日本貿易会賞懸賞論文 Awards JFTC Essay Competition

第4回 日本貿易会賞懸賞論文 講評

第4回日本貿易会賞
懸賞論文審査委員会
委員長 中谷 巌

第4回日本貿易会賞懸賞論文では、日本を含む計35ヵ国から計151点の応募があり、国籍数、応募数とも過去最多となった。特に、外国籍の方からの応募が6割となり、さらに国際色豊かとなった。かくも多数の興味深い論文が世界各国から寄せられたことは、審査委員長としてこれ以上の喜びはない。このようなグローバルな広がりを持った懸賞論文は、他に類を見ない。このような論文募集を続けられている日本貿易会に対し敬意を表するとともに、業務多忙の折、論文審査にご協力くださった審査委員の方々に厚くお礼申し上げたい。

今回の懸賞論文テーマは「地球を救う『日本型』ビジネスモデルとは」であったが、資源の枯渇、環境汚染など、地球環境問題の解決は待ったなしの状況にあり、その中で日本の役割はますます重要になっている。寄せられた論文を読んで強く感じさせられたことは、地球環境問題解決に向けて、日本企業に対して大きな期待を寄せる論文が非常に多かったということであった。それだけに、日本企業の責任は重いとの感を深くした。

いずれの作品もそれぞれが興味ある論点を提供しており、一読の価値がある。ただし、審査員がこぞって強く推薦する突出した論文はなく、残念ながら今回の懸賞論文では「大賞」は該当なしとなった。

その結果、以下の4点が「優秀賞」として選ばれた。

Kamila PIECZARA:
"Reinforcing the Japanese Brand as Environmental Leader: The Role for Corporations"

日本企業がいかにしてこれまで、環境適応能力を高めることができたのかについてバランスよく分析している。日本文化が持つ「ソフト」力が大きな役割を果たしたとの指摘は興味深い。

WONG, Chun Yiu:
"Anatomy of Japanese Business Leading to Sustainable Growth"

日本企業の環境経営の実態を豊富な実例に基づいて解説している。特に、環境対応がコストではなく、ビジネスチャンスであることを説得的に展開しているのは評価できる。

Ananya MUKHOPADHYAY:
"Japanese Environmental and Energy Services - The Dark Horse"

多くの途上国が環境対策を講じようとして困っているのは設備投資ではなく、それに付随するサービスであることを指摘し、日本企業がこの分野で貢献することを期待した好論文である。

安部直樹 :
「『微分型経営』から『積分型経営』へ-3つのパラダイム転換-」

資源逼迫が懸念される昨今、日本企業がいかに従来の発想を改め、長期的視点から資源小国の運命を脱することができるかを説得的に論じた興味深い論文である。

なお、今回の懸賞論文募集にあたっては、10代の若き投稿者も少なくなかった。審査委員会ではこれら投稿論文のうち、優秀な論文については顕彰すべきではないかという意見が多数を占めたため、下記論文に対し、奨励の意味で「審査委員長特別賞」を授与することとした。

Shellen HALIM:
"Japan's Green Technology for Earth and Economy"

環境問題が日本企業にとって大きなビジネスチャンスであること、特に、近隣の途上国との関係を重視することが重要であることが説得的に論じられている。