会長挨拶・コメント

定例記者会見

2020年5月29日に開催された会長交代記者会見要旨

中村邦晴名誉会長(前会長)ご挨拶

本日はお忙しい中、日本貿易会の会長交代会見にご出席頂き、感謝申し上げる。

まず、この度の新型コロナウイルス感染により、お亡くなりになられた方々、及びそのご家族の皆様に、謹んでお悔やみ申し上げる。また、現在、感染症に罹患(りかん)されておられる皆様には、心よりお見舞い申し上げると共に、医療関係者の献身的な活動に対し、改めて感謝申し上げたい。

先ほど終了した定時総会にて、日本貿易会会長の職責を小林新会長に引き継いだことをお伝えする。私は、今後、名誉会長として当会の活動をバックアップして参る所存であるが、この機会に、過去2年間の振り返りと、後任への期待を申し上げる。

私は2年前に伊藤忠商事の小林前会長から会長職を引き継いだが、時代が平成から令和に移行する中で、世界の政治も、経済も、企業活動の在り方も大きく変化し、さらに昨今の新型コロナウイルス感染の影響で、これらが更なる見直しを迫られていく転換期に、日本貿易会の活動に関わってきた。

まず、貿易関連では、世界で自国第一主義の傾向が強まり、特に米中を中心に対立が激化した。また、欧州では英国のEU離脱という大変動もあったが、そうした中、日本はTPP11と日EU・EPAの発効に漕ぎつけるに至った。

貿易をなりわいとする当会としては、自由貿易の維持・発展はまさに一丁目一番地の最重要課題である。そこで、日本がこうした国際経済秩序の形成に貢献する一助となるべく、当会は、自由で公正な貿易及び投資環境の実現に向けた提言やコメントを発出し続けてきた。

また、国内に目を移すと、商社の力、中でも、シニア人材を社会で一層活用して頂こうと、国際社会貢献センター(ABIC)の存在を広くPRさせて頂いた。中小企業や地域経済の活性化における最大の課題は人材不足であることを痛感し、中小企業への人材支援のために、日本商工会議所との連携を実現した。また、地域経済活性化への貢献としては、外国人実習生の受け入れ支援のため、気仙沼市と組んで日本語教室を新たに開講する。

商社機能をアピールする試みとしては、初めての海外商社シンポジウムを、北京で開催した。大学生を中心とした参加者に対し、日中経済交流拡大に商社が果たした役割を説明し、意見交換を通じた交流も果たした。また、昨年の商社シンポジウムでは、モビリティ革命をテーマに取り上げ、各界のリーダーの方々から商社に期待する役割についてお話し頂くと共に、商社の若手に将来の夢を語ってもらい、好評を得た。

当会の運営面では、日本貿易会の活動の源である委員会の活性化に取り組んだ。具体的には、委員長と直接、対話を行いながら、委員会相互の連携を強化し、幅広い会員企業のニーズに応えることで、参加者にとって、より有意義な運営の実現を目指してきた。国際税制、海外子女教育、安全保障貿易管理、物流など、様々な分野での政策提言や社会に向けた情報発信はこうした委員会活動の成果である。また、持続可能な社会の実現に向けた取り組みとして、特別研究会を組織し、会員商社のSDGsへの取り組みを一層加速する施策を検討した。

当会は、来年1月、霞が関にオフィスを移転することを決定したが、これを、新たなステージに向けた挑戦の機会と捉えている。当会が、会員に一層頼られ、さすがは日本貿易会と言われる存在となれるよう、事務局の皆さんは、日々議論を重ねてくれている。

これらの活動が、会長就任当初に掲げた「未来をカタチに 豊かな世界へ 日本貿易会」というキャッチフレーズのとおり、まだ見ぬ未来をわずかでも形作り、豊かな世界を実現するための、ささやかな一歩となったのであれば、私の喜びとするところである。

バトンを引き継いで頂く小林会長は、国際ビジネスは勿論のこと、財界活動など、幅広い分野で大変豊富な経験をお持ちである。新型コロナウイルスの影響により、内外の経営環境が厳しさを増す中で、引き続き、働き方改革やデジタルトランスフォーメーションの推進をはじめとした会員企業共通の課題解決に取り組み、商社業界のビジネスモデルをさらに進化させることで、持続可能で豊かな世界を、目に見えるカタチで実現されるよう期待している。

最後になるが、メディアの皆様方をはじめ、当会関係各位の絶大なるご支援、ご協力に対して、この場をお借りして、厚く御礼申し上げる。同時に、小林会長に対する変わらぬご支援、ご協力をお願いし、私の挨拶とさせて頂く。

小林健新会長ご挨拶

新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々に衷心よりお悔やみを申し上げると共に、治療中の皆様にお見舞いを申し上げる。また、医療関係者の皆様、日常生活を支えて下さっている方々に心より敬意を表したい。

さて、本日開催された日本貿易会定時総会で、中村前会長はじめ、理事、会員の皆様にご推挙頂き、会長職を引き受けることになった。身に余る光栄で、会長としての責任の重さに身の引き締まる思いがする。

