第3回 日本貿易会賞懸賞論文 講評
第3回日本貿易会賞
懸賞論文審査委員会
委員長 中谷 巌
まず、日本貿易会主催の第3回懸賞論文募集に対し、例年通り、多数の興味深い論文が多数の国々から寄せられたことは、審査委員長としてこれ以上の喜びはない。関係各位のご尽力に対し厚く御礼申し上げたい。
今回、「グローバル資本主義と日本企業」という懸賞論文のテーマを設定した意図は、資本市場のさらなるグローバル化が進む中、日本企業がさらなる発展を遂げるための可能性と課題を議論して貰おうということであった。とくに、最近は投資ファンドをはじめとする国際資本が国境を越えて企業の買収に乗り出すことが日常化しており、日本企業も国際基準を意識した企業統治や経営方針を打ち出す必要に迫られている。このことを意識して、日本企業のあるべき姿を議論していただくことは、グローバル市場における日本企業の経営について考える上で大いに参考になると考えた。
このような問題意識で論文を募集したところ、幸いなことに多くの興味ある論文が寄せられた。国籍でいえば日本を含め22ヵ国からの投稿があり、英語による論文は約半数に達した。このようなグローバルな広がりを持った応募者を世界中から集めた懸賞論文は我が国ではおそらくは当日本貿易会の懸賞論文のみではないだろうか。
多くの興味深い論文が寄せられたが、審査員全員が「大賞作」として強く推薦する作品はなく、結局、以下の4点が「優秀作」として選ばれた。
Heng DYNA:
"The Win-win-win Globalization and Japanese Companies"
本作品は、日本の技術力、グローバル資本、途上国の人材をうまく組み合わせることで三者のwin-win-win関係を構築すべきだという強力な議論を展開している。
Pin-Quan NG:
"Gundamnomics: Transforming Corporate Japan for the Challenges of Global Capitalism"
本作品は、最近の日本のアニメやロボット技術の進展など、日本経済が戦後大きく体質転換してきたことを例にとり、これからのさらなる転換への考え方を語っている。
Séphora VOLCY:
"Responding to Global Capitalism: Today's Priority on Japan's Business Agenda"
本作品は、グローバルキャピタリズムという新しい現実の前に、日本企業や日本政府が、いかにして日本独自の視点を保ちながら自らの方向性を再構築すべきかを論じている。
神谷 渉 :
「日本企業への提言-緊張感のある企業への変革を」
本作品は、日本企業のこれまでのビジネスルールに日本的な「甘え」があったことに注目し、これを是正していくことが必要というユニークな提言をしている。
いずれの作品もそれぞれが非常に興味ある論点を提供しており、一読の価値がある。ただし、審査員がこぞって強く推薦する突出した論文はなく、残念ながら今回の懸賞論文では「大賞」は該当なしとなったことをご報告する次第である。