会長挨拶・コメント

定例記者会見

2019年7月24日に開催された会長定例記者会見要旨

皆さん、おはようございます。

米国が中国に対する追加関税の第一弾を発動したのが、昨年の7月6日でしたので、ちょうど1年が経ちました。対象金額は340億ドルでしたが、その後第3弾までで、累計2,500億ドルに拡大されました。中国側も対抗して1,100億ドル相当の輸入に対して追加関税を課しています。

1年が経過して、米中間の貿易額は大きく落ち込みました。米国の景気について、貿易協議の先行きも含め、下振れリスクが意識されるようになり、FRBは今月末開催の連邦公開市場委員会で、10年ぶりの利下げに踏み切るとの見方が強くなっています。15日に発表された中国の4-6月期実質GDP成長率は、6.2%増と四半期統計の公表が始まった1992年以来の低水準となっています。長引く貿易摩擦の影響で輸出や投資が振るわないことが、低迷の一因と見られています。

私が繰り返しこの場でも申し上げてきたとおり、多国間の通商ルールから逸脱した保護主義的な措置は、GDPで最大規模の米中両国経済への直接的影響に留まらず、サプライチェーンへの波及による混乱を通じ、世界経済に悪影響を招きます。
米中対立は貿易不均衡から、覇権争いや安全保障問題など別次元へと拡大しているようですが、まずは通商問題について、一刻も早く妥協点を見出すことが、両国経済のみならず、国際貿易にとっても最優先事項であると改めて強調したいと思います。

幸いG20大阪サミットの場で、米中協議の再開が合意され、首脳宣言でも、WTO改革の必要性について、一歩踏み込んだ合意がなされました。米国と世界の景気が下降局面に向かいかねない、微妙な時期だけに、各国が一層協調を強め、多国間ルールに則った自由な貿易を拡大していくことが重要です。

大阪サミットでは、WTO改革以外にも、国際的なデータの流通に関するルール作りを本格的に始める「大阪トラック」の開始が合意されました。急激に進展するデジタル経済化を、世界の経済発展につなげるため、共通ルールの整備は非常に重要です。
また、新興国の経済開発にあたり、債務の持続可能性と透明性を確保することで合意したことも、我が国の官民が協力して進めている、質の高いインフラ開発の推進にとり、フォローの風となるものです。

ところで、対韓輸出管理の問題につきましては、禁輸でも輸出規制でもなく、WTOルールとは矛盾しない、「輸出管理上の運用見直し」と理解しております。今回の措置の背景には、「日韓間の信頼関係が著しく損なわれたといわざるを得ない状況」との認識があるとのことですが、可能な限り早期に政府の安全保障貿易管理上の懸念が解消され、両国間の信頼関係が修復されることを望むと同時に、韓国は大切な貿易相手国であり、日本貿易会としては、両国間の貿易・投資・人的交流に影響が出ないよう、冷静に対処していきたいと考えております。

最後になりますが、先の参院選では、現政権への信任が示されました。官民一丸となって、来月開催のTICAD7、さらには10月の即位の礼、来年の東京オリンピック、パラリンピックを成功させ、日本がその存在感をさらに高めていくことを、切に願っています。

私からは以上です。

質疑応答

(記者) 対韓輸出管理の運用見直し実施から半月ほど経過したが、ビジネスへの影響は。

(会長) もう少し時間が経てば出てくるのかもしれないが、運用見直し実施からまだ2週間程度であり、影響が出たという話は特に聞いていない。

(記者) 経済産業省では、ホワイト国から韓国を除外する政令改正について意見を募集しているが、改正が実施された場合、どんな影響が考えられるか。

(会長) 輸出管理上の運用の見直しであり、輸出禁止でも輸出規制でもない。ルールに沿って手続きをし、許可を取れば輸出はできるので、まずは手続きをしっかりとすることだ。アジアでホワイト国の指定を受けているのは韓国だけで、手続き内容としては他のアジア諸国向けに現在行っているのと同様である。

(記者) 政府は、韓国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したと説明しているが、日本貿易会として韓国の輸出管理に不備や甘さを感じたことがあるか。

