地球最後の楽園 パプアニューギニア
  重信 智一(しげのぶ  ともかず)
双日豪州会社
ポートモレスビー出張所所長代理
MAP
重信 智一 氏

1.はじめに

 「パプアニューギニア?テレビで見たことはあるけど、どこにあるのかは知らない」とよく言われます。パプアニューギニアは、日本から南へ5,000km、直行便で6時間30分、南半球にある世界で2番目に大きな島国です。大小700もの島々からなり、総面積が46.2万km2で日本の1.25倍、人口は513万人でパプア人やニューギニア人を中心に、高地族などの多くの部族で構成されています。この地には3万年前から人類が生活をしていたと言われており、言語の数も多く、実に750にも及ぶ言葉が存在し、各々の伝統文化を守りながら生活をしています。海辺の人々は海を糧に平和的で、のんびりと生活しており、南太平洋のイメージそのものですが、山岳地域に住む民族は、厳しい自然環境と土地(領地)への固執のため、闘争的な一面を持っています。

伝統舞踊のシンシン(西部州)
シンシンに参加する子ども
伝統舞踊のシンシン(西部州)   シンシンに参加する子ども
2.厳しい自然環境

米軍戦闘機 多くの戦闘機がジャングルに眠っている
米軍戦闘機
多くの戦闘機がジャングルに眠っている

日本軍が要塞を築いたラバウル
日本軍が要塞を築いたラバウル
気候は熱帯モンスーン気候で、日差しは強く、年間の降雨量は5,000〜9,000mmに上ります。草は刈ってもすぐに生えてくるので、放置されているところがほとんどです。集中豪雨による濁流で、橋は流され、道路は壊れてしまいます。大型開発をして常時メンテナンスでもしないかぎり、人間の手には負えないほどの自然の力です。
 パプアニューギニアは、発展途上国というよりは、開発・維持が困難な国と言えるでしょう。1920年代半ばに豪州人による金脈探検が行われるまでは、パプアニューギニアの高地に人が住んでいることすら知られていなかったぐらいです。第2次世界大戦では、日本軍と連合国軍との激戦場と化しましたが、日本軍にとっては大自然が最大の敵となり、多くの人がマラリア、飢えが原因で亡くなりました。今でも激戦の跡が生々しく残っており、日本人の戦没者慰霊団の方が来られます。一部地域の樹木には数多くの砲弾が打ち込まれているものもあり、原木を日本へ輸出した後で加工中に砲弾が出てくることがあります。

3.パプアニューギニア開拓時代

近年盛んなオイルパーム植林地
近年盛んなオイルパーム植林地
近年の資源価格高騰により、パプアニューギニアは注目されはじめました。大地から得る金、銅、石油、ガスの開発、天の恵みから得る森林の商業伐採、オイルパーム、カカオ、コプラ、コーヒーなどの開発が急ピッチで進んでいます。このため、ちょっとしたバブル感が出ており、首都のポートモレスビー市内で安全な住居を確保するのは困難な状態となっています。家賃も先進国・大都会クラスです。近隣諸国と比較して現地人給料が高いのですが、これは生活費が高くつくためです。そうかといって、悪い面ばかりではなく、就業率は高くなってきており、犯罪件数が減ってきています。

