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資源ビジネス

BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)等の新興国の経済発展に伴い、近年、世界の資源・エネルギー消費量は大きく増加しています。しかも、新興国の経済発展はまだ始まったばかりであり、その消費量は今後も拡大を続けると見られています。しかし、資源の供給面においては、その開発・生産条件が年々厳しくなっているのが現状です。そのため、資源輸入国においては、その確保が喫緊の課題となっています。日本は資源小国ですが、多くの資源において、消費量で世界ランキングの上位にあります。2010年に中国に追い越されたもののGDPで世界第3位という日本の経済活動は大量の資源・エネルギー消費によって支えられており、資源を取り巻く環境が厳しくなる中で、商社に期待される役割はますます大きくなっています。



1. 資源ビジネスの現状と課題

世界で資源を巡る投資が加速しています。正確にいえば、2008年米国発の世界金融危機(リーマンショック)で一旦減速したのち、再度、注目を集めていると言ってよいでしょう。新興国の急成長に伴い資源消費が拡大する中では、必然的な現象です。

さらなる拡大が見込まれる新興国の資源需要

新興国の急成長は、資源の消費構造を変化させました。2000年以前、人口では2割程度の先進国が、世界の資源の過半を消費する構造でした。先進国は大量の資源消費によって、高い経済成長を可能にしていたのです。しかし、2000年代に入り、世界経済の成長の主役は先進国から新興国にシフトしました。2004年以降でみると、先進国の年率2~3%台の成長に対し、新興国は同7~8%台であり、その差は歴然です。2008年の米国発金融危機の影響で世界経済は減速を余儀なくされましたが、先進国と新興国の成長率の差は埋まっていません。世界の一次エネルギー消費量に占める新興国のシェアは、2000年時点では42%でしたが、2008年に50%を超え、2012年には56%にまで拡大しました。しかし、新興国における一人当たりの一次エネルギーの消費量は、2010年時点で先進国の4分の1でしかありません。経済発展に伴う新興国の資源消費は、さらなる拡大が見込まれます。

残るは事業化条件の厳しい地域での開発

一方、供給面では、資源の開発・生産条件は、年々厳しさを増しています。石油では、生産が容易な陸上や浅海に存在するいわゆる“イージーオイル”は枯渇傾向にあります。また、鉄鉱石や石炭、銅といった鉱物資源の鉱山では品質の低下が進んでおり、かつてのように、条件の良い鉱区からの生産だけでは、拡大する需要の増分を賄うことが難しくなっています。そのため、自然環境の厳しい地域、深海、需要地や積み出し港から離れた鉱区、政治的な制約条件の高い地域など、条件の厳しい地域の開発が増加しています。また、既存の油田や鉱山から、今まで回収が難しかった資源を、技術と資材を投入して回収する方法も増えています。例えば、石油では生産量減退の進む既存油田における増進回収法(油田に水や二酸化炭素を注入し圧力をかけて石油を回収する方法)や、銅ではSX-EW(溶媒抽出・電解採取)法による酸化銅鉱からの銅回収などが増加しています。

あらゆる資源は有限です。しかし、コストと手間をかければ、現状の技術でも回収できる資源量は意外に少なくありません。例えば、リチウムは海の水に溶けており、資源量としては膨大です。ただし、その濃度は塩湖の1万分の1であり、現時点ではとても商業ベースには乗りません。また、石油の可採年数は一般的に50年程度と言われていますが、大水深の深海油田やオイルサンド、シェールオイル等を合わせれば、その量はずっと多くなります。ただし、事業性を考えた場合、かけられるコストと手間は限られます。しかも、インフラの制約や技術者不足、資源ナショナリズムの高まり、環境制約など、コストをかけてもすぐには解決できない課題が多く存在します。

資源開発は、濃縮された資源をいかに効率よく取り出し市場に届けるか、が課題となります。しかし、開発コストや事業リスクが低い「コストパフォーマンスの良い資源」はあまり残されていません。また存在しても、そのような鉱区の多くはすでに資源メジャーや資源国の国営企業に押さえられていますので、新規開発の多くは、「比較的条件の良い鉱区」を探すことになります。開発の際は鉱区の条件の他に、カントリーリスクはとれるか、資源価格は安定的に推移するか、インフラ面の整備、技術および技術者の確保、環境負荷の低減など、事業化に向けた課題をクリアする必要があり、その条件はかつてより厳しいものになっています。

2. 急拡大する資源ビジネス

新興国による資源需要が拡大する中、その貿易量は急激に増加しています。例えば、鉄鉱石や石炭、液化天然ガスの貿易量は、この10年間でほぼ2倍に拡大し、年換算の伸び率は7~8%に達しています。この急激な需要に対応すべく、資源消費国では、その確保が喫緊の課題となっています。

