会長挨拶・コメント

定例記者会見

2019年9月18日に開催された会長定例記者会見要旨

皆さん、おはようございます。

最初に、台風15号による災害で犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表すると共に、被災され、今なお不自由な生活を送られている皆様に、お見舞いを申し上げます。大きな自然災害が頻発しており、企業としましても危機管理体制をしっかり構築する必要があるとの思いを強くしております。

本日は、お手元に昨日発刊されたばかりの当会月報をお配りしています。2ページに当会の貿易動向調査委員会が、日本の貿易動向を総括した記事を掲載しましたので、ご覧ください。

冒頭に記載の通り、今年の前半は、輸出入とも頭打ちであり、貿易収支は、昨年後半から赤字が続いています。輸入の減少は、原油価格の下落が主な要因ですが、輸出は、中国をはじめとするアジア向けが減少しました。中国向けは半導体製造装置が前年同期比マイナス21.4%、半導体等電子部品もマイナス14.4%と2ケタの減少を記録しましたが、スマートフォン向けの需要が伸び悩んだことが原因です。

さて、9月1日には、米国と中国がともに第4弾の追加関税を発動しました。クリスマス商戦も意識して、スマートフォンやゲーム機、玩具などは、12月15日まで発動を延期する措置が取られましたが、追加関税が消費財にも拡大することになれば、消費者の景況感が急速に悪化するのではないかと懸念しています。米中間の交渉は、暫定合意の可能性に関する報道もあり、今後の交渉の進展に注目したいと思います。

一方で、日米貿易交渉で基本的合意が得られたことは、明るいニュースでした。心配しておりました日本の農産品輸入関税は、TPPレベルで合意されました。米国の輸入関税についての交渉は持ち越されましたが、日本製自動車に対する追加関税を含む諸課題について、更なる交渉の余地を残さぬよう、両国政府が最終合意を取りまとめ、締結、発効することを期待します。

国際情勢では、先週末にサウジアラビアの石油施設が攻撃を受けるというニュ-スが飛び込んできました。鎮静に向かうと見られていた中東地域の地政学的リスクが急速に高まり、政治・経済の両面で不透明感が一層増しています。フランスで開催された先のG7でも、サミットの歴史上、初めて包括的な首脳宣言について合意できませんでしたし、Brexitを巡る英国政治も混迷の度合いを深めています。このように世界情勢が不透明性を増す中、リーダー役を果たせるのは、長期にわたり安定政権が続き、政治も経済も安定している、日本であるということが一層鮮明になってきています。このことは先のTICAD7の成功が示すとおりです。

最後に、ラグビー・ワールドカップがいよいよ今週から始まります。10月の即位の礼、来年の東京オリンピック、パラリンピックと、しばらく世界が日本を注目するイベントが続きます。先週、改造内閣が発足しましたが、この内閣が国民の期待に応え、文字通り「安定と挑戦」の両面で大胆なリーダーシップを発揮し、日本の存在感を世界でさらに高めて頂くよう、切に願っています。

私からは以上です。

質疑応答

(記者) 本年上半期は日韓の貿易、投資がともに減少した。来週、日韓経済人会議がソウルで開催されるが、今後の日韓ビジネスついてどう見ているか。

(会長) 輸出管理の運用見直しについては、必要な手続きを踏めば、輸出できるので、貿易に大きな影響があるとは考えていない。韓国向け輸出は、韓国から中国向けの輸出が減少した影響を受けて落ち込んでいる側面もあるのではないか。経済界としては、互いに協力して必要な経済交流を継続していきたい。かつて、日中関係にも厳しい時代があったが、両国の経済界がしっかりと経済交流を続けたことが今日につながった。日韓経済人会議は、そうした経済交流の場として重要だ。

(記者) 韓国が、輸出管理上の優遇対象国から日本を除外する措置を実施したことについての評価、影響は。

(会長) 新たに手続きが必要になることで、しばらくは戸惑いもあるだろうが、慣れれば手続きもスムーズになっていくのではないか。今回の韓国による措置は、半導体関連などの重要品目は対象外であり、実質的にそれほど大きな影響は無い。

(記者) サウジアラビアの石油施設攻撃について、日本のエネルギーセキュリティー、エネルギー調達の観点から見解を伺いたい。

(会長) サウジアラビアの石油施設への攻撃により、中東における地政学的リスクが顕在化した。サウジアラビア政府は、月末までに生産能力を以前のレベルに戻すとして国を挙げて対応しており、原油価格も鎮静化してきている。日本は、根本的対応としては、エネルギー調達先の多様化を進めていくことが重要であり、さらには、中東におけるテロや戦争リスクを軽減するために各国と連携していく必要がある。

(記者) 今朝発表された8月の貿易統計(速報)では、対中輸出が2ケタ減となった。中国向け輸出の減少が続くと日本経済にどんな影響があるのか、見解を伺いたい。

(会長) 中国経済には少しずつ米中貿易摩擦の影響が出てきており、日本からの輸出では、建設機械や自動車部品、半導体製造装置等の減少が顕在化してきた。生産拠点の中国からアジア諸国へのシフトも始まり、中国向け輸出だけでなく全体像を見る必要があるが、足元では、アジア諸国向け輸出も減少している。サプライチェーンはグローバルに広がっており、米中貿易摩擦の影響が、世界経済全体に広がることを懸念している。これ以上影響が広がる前に、一刻も早く米中間の交渉で、落としどころを見つけてほしい。

(記者) 日米貿易交渉が今月末に最終合意までいくとの報道があるが、貿易業界としてはどういうところに期待し、注目しているか。

(会長) 農産品輸入について、TPPレベルまでの関税引き下げで合意したことは、想定の範囲内であり、評価したい。最も気掛かりなのは、米国による日本製自動車への追加関税、もしくは数量規制である。自動車産業は裾野が大変広く、日本経済にも影響が大きいので、今後、これらを実施しないという確約を取りつけてほしい。

(記者) 自動車に対する米国の輸入関税については、日本が農産品の輸入関税引き下げで譲歩したのに見合う形で、米国側も譲歩すべきだという考えか。

(会長) 企業経営の視点からは、先を見通せない状況が一番対処に困る。今は米国の自動車輸入が、どう扱われるか予想がつかず、メキシコ、カナダなども含め投資判断等を下しづらい。追加関税等の懸念が払拭されれば、積極的な経営判断を下す事ができ、米国経済にとっても雇用面等で、プラス材料になる。

(記者) TPPレベルというラインを設定して日本政府が交渉に臨んだことは妥当か。

(会長) TPPをさらに拡大していくことが、自由で公正な貿易・投資環境を整備していくことに繋がっていく。将来的に米国もTPPに迎え入れることを念頭に置けば、TPPと同レベルで日米交渉が合意できたことは評価できる。

(記者) 米中貿易摩擦は、商社業界にどんな影響があるのか。

(会長) 先ほども触れたが、中国向けの建設機械、自動車部品、半導体製造装置、電子部品の輸出減少は、数字として表れてきている。さらに大幅に悪化することはないと思うが、回復には時間を要する。他のアジア諸国に生産拠点を分散する動きもあるが、生産が起ち上がるまでにはタイムラグがあるので、しばらくは厳しい状況が続くのではないのか。

以上