4.パプアニューギニア名物

 初めて来られた方が、うわさどおりの治安の悪さを感じ、必ず恐れおののくものが2つあります。
 1つは、至るところに着いている血痕(けっこん)です。特に道路、車のボディーに付着しているのを多く見かけるのですが、実はこれは血痕(けっこん)ではなく、ブアイと呼ばれる嗜好(しこう)品なのです。ブアイの実をマスタードの茎と石灰(珊瑚(さんご)を削って得られる)と一緒に口に含み、()むことで酔っ払ったような感覚になります。すると(つば)が真っ赤になり、その汁が町の至るところに吐かれているのです。パプアニューギニアでは、かなり多くの人がブアイを()んでおり、仕事中に()むことや、その吐き汁による景観の悪化が問題となっています。建物内部では、禁煙と並んで、ブアイ禁止という張り紙を多く見かけます。車のボディーに付着すると簡単には取れません。バスの窓から外に吐き出すのは勘弁してほしいと思います。
 もう1つは、多くの人が常備しているブッシュナイフと呼ばれる刃渡り50cmほどのナイフです。怖い、何て物騒な国なんだと思われるでしょうが、主な用途はココナッツや果物の皮き、草刈りです。腹が減ったら、草むらをかき分け、ココナッツ水を飲んだり、果物を食べたりするので、パプアニューギニアの大自然の恵みを得るにはブッシュナイフが必要なのです。もちろん、護身用にもなるのですが、ブアイを食べた酔っ払いがブッシュナイフを振り回す事件も多く、最悪の組み合わせになっています。

5.生活環境

首都ポートモレスビーの中心街
首都ポートモレスビーの中心街
特に多数の民族が集まる首都ポートモレスビーは、部族闘争や高い失業率のため治安が悪く、生活は窮屈感でいっぱいです。治安の悪さから、ここに住む外国人は外を歩きません。群をなして外国人居住区を形成します。警備員と犬、有刺鉄線付きフェンスに守られた外国人居住区から外国人居住区へ車で移動するだけです。有事の際の連絡手段として、携帯電話、トランシーバーを常備し、ガソリンは常に満タン。車に拳銃、鉄パイプを積んでいる外国人もいます。当然ながら、道路の状態も非常に悪く、デコボコだらけです。先日もタイヤがパンクしてしまいましたが、車外に出るのがとても危険だったため、無理やり、外国人居住区まで運転を続けました。私は、外国人居住区の外を歩くのは15mまでと決めています。走れば確実に逃げられる距離です。外を歩くのは年間で数えるほどの回数であり、車を駐車場に入れられなかった時だけです。万歩計で調べたことがありますが、1日500歩以内という日も多く、小麦色に焼けた肌と引き締まった体、というような南国生活者のイメージとは程遠い体になってしまいます。
 一方、地方はどうかと言うと、まさに楽園という言葉がぴったりの自然のパラダイスです。スキューバダイビング、サーフィン、釣り、ハイキングと、数多くの世界的プロをも(うな)らせる名所がそこかしこに見られます。

6.楽園

噴煙を上げるラバウルの火山
噴煙を上げるラバウルの火山
パプアニューギニアは、手付かずの自然があふれる島です。熱帯雨林のジャングルには、珍しい動植物が数多く生息しています。例えば、木登りカンガルー(クスクス)やワラビーなどの有袋類、さらに、ハリモグラやアリクイもいます。鳥類では、国鳥の極楽鳥をはじめ、オウギバトやダチョウの仲間であるエミューに至るまで700種以上、昆虫では、世界最大のアレキサンドラ・トリバネアゲハをはじめ5万種以上が生息しています。植物では、(らん)の種類が豊富で、その数は、高地性、低地性を合わせて3,000種以上にも及びます。また、陸上だけではなく水中も生物の宝庫です。豊かなサンゴ類に彩られた海には、さまざまな回遊魚が群れ、小型の貝類、ウミウシから魚類、イルカやクジラ、シャチそしてジュゴンといった哺乳類まで、多彩な生物を楽しむことができます。

7.最後に

笑顔がかわいいピキニニ達
笑顔がかわいいピキニニ達
(ピキニニとはピジン英語で子どもの意)
日本から一番近い南半球の国、地球最後の楽園パプアニューギニア、この存在をもっと認知してもらいたい。
 産業が発展すれば、国が富み、治安が良くなる。地球に残された南国の楽園パプアニューギニアの大自然に癒やしを求め、多くの観光客が大挙押し寄せる日々を思い浮かべ、今後もパプアニューギニアの発展に貢献できるよう努力していきたいと思います。

双日株式会社ホームページ