岩谷産業は、京都大学と共同で、プラズマレスで半導体やMEMS向け高速異方性エッチング、平坦化加工を実現する「ClF3 ガスクラスターエッチング」技術を開発しました。
本技術は、ガスを事前に放電させずに、基板に吹き付けて異方性加工を実現するという画期的なもので、ClF3(三フッ化塩素)ガスをノズルから真空チャンバーに吹き込むことで急激に断熱膨張させ、反応性ガスの分子・原子をクラスターと呼ばれる大きな集合体(数百から数万個の塊)にして基板に吹き付けたところ、室温下でも十分な異方性加工ができる結果を得ています。クラスターは分子・原子に比べて重いため、基盤に吹き付ける程度でも大きな運動エネルギーを持っており、衝突時にこの運動エネルギーが熱つまり反応エネルギーに変換され化学反応が促進されます。
同社は、同技術をMEMSや3Dデバイスで使用されているSiの深堀エッチング、圧力・加速度センサー、タイヤ用空気圧センサー、温度センサー、SOI基板の分離などに応用できると見込んでいます。また、電気的ダメージ、絶縁膜破壊、不純物汚染といった問題を克服することができため、現在広く半導体デバイス加工に用いられているプラズマプロセスに取って代わる技術になりうると非常に期待されています。さらに、平坦化技術にも応用でき、現在主流となっているCMP(化学的・機械的研磨技術)で発生する膜剥がれの問題を解決できる技術として非常に有望視されています。