(会長) どんなことがあったか聞いていない。日韓の相互信頼が損なわれたことが今回の事態の背景であれば、できるだけ早く相互信頼を取り戻せるよう、経済界も含め、努力していきたい。

(記者) ホルムズ海峡で日本船籍含めタンカーへの攻撃が起きたことに対し、商社業界の対応は。有志連合で航行の安全を確保する動きもあるが、日本政府に求める対応策は。

(会長) 米国によるイラン産原油禁輸措置の適用除外が本年5月をもって失効したのを受け、商社各社では様々な事態に備え対応を行ってきた。イランは中東の大国で、日本との関係も深い。早くビジネスが通常状態に戻ることを切に願っている。

(記者) ホワイト国から韓国を除外することに対して日本貿易会の見解は。輸出管理の手続きが煩雑になることを懸念する声が、中小企業からあがっているが、サポートする考えはないか。

(専務理事) 当会では安全保障貿易管理委員会にて、経済産業省のパブリックコメントに対して意見を提出すべく取りまとめを行っている。韓国をホワイト国から除外することに異論はないが、商社として着実に手続きを行っていくため、可能な範囲で日本政府の懸念事項・留意事項を開示願いたいとお願いする内容になるものと承知している。今後対韓輸出で求められる手続きは、ホワイト国ではない東南アジアの国々に輸出する場合に適用されている手続きと同じであり、初めてのことではない。留意すべき点などの情報開示が、日本政府からあれば中小企業にも役立つと思う。

(記者) 韓国側でも手続きに懸念が出ていると報じられている。手続きを踏むうえで留意すべき情報の開示を求めるとは、具体的にどのようなことを指しているのか。

(専務理事) 日本政府として懸念している事項があれば開示をして頂くことで、輸出者としてより的確、効率的に輸出管理ができる。特定の貨物や技術、出荷先などに心配があるのならば教えてほしいということである。

(記者) 8月末にTICAD7が開催されるが、対アフリカビジネスの現状認識、期待などについてコメントを頂きたい。

(会長) アフリカは地理的に遠く、日本企業にとってなじみが薄いという側面もあったが、2016年にナイロビで開催されたTICAD6をきっかけに、資源開発や発電などのプロジェクトが進行している。マーケットとしてのポテンシャルは大きいと感じており、TICAD7を機に、一層取り組みが拡大することを期待したい。

(記者) 英国でジョンソン氏が保守党党首に選出され、合意なき離脱が現実味を帯びてきている。英国の政治情勢や合意なき離脱への備え、懸念についてコメントをお願いしたい。

(会長) まずは英国政治の混乱を収束し、しっかり方針をまとめてもらいたい。合意なき離脱でなく、マーケットに急激な変化をもたらさないよう、ソフトランディングできることが望ましい。

(記者) 日米貿易交渉が始まるが、期待や懸念について伺いたい。

(会長) 焦点は、農業と自動車関連になると思っている。農業関連は、TPP11で合意した以上の関税引き下げは行わないという事前合意があり、安心感がある。自動車産業は裾野が広いので、慎重に交渉していただきたい。

(記者) 輸出管理の問題につき、韓国はWTOで訴えることも予定しており、収束の兆しが見えないが、民間企業としては今後政府にどういった働きかけをしていくか。

(会長) 意見としては先ほど来申し上げていることを日本政府に伝える。WTOで訴えることについては、今回の措置がWTOルールに違反するかどうかは疑問であり、これによって大きく混乱することはないと思っている。むしろ、日韓両国間の信頼関係を早く取り戻すことが大切である。財界活動を通じて信頼関係を維持していくことで、両国間の信頼関係回復に役立てばと思っている。

(記者) 先の参議院選挙では、投票率が5割を割り、18・19歳は3割にとどまった。このあたりの所感を伺いたい。

(会長) 全般的には、アベノミクスをはじめとする現政権の施策が支持されたと思っており、評価したい。投票率が低かったことについては、従来とは違う形の取り組みを考えるべき時期に来ているのかもしれない。期日前投票は増えているが、さらに期日前投票期間を延長したり、電子投票の導入なども考えてはどうか。投票率を上げることで、より国民の総意を反映した政治が行われることを期待する。

以上