中国の資源確保戦略

特に、新規需要増分の大半を占める中国では、国を挙げて資源確保戦略に乗り出しています。政府高官が相次いでアフリカや中南米などの未開発の資源を持つ国を訪問し、当該国への経済支援を手土産としたトップ外交で資源の確保を進めています。中国の強力な資源確保戦略の背景には、国内資源枯渇懸念と自給率の低下に伴う輸入需要の大幅な増加への対応という、差し迫った事情があります。中国は需要の急激な拡大に伴い、資源の自給率が急速に低下しています。例えば、1990年に120%であった石油の自給率は、2013年には41%にまで低下しました。石炭も2009年に純輸入ポジションとなり、今後も輸入量の拡大が見込まれています。中国は国内における資源の増産や新規探鉱に努めていますが、需要の増分全量を賄うことはできません。BPによると、2035年には中国の石油の海外依存率は75%程度になると見られています。中国は、今後の持続的な経済発展のために海外からの安定的な資源確保が不可欠であり、国家による海外資源獲得の動きを今後も一層活発化させていくでしょう。

存在感高める資源メジャー

また、資源メジャーも合併を繰り返しながら、拡大する資源市場において存在感を保持しています。石油業界では、かつてセブンシスターズと呼ばれた石油大手7社は、1990年代に巨大な4グループへの再編を果たしました。これは石油市場が低迷する中での統合劇でしたが、2000年代半ばの資源価格上昇の際には、余剰資金を背景に、鉄鋼やニッケル、銅、ウラン、アルミニウムといった資源業界がM&Aにより大きく再編されました。米国発金融危機により、多くの合併案が白紙となりましたが、優良鉱区を保持し、貿易において確固としたシェアを保ち続ける資源メジャーの存在感は極めて高いものです。例えば、表に示したアルミニウム、ニッケル、銅では、上位10社による生産量が、世界全体の5割前後に達しています。

資源ナショナリズムの台頭

さらに、資源国においては、自国の資源を最大限有効に活用しようという、資源ナショナリズムの動きが強まっています。ロシアやベネズエラ、ボリビアでは、石油やガスの国家管理の強化や国有化が進行しました。また、アフリカ諸国も、中国をはじめ多くの消費国が資源外交を活発化させる中、豊富な資源を武器に、経済支援や自国に有利な開発条件を引き出そうと動いています。資源は持てる国にとって、今や強力な戦略物資です。

売り手優位の状況の継続から、資源価格は上昇を続けています。しかし、資源確保の動きはとまらず、乗り遅れることが許されないような状況になっています。資源ビジネスは、供給国、消費国の両方を巻き込み、待ったなしのうねりとなって拡大を続けています。



3. 商社の海外「資源」への投資の加速

資源価格の上昇や関連ビジネスの拡大に伴い、商社の資源ビジネスがもたらす利益は拡大を続けています。2013年3月期の連結純利益に占める資源・エネルギーの割合は、総合商社大手7社の合計で4割強を占めており、総合商社事業の大きな柱になっています。

しかし、商社の資源投資は今に始まったことではありません。資源小国である日本が経済大国と言われるようになった背景には、輸入した資源を元に付加価値の高い製品を作り、それを海外へ輸出するという産業構造の構築があります。商社の海外資源への投資は、1960年代の高度成長期に、国内産業が必要とする資源・エネルギーを供給するという形で始まり、資源の調達者としての役割を深化させていきました。ところが、1980年代、1990年代に資源価格は低迷しました。1970年代のオイルショックを契機とした資源価格の上昇は、生産面で開発を促進させる一方、消費面の減退を引き起こしました。その結果、資源は供給過剰となったのです。商社は、投資に見合った利益を出すことができないばかりか、損失を抱えることもありました。商社の資源ビジネスは、時代のニーズをとらえて誕生し、産業構造の変化と合わせ、数々の試練を乗り越えながら、現在の形へ成長してきたのです。

そして現在、そのニーズはますます高まっています。2012年時点で、日本の鉄鉱石消費量は中国に次いで世界で2番目、一次エネルギー消費量は、中国、米国、ロシア、インドに次いで5番目です。同年の日本のエネルギー自給率はわずか6.0%であり、金属など主要な資源も多くを輸入に頼っている状況です。我々の現在の社会および経済活動を支えるためには、資源・エネルギーを海外から大量かつ安定的に、妥当な価格で調達する必要があります。しかし、中国が資源権益獲得の勢いを増し、ベネズエラやボリビアのように、自国の資源を最大限有効に活用しようという資源国の資源ナショナリズムの動きが活発化する中で、その調達環境は厳しさを増しています。

一方、資源価格の上昇は、条件のより厳しい鉱区の開発を可能にしています。開発条件の悪化と資源価格の上昇は、資源開発事業にとってはトレードオフの関係です。新興国の需要拡大という後戻りできない流れの中、資源関連事業には、新たなビジネスチャンスも生まれています。商社は、厳しい環境の中で、新しいチャンスを確実につかみ、事業拡大につなげています。

商社各社の中期経営計画によると、資源・エネルギーは引き続き重要な事業拡大分野の一つであり、従来型資源に加え、シェールガスやバイオエネルギー等の非在来型資源や新エネルギー等の新たな資源関連事業への投資も始めています。資源を取り巻く環境が年々厳しくなる中で、商社の海外資源投資が果たす役割は、ますます高まっています。

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