世界で一番美しい街、パースから
小峯 健一( こみね   けんいち)
岩谷産業株式会社
パース駐在員事務所所長
MAP

 真っ青な空。インド洋に沿って延びる美しい海岸線。ユーカリの豊かな緑。陽光を受けて輝くスワン川。どことなくゆったりとした街の雰囲気。
  西豪州の州都パースは、旅行ガイドブックなどでは、スワン川越しに望む高層ビル群の写真とともに、「世界一美しい街」「世界一住みよい街」といった言葉が添えられて紹介されていることが多い都市です。写真をご覧になったことがある方も多いと思いますが、まさにこの写真のように美しいところです。

キングスパーク展望台からシティーを望む
キングスパーク展望台からシティーを望む

  この原稿を書いている時期は、日本では学校が夏休みに入ったばかりで夏真っ盛りですが、こちらは逆に冬の真っただ中で、雨の多い季節でもあります。折り畳み傘のような小さな傘では全く役に立たないような激しい雨が上がった後の澄んだ空気の中に浮かび上がる高層ビル群の美しさはまた格別です。ただ困るのは、降雨が週末に重なることがしばしばあるということ。「2日間雨が降ったあとに来るものは?」「月曜日!」というジョークを同僚に教えてもらいましたが、さもありなんという感じです。
  余談はさておき、さっそく西豪州を紹介させていただきたいと思います。

1.西豪州の地誌

ベルタワー ロンドンの教会から贈られた12のベルを持つパースのシンボル的タワー
ベルタワー
ロンドンの教会から贈られた12のベルを持つパースのシンボル的タワー

 最初に西豪州の地誌に触れさせていただきます。西豪州の人口は、豪州全体の人口が2,016万人であるのに対し、その1割に満たない198万人強(いずれも豪州連邦統計局発表)。このうち70%以上は、パースとその周辺に住んでいると言われています。西豪州人口の約30%は移民で、移民の占める比率が高いのも一つの特徴です。ちなみに、在留邦人数は約3,800人です。

  面積は、豪州全体(769万km2)の約33%を占め、日本の約7倍にあたる約253万km2です。冒頭に紹介しましたように、旅行ガイドブックでは「世界一美しい街」と形容されることの多いパースですが、ここはまた、「世界一孤立した都市」であるとも言えます。7つの州都がある中で、最も近い南豪州の州都アデレードまで2,000km。シドニーよりもシンガポールの方が近く、香港、マレーシア、シンガポール、フィリピンなどのアジア諸国と同じタイムゾーンに属しているのです(ちなみに日本との時差はマイナス1時間)。

  西豪州は天然資源が非常に豊富で、その生産および輸出が同州の経済を支えていると言っても過言ではありません。西豪州の州内総生産は、豪州国内総生産の約11%を占めるに至っています。小麦、羊毛等の農畜産物のほか、金、鉄、各種鉱石、石油、LNG、ニッケル、アルミナ等が主要な輸出品目で、その多くは日本にも輸出されています。日本向けは州総輸出額の21.4%を占め、2位中国の13.7%を引き離し、西豪州にとって最大の貿易相手国となっています。

キングスパーク戦争記念碑
キングスパーク戦争記念碑

  こうした状況を反映して、当地には、天然資源開発、エネルギー開発に携わる日本の企業も数多く進出しています。私も、当地赴任以来、日本人会の集まりの場ではもちろんのこと、現地の人との会話の中でも「資源開発関係の会社にお勤めですか?」とよく聞かれますが、これは、天然資源開発が同州の経済に深く根ざしていることのひとつの表れではないかと思います。ちなみに、当社は、パースに設立した全額出資の子会社を通じて、パースの南約200kmに位置する鉱区で、2002年から、ジルコンサンド、イルミナイト、ルコクシン等のミネラルサンドの採鉱を行っているほか、パースの南約40kmにある工場で、ミネラルサンドの電融加工、化学加工を行い、日本をはじめ、各国ユーザーに供給する事業を展開しています。

