日本貿易の現状2004年版―概況―


I.貿易概況

1.通関収支:アジア・EUが堅調、3年ぶりに10兆円台を回復

・03年の通関ベースによるわが国の貿易収支黒字は、前年比3,600億円、4%増の10.2兆円で、2000年以来3年ぶりに10兆円を上回った。成長を続ける中国向けなどを中心に輸出が増加(前年比5%、2.5兆円増の54.6兆円)する一方で、製品輸入の拡大や原油価格上昇などにより輸入も増加(同5%、2.1兆円増の44.3兆円)したが、輸出増が輸入増を若干上回っている。また価格指数が、円高の影響などにより輸出0.4%減、輸入2.0%減であったのに対し、数量指数はそれぞれ5.1%増、7.1%増で、輸出入の金額の増加は主として数量増による。

・地域別の貿易収支黒字は対米国が1.0兆円(14%)減の6.6兆円に対し、対EUが同5,000億円(23%)増の2.7兆円、対アジアが同1.5兆円(38%)増の5.6兆円である。またアジアのうち対NIESが9,300億円(13%)増の8.3兆円、対ASEANが2,000億円(39%)減の3,100億円、一方対中国の赤字は6,600億円(24%)減の2.1兆円である。

・品目別の特徴として、輸出では半導体等電子部品、音響・映像機器の部分品、自動車の部分品、鉄鋼や化学品などの素材が増加しており、一方輸入では、事務用機器、音響映像機器、科学光学機器などが増加し、貿易構造に変化の兆しが見られる。

・また輸出入を合わせた貿易総額は、前年比4.5兆円増の98.9兆円となり2年連続して過去最高を更新した。地域別には、米国は9%減の20.2兆円、EUは7%増の14.0兆円、アジアは10%増の45.0兆円である。また、アジアの中でも、中国向けが21%増の15.4兆円となり、米国から中国への流れが鮮明となっている。

2.輸出:機械機器の部分品や素材が堅調、2年連続過去最高を更新

・02年52.1兆円と過去最高を更新した輸出は、中国など堅実なアジア経済を背景に03年も着実に増加し、前年比5%、2.5兆円増の54.6兆円と、2年連続して過去最高を更新した。円高などの影響により価格指数が前年比0.4%減であったにもかかわらず、輸出が堅調に推移したのは、同5.1%という数量指数の増加によるものである。

・市場別にみて、米国向けが低迷した反面、EU向けが回復し、アジア向けは引き続き堅調に推移している。ちなみに米国向けは前年比1.5兆円(10%)減の13.4兆円であったが、EU向けは同7,000億円(9%)増の8.3兆円、アジア向けは同2.9兆円(13%)増の25.3兆円である。またアジアの中でも、特に中国とNIESが堅調で、それぞれ同1.7兆円(33%)増の6.6兆円、1.0兆円(9%)増の12.8兆円となっている。

・主要品目別にみれば、機械機器が前年比1.8兆円(5%)の大幅増であるが、その内訳は、金属加工機械、建設用・鉱山用機械など一般機械が同4,300億円(4%)増の11.0兆円、映像機器、音響・映像機器の部分品、半導体等電子部品、電気計測器などの電気機器が同9,400億円(8%)増の12.9兆円、自動車の部分品を中心とする輸送用機器が同2,600億円(2%)増の13.3兆円となっている。また鉄鋼や化学製品などの素材も引き続き堅調で、それぞれ同1,300億円(7%)増の2.1兆円、同3,500億円(8%)増の4.5兆円となっている。一方で、事務用機器の落込みが顕著で、同3,900億円(13%)減の2.6兆円となり、完成品から部分品へのシフトが見られる。

3.輸入:製品類の輸入が拡大、原油高もあり2年ぶりに過去最高を更新

・02年に前年比微減となった輸入は、03年に同2.1兆円(5%)増の44.3兆円となり、01年の42.4兆円を上回って、2年ぶりに過去最高を更新した。円高などの影響もあり価格指数は2.0%減だが、数量指数が7.1%増となり、金額では前年比大幅増となっている。

・市場別では、アジアからの輸入が前年比1.4兆円(7%)増の19.7兆円と5年連続で過去最高を更新、中東が同8,300億円(16%)増の5.9兆円、EUも同1,800億円(3%)増の5.7兆円であったが、一方で米国は同4,200億円(6%)減の6.8兆円と3年連続の減少となっている。ちなみにアジアからの輸入の内訳は、中国が同1.0兆円(13%)増の8.7兆円、NIESが同700億円(2%)増の4.5兆円、ASEANが同3,100億円(5%)増の6.8兆円である。特筆すべきは、中国が5年連続して過去最高を更新、米国との差を1.9兆円に広げ、最大の輸入国としての地位をより強固にしたことである。

・また主要品目別にみれば、原油価格の上昇を背景に、鉱物性燃料が前年比1.2兆円(14%)増の9.3兆円で、02年微増であった製品類の輸入が、同9,800億円(4%)増の27.2兆円と増加幅を拡大している。製品類の内訳は、化学製品が同2,200億円(7%)増の3.5兆円、金属及び同製品が同2,100億円(12%)増の1.9兆円、半導体等電子部品、音響映像機器、科学光学機器、事務用機器などの機械機器が同5,300億円(4%)増の14.0兆円である。一方で、えびなど魚介類を中心とする食料品が、同1,800億円(3%)減の5.1兆円とふるわなかった。