過去2年間、中村会長は「未来をカタチに 豊かな世界へ 日本貿易会」というキャッチフレーズを掲げ、傑出したリーダーシップを発揮され、様々な分野で充実した活動を展開してこられた。私もこの流れをしっかりと受け継いで、日本貿易会と商社業界がさらに発展していくよう、微力ながら全力を尽くす所存である。

当会では、新会長が就任する際、活動方針をキャッチフレーズにまとめて発表するのが慣例となっている。私も色々と考えた結果、「未知の時代を切り拓く 日本貿易会」とした。

日々刻々と変化する世界情勢の中、新型コロナウイルス感染拡大の影響でビジネスモデル、社会の仕組み、人々の生活の在り方にも様々な変化が生じている。今後の社会の変化に合わせ、自らの在り姿も柔軟に、ダイナミックに変えていきたいという思いを込めたものである。

今、世界はデジタル技術の急速な進歩により社会が急激に変革する(デジタルトランスフォーメーション(DX))歴史的転換期を迎えている。私たちは、グローバルな経済連携こそが世界経済の発展、生活水準の向上、世界平和に寄与すると信じ、経済活動を展開してきた。一方、米中貿易摩擦を契機に、保護主義や自国優先主義への傾向が強まり、これらは単に経済に留まらず従来の国際関係を大きく変容させようとしているが、新型コロナウイルスは保護主義的通商政策の拡大をもたらし、世界の分断に拍車をかけるおそれがある。

このような時だからこそ、改めて国際的な連携・協調の構築に向けて、日本の果たすべき役割は益々重要になってくる。また、デジタル技術の急速な進歩、SDGsやESG経営、働き方改革、ダイバーシティ等への社会的関心も益々高まっており、まさに未知の時代への船出を迎えた。

商社業界には、従来の貿易・投資の推進・拡大に加え、デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの創出等、これまでの常識にとらわれないチャレンジが求められている。世界を再び緊密に繋ぎ、経済を活性化させ、豊かな世界を実現するために、私たち日本貿易会は、日本政府や各国の通商関連機関と連携し、より積極的な提言等に取り組んで参る所存である。引き続き、皆様には一層のご支援を賜りますよう、宜しくお願いしたい。

質疑応答

(記者) 新型コロナウイルス感染拡大に関する緊急事態宣言が全面解除された。今後withコロナ、afterコロナへと移行していくことになるが、その中での商社の使命をどう考えているか。

(小林新会長) 新型コロナウイルスによりヒトやモノの流れが寸断され、世界的なサプライチェーンを見直す時期に来ている。商社が貿易や投資を通じて長年築き上げてきたネットワークや人材といった強みを活かし、サプライチェーンの再構築に貢献していくことが重要な使命の一つである。尚、新型コロナウイルスのリスクにどう対処していくかが各企業にとっても重要な課題であるが、目下、最優先事項は命・健康を守ることである。

(記者) 中国政府が香港国家安全法の制定を決定したことで、米中対立の激化も避けられない見込みとなっている。日本に求められる役割・使命をどう考えているか。

(小林新会長) 香港国家安全法の制定決定に対し、米国は既に深い懸念を表明しており、今後どのような行動を取るかを含めて注目している。日本は大きなマーケットである中国との経済的な関係が深い一方、日米同盟を基軸とした安全保障陣営に属しており、今後は更に難しい舵取りが求められる。国際的な連携・協力を通じて、米中を繋いでいくことが日本の使命である。

(記者) 新型コロナウイルス感染拡大も踏まえて、米中対立をどう見るか。

(小林新会長) 新型コロナウイルスが発生する前から、米中の対立は既に始まっていた。米中は国家や経済の体制が根本的に異なる上に、新型コロナウイルス感染拡大に関する責任論争も加わり、対立収束は当分望めないと考えている。

(記者) 日本貿易会として商社を、海外へ向けてどのように発信していく考えか。

(小林新会長) 総合商社は日本にしかないユニークなビジネスモデルであり、様々な産業で幅広く事業を行っているので、商社を理解することは難しいと理解している。当会が編集した「商社ハンドブック」は非常に分かり易く、これも活用しながら、商社を理解してもらう活動を継続していきたい。

(記者) ニューノーマル(新常態)の時代と言われるように、働き方や企業の在り方も大きく変わっていくと思われる。こうした変化に商社としてどのように対応していく考えか。

(中村名誉会長) 新型コロナウイルス感染により社会が転換期にあると言われるが、元々社会が潜在的に抱えていた課題、具体的にはグローバルサプライチェーンの一国集中、デジタル化への対応、安全保障、働き方改革の取り組みなどが、一気に顕在化したと見ている。これらへの対応は従来以上のスピード感をもって実行しないと、国や企業は将来大きな問題を抱えることになる。また、商社の事業では、感染拡大で人の移動が制限されている現状は影響が大きい。特に事業投資では活動現場に行けないと判断が下せない面があり、先送りにならざるを得ない。一日も早く、事態が収束し、人の移動ができるようになることを望んでいる。

(小林新会長) 商社業界全体として認識しなければならないことは、デジタル化がこれからの経済活動を支配していくということである。オンライン会議等の「作業手段としてのデジタル化」は、積極的に採用していくべきものだが、「事業手段としてのデジタル化」をビジネスモデルに組み込んでいくことが非常に重要であり、今後の大きな課題である。

以上