第7回 日本貿易会賞懸賞論文 講評
第7回日本貿易会賞
懸賞論文審査委員会
委員長 中谷 巌
まずは、第7回日本貿易会賞懸賞論文コンテストに対し、世界各国から過去最多数となる186本の論文の応募をいただいたことを感謝したい。応募論文の内訳は、グローバルな広がりをもつ本懸賞論文コンテストらしく、日本語による応募が66本、英語による応募が120本と、英語による投稿が圧倒的に多かった。論文のテーマが、「3.11後の”新生日本”のビジョン」とタイムリーなものであったことも、世界の関心を集めることができた一つの理由だと思う。
多くの論文を読みながら、外国の人たちがいかに日本の大震災のことに心を痛めてくださっているかが、身にしみてわかった。また、日本という国に対する関心が非常に高いということも感じさせられた。日本人としては、大変ありがたいことである。
とは言え、審査は厳重に行わなければならず、審査委員会は例年通り、かなりの時間をかけて入念な読み込みと討議を重ねたうえで、下記の通り、大賞1点、優秀賞1点を選出した。
大賞
Nicole Brown:“Japan v 3.11 - Reclaiming the Date”
筆者はジャマイカ出身で、現在はトリニダード・トバゴ在住の女性である。まず題名が人目を引く。Japan v 3.11はジャパン・バージョン3.11と読む。つまり、3月11日以降の日本はニューモデルでなければならないという意味だ。3.11以降の日本がニューモデルであるためには、自国と世界をつなぐ新たな哲学、日本がこれから目指すべきビジョン、再生エネルギーなどのイノベーション、生産性や効率性だけを追うのではなく、心の豊かさを認める価値観などの諸点において、世界をリードできる体制が必要だというのが、著者の主張であり、多くの審査委員の高い評価を得た。また、著者の文章から滲み出る柔和で人間性溢れる感受性の豊かさを特筆すべき点として挙げておきたい。
優秀賞
Chiden Balmes: “The Making of New Innovative Japan: Road Map to Great Recovery”
筆者はフィリピンの大学生であり、現在韓国に留学中と聞く。審査委員の誰もが評価したのは、論文のまとめ方が見事だという点である。彼は、日本を新たなる「イノベーション大国」にすることが重要であり、次の3エリアにおける可能性について興味深い論点を提示した。起業家大国・日本、グリーン大国・日本、そして、グローバル日本である。そして、3.11が日本を「イノベーション大国」にする大きなきっかけになるだろうことを主張している。
以上が入賞作品の紹介であるが、このような国際性豊かな懸賞論文コンテストが日本貿易会によって今年も継続されたことを高く評価したい。