな)う技術と言えます。商社は1980年代からバイオベンチャー企業に出資してきており、多くの成果を残してきました。最近でも商社ならではの情報ネットワークやオーガナイザー機能で培ったノウハウを活かして、ベンチャー企業だけでなく、国内、海外の大学・研究機関など様々な組織、団体と提携(ていけい)して事業化に取り組んでいます。テーマも農業、食品、医療、エレクトロニクス、エネルギーと様々なのが特徴です。

環境、新エネルギー、水、食料など課題の解決に取り組む

100年に一度といわれた「世界金融危機」以来(いらい)、中国やインドなど新興国(しんこうこく)の成長は続いているけど、先進国(せんしんこく)の経済はあまり良くなっていない。アメリカでは「リーマン・ショック」に続いて、ゼネラルモーターズ(GM)という世界でも有数(ゆうすう)の自動車会社の破たんが起き、ヨーロッパではギリシャやスペイン、イタリアで財政危機(ざいせいきき)が起こったりと、大変きびしい状況が続いているんだ。日本も財政問題をかかえて消費も元気がない。2010年には、GDP(国内総生産)が中国に抜かれて2位から3位になった。

商社の業績(ぎょうせき)は比較的安定しているけど、さらに未来を見据(す)えてしっかりと新しい事業にも取り組んでいるよ。例えば、地球環境問題への対応。これからの事業は、「地球温暖(おんだん)化防止」や「低炭素(ていたんそ)社会」への対応が求められる。商社はすでに世界各地で太陽光(たいようこう)発電やバイオ燃料(ねんりょう)の開発、さらに植林(しょくりん)まで行っているんだ。ブラジルでは、バイオ燃料であるバイオエタノールの生産や販売を行っているし、ヨーロッパでは太陽光発電事業に参入している。その他でも、地熱(ちねつ)や風力による発電事業にも進出しているんだ。エネルギーがないと産業も暮らしも成り立たない。新エネルギーへの取り組みはとても重要なんだ。

水ビジネスも重要だね。生活から産業まで、何をするにも水は不可欠(ふかけつ)だ。でも世界で使える水の量は限られているから、水の経済的で効率的な利用は大きな課題(かだい)なんだ。だから、商社は上下水道の整備や下水の水質浄化(すいしつじょうか)、あるいは海水の淡水(たんすい)化といった水の安定供給(きょうきゅう)につながるプロジェクトに積極的に取り組んでいるんだ。それと食料の安定確保も水と同じように重要だ。急速に経済発展する新興(しんこう)国では、穀物(こくもつ)や食肉(しょくにく)など食料の需要が大幅に増えたんだ。だから、世界中で食料が足らなくなることが起きるかもしれない。それに、食料輸出国の天候の影響や国の情勢によっては、需要に見合うだけの食料を手に入れることができないこともある。食料自給率(じきゅうりつ)の低い日本にとってはとても心配だね。だから、商社は安定して供給できるよう生産から小売りまで、すべての段階(だんかい)の事業に取り組んでいるんだ。特にトウモロコシなどの穀物は、バイオ燃料にも使われるので不足しないようにしないといけない。商社は世界中のネットワークを活かして穀物を買い付けたり生産したりして、日本や外国に供給しているんだ。

総合力で世界の国々や地域の発展に貢献

2011年10月の国連の発表によると、世界の人口は70億人を突破(とっぱ)した。欧米や日本などの先進国の経済はまだ低迷しているけれど、中国やインドなど新興(しんこう)国は、高い経済成長を続けている。日本は人口が減り続けていて、やがて本格的な高齢(こうれい)化社会になるといわれている。環境にやさしいエネルギー、例えば太陽光発電などの開発も急(いそ)がれる。経済の取引きを促進(そくしん)するFTA(自由貿易協定:じゆうぼうえききょうてい)、EPA(経済連携協定:けいざいれんけいきょうてい)の締結(ていけつ)や、アジア・太平洋地域の貿易を活発(かっぱつ)にするTPP(環太平洋経済連携協定:かんたいへいよう・けいざいれんけいきょいてい)など、貿易政策の新しい取り組みも進められている。

とにかく、解決しなければいけない課題(かだい)が山積(やまづみ)だ。それに、これからも新しい技術や産業が生まれてくる。そんな未来に商社は何ができるんだろう?商社は歴史に登場して以来、さまざまな困難(こんなん)を克服しながら、時代の変化をとらえ、時代の要請に応えて事業を進化(しんか)させてきた。そして、いまや単なるモノの取引きの仲介だけでなく、事業そのものへの投資や金融商品の開発のほか、いろいろな事業や企業を結(むす)びつけて新しい事業を生み出したりすることもしているんだ。そして、商社は海外の事業所や投資先などのネットワークを数多く持っていて、世界中から価値ある活きた最新情報を得ることができる。こんなさまざまな機能を持った企業は、世界でも商社以外にはないよね。

きっと、これからも商社はこれまで以上に、世界や日本の経済、国際社会の発展のために大きく貢献(こうけん)していく。21世紀は、地球規模の課題克服に向けた商社の活躍、役割がますます求められる時代になるでしょう。

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