会長挨拶・コメント

定例記者会見

2020年7月15日に開催された会長定例記者会見要旨

九州をはじめ各地で発生した豪雨による災害で犠牲になられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災され、不自由な生活を送られている皆様に心からお見舞い申し上げる。

日本貿易会として重要と考えている3つの点について申し上げる。

1点目は、コロナを踏まえた今後の商社ビジネスの方向性についてである。国内での爆発的な感染は回避できていると了解しているが、海外では米国や南米を中心に感染拡大が続いており、状況を注視していく必要がある。日本経済界としては引き続き、感染拡大の防止と経済活動の再開を両立させることが課題である。コロナの対応を巡り、わが国では、デジタル化の遅れが鮮明になった。商社業界は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、新たなビジネスモデルを構築していく必要がある。また、これまで築いてきたグローバル・サプライチェーンも見直しを迫られており、幅広いネットワークや産業知見を発揮し、サプライチェーンの再構築に貢献しなくてはならない。

2点目は、米中関係の動向についてである。米中は従来から覇権争いを繰り広げてきたが、WHOや香港を巡り、対立構造をますます深めている。香港の国家安全維持法には、米国のみならず多くの国や企業から懸念の声が上がっている。香港には1,400社以上の日系企業が進出しており、日本の経済界としても深い関係を築いてきた。世界に開かれた金融センターとしての香港の位置付けがどのように変化するか、注視していく必要がある。

3点目は、国際的な経済連携強化における日本の役割についてである。コロナから自国を防御することを目的に、世界各国では自国優先主義に傾斜した対策が取られており、今後も一部定着していく可能性も否定できない。米中の2大勢力が対立構造を深め、分断の進行が懸念される状況下、両国と関係が深いわが国は、引き続き自由な貿易推進の旗頭としてリーダーシップを発揮し、世界の経済を繋ぐ役割を期待されている。日本貿易会としても、日本政府が推進する日英EPAや、RCEPなどの国際的な経済連携の推進について、協力していく。

最後に、6月末に発刊した特別研究報告『SDGsと商社』をPRさせて頂く。

当会では、2019年度に、SDGs研究の第一人者である慶應義塾大学の蟹江(かにえ)教授を主査に迎え、「SDGsの達成に向けた商社の取り組み」をテーマとする特別研究を行った。SDGsが提唱する17のゴールは、商社の幅広いビジネス領域と親和性が高い。商社が持つ強みとSDGsの特質を整理し、具体的な事例紹介を通じ、商社業界が取り組むべき方向性を検証している。これからの商社の活動、目指す未来像について、少しでも多くの方にご理解いただければ幸いである。

質疑応答

(記者) 政府は国内の低効率な石炭火力発電所を休廃止する方針を表明したが、商社業界への影響は。

(会長) 世界的なCO2削減の動きを踏まえて方針が示されたものであり、日本には老朽化で効率が低くなった火力発電所がまだあるので、適切な方針であると了解している。会員各社も政府の方針に従った施策を検討していると了解している。一方、日本の総合的なエネルギー政策の見直しが必要である。2018年に策定された現行のエネルギー基本計画は、原子力発電所が相当程度稼働している前提のもとに策定されたものであり、現状を踏まえて経済界の意見も取り入れながら、政府にてよく検討していただきたい。国内電力会社への電力用石炭の供給ビジネスへの影響については、個社により異なる。すでに電力用石炭事業から撤退した企業もある。石炭火力発電所は、新興国での需要が強い。国が発展していく上での国家政策として、石炭火力発電所が必要な国もある。日本のみならず、特に新興国の政策や環境の観点も踏まえて石炭火力発電の輸出を判断していく必要がある。

(記者) 米国は香港情勢をめぐって中国への圧力を強めているが、ビジネスへの影響は。

(会長) 現状、具体的な影響は出ていない。香港は一国二制度のもとに、自由な経済体制を維持してきたが、香港の国家安全法制が制定され、政治の問題が出てきた。安全保障問題にも関わってくる状況にあるといえ、中国の台湾政策にも注視が必要な状況といえる。香港が開かれた国際金融センターとしての位置付けを維持できるか、今後の米中関係を含め状況を注視していく必要がある。

(記者) 九州での豪雨被害に対して日本貿易会として対応する予定は。

(会長) 会員各社がいろいろな形で対応していると了解している。日本貿易会としては、どのような形で支援することができるか、たとえばABICから教員人材を派遣する等、日本貿易会ならではの支援を行えればと考えている。

以上