日本貿易会賞懸賞論文 Awards JFTC Essay Competition

第7回 日本貿易会賞懸賞論文 入賞作品要旨

大賞

ジャパン・バージョン3.11 - 3.11を新しい日として蘇らせる

ニコール・ブラウン(ジャマイカ、29歳)
(仮訳・原文英語)

本同論文の題名は、発明家が新型モデルに「v」で始まる番号をつける慣行に由来している。新型モデルは従来品の特徴を残しながら、機能性や効率性が強化されている。同様に、3.11を悲劇的な地震や津波と結び付ける代わりに、日本を3.11以前よりも優れたより強い「ジャパン・バージョン3.11」に生まれ変わる日として蘇らせることが可能である。ジャパン・バージョン3.11は、今日の偉大な日本を作ってきた特性を保ちつつ、国の哲学、ビジョン、価値観、そしてイノベーション能力を再構築したものである。

最初の章は人間性の共有と社会との一体性という考え方に基づく、グローバルな相互依存関係の哲学に焦点をあてる。ジャパン・バージョン3.11は、自立性とグローバル連携の健全なバランスを保っている。また、グローバルな社会との一体性には、外国との健全な関係作りが必要であり、それによって日本が新しく国際市場に進出する際に歓迎される環境が生み出される。ここでは筆者の母国ジャマイカでの実例を使って、日本がいかに世界に良い影響を与えられるかということを説明する。

ジャパン・バージョン3.11のビジョンに関する章では、若年層育成への投資と、若年層の意思決定過程への参画について検討する。また、ジャパン・バージョン3.11が持続可能なリーダーシップを生み出す強固なシステムの構築、ガバナンス分野のビジョンについて述べている。日本は知識共有のビジョンを掲げることにより、日本は「グローバル災害管理プログラム」の持続的な取り組みにおけるリーダーになるとともに、最先端の災害対応教育を打ち出すことができる。

開発および復興に向けた革新的アプローチと題された章では、原子力の安全性、再生可能エネルギー、捜索救助技術分野において、ジャパン・バージョン3.11がなし得るイノベーションについて述べる。こうした各分野において技術革新が芽生えている状況について精査するとともに、こうした技術を表舞台に乗せる上で、日本がいかに貢献することが出来るのかを示す。

ジャパン・バージョン3.11の基本的価値観に関する章では、めまぐるしい環境変化の中、人命、身体、精神の健全さの尊さに価値を置くことで、日本が、生産性と総合的な健全性のバランスのとれた社会としてのモデルとなり得ることを示す。

結論では、ジャマイカのことわざ「likkle but tallawah(山椒は小粒でもピリリと辛い)」を引き合いに、これまでの各前章における洞察や分析を組み合わせて日本の未来に向けた希望のメッセージを述べ、ジャパン・バージョン3.11を絶望の灰から再生の頂点に立ちあがる「不死鳥」になぞらえて記述している。

優秀賞

新しいイノベーション国家日本を作るために:偉大な復興に向けたロードマップ

チデン・バルメス氏(フィリピン、25歳)
(仮訳・原文英語)

日本を豊かにする中心的推進力はイノベーションである。現在もイノベーションは日本に実質的なプラスの変化をもたらす鍵となるツールである。本論文では「新しいイノベーション国家日本」という包括的なテーマの元に、三つの核となるビジョンの概要を述べる。互いに関連する三つのビジョンは、「起業国家日本」、「グリーン国家日本」、そして「グローバル国家日本」である。

起業国家日本とは、中小企業にイノベーションを起こす機会が与えられていることを意味する。日本は型にとらわれない考え方をより一層すすめ、産学間の技術移転を強化し、リスク回避の態度を減らし能力主義が保たれるように、企業文化を見直さなければならない。加えて、起業家精神を受け入れる土壌を醸成するため、教育カリキュラムの中にも起業家精神を十分に組み込む必要がある。

グリーン国家日本とは、「グリーンな復興」の最良の事例を示すべく大きな機会を捉えることである。日本は原子力危機をきっかけとして、エコ・イノベーションを通じた、より環境を重視した開発モデルに方向転換することができる。一定の裁量権を持つ「グリーン経済地区」として東北地方を復興するなど、現在のエネルギー危機を「機会」に変えることができるならば、日本はグリーン成長の推進において世界全体に波及効果を及ぼすことができるだろう。

グローバル国家日本の実現には、グローバルな発想を持つ企業や組織の設立が必要である。これを達成するためには、文化の多様性、能力および適正評価システム、ワーク・ライフバランス、機会平等などが、企業や官僚構造に内在する無意味な保守主義にとって代わる必要がある。外国人労働者や外国人による起業を認めることで、新しいマネジメントモデルがもたらされ、現状を打破できるのではないだろうか。また、国際舞台で日本の意見が聞き入れられるためには、英語によるコミュニケーション能力を向上させ、海外との教育連携を強化させる必要がある。

日本は過去の手法にこだわりすぎ、新たな問題や挑戦を孕むダイナミックな変動への考慮がなされていない。3月11日の大災害を抜本的変革の推進力とすべきだろう。国際的なパワーの変動が東半球に向かう中、日本がアジアと共に台頭するためには立ち直る力を示すリーダーシップが不可欠である。リーダーシップとは、こうしたビジョンの実現にほかならない。