コアラとカンガルーの国、豪州?
―意外に豪州を知らない日本人―

豪州トーメン社 社長

広原 邦光

1.はじめに

 一般の日本人が豪州と聞いてまずイメージするのはコアラ、カンガルーであろう。日本の約20倍の国土に約2,000万人しか住んでいない豪州は、コアラ、カンガルー等の野生動物、亜熱帯雨林、珊瑚礁から砂漠にいたる豊かな自然に恵まれている。観光資源はもちろん豊富だが、同時に高い経済成長を持続している先進国であり、日本にとって非常に重要な経済的パートナーであるという点がいつも見逃されているような気がする。

 小生が1980年初めに最初にシドニーに駐在して以来、現在まで3度にわたるシドニー駐在の経験から痛感するのは、日本人はあまりに豪州を知らなさすぎるのではないか、という点である。今回は、この誌面を借りて豪州の一端を紹介してみたい。

2.堅調な豪州経済と対日関係

シドニーのシンボルで有名なオペラハウス
シドニーのシンボルで有名なオペラハウス

 かつて豪州は羊の背に乗る国と言われていたが、1960年代よりの資源開発ブームで大きく変ぼうを遂げた。景気低迷で苦しんでいる日本を尻目に、最近は住宅投資を中心とする底固い個人消費をベースに年率4%前後の経済成長を安定的に達成、100年来と言われた昨年の大干ばつの影響による穀物類の大減産で経済成長は一時的に鈍ったものの、本年はそれを克服し、2003〜04年は再び4%の成長が期待されている。

 日本にとって資源面での対豪依存度は非常に高く(鉄鉱石55%、石炭59%、アルミ49%、鉛・亜鉛の依存度も第1位)、一方、豪州からみると輸出における対日依存度は資源分野では40〜50%、食糧分野においてもオージービーフで知られている肉牛輸出の対日依存度は35%、エビ41%など、資源のみならず食肉、水産物等においても対日依存度は高い。日本、豪州両国はまさに資源エネルギー、食糧等の面で重要なパートナーであると言える。

 また豪州人の日本に対する関心は高く、日本語学習でも、豪州における日本語学習者数は30万人以上にのぼり、人口比では世界第2位であることは意外に知られていない(第1位は韓国)。豪州人は約59人に1人の割合で日本語を学習しているという計算になる。シドニーにあるニューサウスウェールズ大学は約1,000人の学生を抱える豪州最大規模の日本語科を擁しており、シドニー在住の日本人ビジネスマンとの交流なども行っているが、その主任教授は日本人女性である。主任教授によると、日本語学習の動機として、以前は日本語を勉強して日本関係のビジネスで一旗上げようという動機が結構あったが、最近の学生は日本製アニメ、ジャパンポップスや日本のタレントに接したことが日本語学習のきっかけになっているとのことで、「日本好き」という、より純粋な動機に変わっているという。

シドニーのビジネス中心街
シドニーのビジネス中心街

3.変貌する豪州人の舌

 豪州は積極的に移民を受け入れている国であり、多民族、多文化が融合した国である。そのおかげで豪州には世界のほとんどの料理があり、安価で良質のワインと豊富で新鮮な素材を使い各国の料理店が競い合っている。その中で日本料理となると、かつては人気のない部類に入る料理であった。1980年代初めは、刺身を食べる豪州人はまれな存在であり(日本に旅行した経験を持ち、日本をよく知っている人たちに限定されていた)、大小とりまぜてもいわゆる日本料理店と言われるものはシドニーではおそらく40軒前後しかなかったと記憶している。

 ところがいまや、健康食ブームなのか、日本食は健康食というイメージが定着し、シドニーの街中にはTake Away(持ち帰り方式)からレストランまで日本料理店があちこちにあり、さらには回転寿司まで進出してきている。生魚を食べる習慣のなかった豪州人がいまや昼食にパック入りの寿司の詰め合わせを食べる時代になっている。これらの流れを反映してかシドニーには現在大小とりまぜ200軒にのぼる日本料理店の類があると言われ(もちろん素性の怪しいものも結構あるが)、地元の大型スーパーマーケットには日本食品も含めたアジアの食品コーナーができて、各種の米、豆腐、醤油、調味料などが日本食品専門店に行かなくても身近で簡単に購入できるようになった。移民の受け入れによる異文化の流入、それとの融合の中で、豪州人の舌は確実に変わりつつあり、豪州人の食生活は肉中心の伝統的な食事から今や各国の味を楽しむ食事に変ぼうしつつある。日本式のラーメン店でラーメンをすする豪州人や寿司カウンターでにぎりずしを食べている豪州人を見ると20年間の歴史の流れを痛感させられる。

 こういう中で、シドニーの地元有力紙による在シドニーレストラン評価で、創作日本料理の日本料理店オーナーシェフがThree Hats(三ツ星に相当)の最高級の評価を得たり、日本人経営のイタリアンレストランの日本人シェフが同様にOne Hatの評価を受け、日本料理以外の分野での日本人シェフの受賞という貴重な実績を残したり、と日本人シェフも活躍している。そう言えば漫画“美味しんぼ”の原作者は当地の食材の質の良さに惚れて15年来シドニーに住み、漫画の原作に豪州食材や在豪の人気のある日本料理のシェフを取り上げている由。こんなところにも日豪関係の広がりが垣間見られる。


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