2.パース周辺の見所

繁殖期に徐行を求める交通標語 鳥はまだしも、カメが横切るまで待つのは大変かも…
繁殖期に徐行を求める交通標語
鳥はまだしも、カメが横切るまで待つのは大変かも…
  さて、西豪州の地誌、経済の話はこれくらいにしておいて、街の周辺を紹介させていただきます。最初に紹介するのはキングスパークです。高層ビルが立ち並ぶセントジョージ通りを抜け、車でほんの数分走れば、小高いエリザ山の山ろくに広がる総面積400haのキングスパークに到着します。250種類以上の植物と100種類以上の野生動物が保護されているこの公園は、観光の名所であることはもちろんのこと、市民の憩いの場ともなっていて、老若男女を問わず、たくさんの人が思い思いの時間をのんびりと過ごす場所でもあります。展望台からは、スワン川を眼下に、明るい陽射しに照らし出された高層ビル群や街並みを遠望することができ、自然と調和の取れた美しい眺望を楽しむことができます。

パース造幣局 金の取引所として現在も機能している
パース造幣局 金の取引所として現在も機能している
  街の中心部から歩いて行かれる見所をもうひとつ。パースミント(パース造幣局)です。1899年に英国王室造幣局の支局として操業を開始し、1990年にパース国際空港近くに新精錬所が建設されるまでの91年間にわたり、西豪州で産出されたほとんどの金はここで精錬されました。その量は2,596トンというから驚きです。現在も、貴金属の取引所として機能する一方、見学コースを併設しており、200オンスの純金の精錬工程デモンストレーションを間近に見ることができます。

  今度は、西へ30分ほど走ってみましょう。西豪州の主要貿易港のひとつフリーマントルに到着します。西豪州は、人口比では豪州全体の1割弱を占めるに過ぎないものの、貿易額では、豪州全体の26%(2003年/2004年 439億豪ドル)を占める全豪一の貿易州で、その貿易額の約半分は、フリーマントル港の扱いとなっています。また、同港は、日本の南極観測船「しらせ」が、食料、燃料補給のため立ち寄る港としても有名で、当地の日本人会では、「しらせ」の入港に合わせて、乗組員との親睦会を開催するのが恒例になっています。19世紀英国領時代の名残があちこちに残る街の中心部では、マーケットが開催されており、農産物、手作り小物、海産物などを扱う店が軒を連ね、週末には、多くの人出で賑わいます。

鳥はまだしも、カメが横切るまで待つのは大変かも…
繁殖期に徐行を求める交通標語
鳥はまだしも、カメが横切るまで待つのは大変かも…
  街中を散策したり、ちょっと車を走らせたりするだけでも十分異国情緒を楽しむことができますが、西豪州の魅力はこれだけにとどまりません。豪州には、世界最大のさんご礁として有名なグレート・バリア・リーフ(自然遺産)や、エアーズロックで知られるウルル・カタルジュ国立公園(複合遺産)など、現在4つの世界複合遺産、11の世界自然遺産と1つの世界文化遺産がありますが、このうち2つの世界自然遺産が西豪州に位置しています。また、世界遺産には指定されていませんが、パースを拠点とした観光コースに必ず含まれるものとして、砂漠の中の奇石群ピナクルズや、大きく立ち上がった波がそのまま時を止めたかのようなウェーブロックなどがあり、雄大でスケールの大きな自然の造形美が点在することも西豪州の魅力だと思います。

3.2006年は日豪交流年

在パース有吉日本国総領事(左から2人目)とともにキングスパークにて(筆者右端)
在パース有吉日本国総領事(左から2人目)とともにキングスパークにて
(筆者右端)

 さて、2006年は、「日豪友好協力基本条約」署名30周年、日本在外公館豪州開設110周年、豪日交流基金設立30周年にあたり、「日豪交流年」と定められています。経済交流のさらなる発展のみならず、文化、芸術、観光、教育など、幅広い分野での交流を促進し、日豪間の相互理解を含め、結びつきを強める1年として、政府間だけでなく、民間の活動によってその目的を達成すべく、さまざまな催しが各地で開催されることになっています。7月には、ギャロップ西豪州首相が「愛・地球博」を訪問され、西豪州と日本との貿易、観光、投資の促進を目的としたイベントにも参加されました。

  豊富な天然資源。豊かな自然。のどかな風景。穏やかな気候。芳醇なワインと食べ物。
  当地に赴任して間もない私が、西豪州の魅力をどれだけお伝えできたか心許ありませんが、赤道を挟んだ友好国として、今後さらにさまざまな分野での交流が発展することを願いつつ、次号の方にバトンタッチしたいと思います。

 

岩谷産業(株)のホームページへ