商社のビジネスモデル

商社の収益の源泉は、伝統的なモノの売買(トレード)に加えて、投資活動の割合が近年大きくなっており、トレードと事業投資を「車の両輪」とする事業ポートフォリオを形成しています。
トレードは、グローバルな情報網、物流網や資金力を活用し、顧客の代わりに、売り先・買い先を探し出し、つなぐことでコミッション(口銭)を得るのが 基本的なビジネスモデルとなります。
これに対し、商社が行う事業投資にはさまざまな狙いがあります。投資銀行やファンドのように初めから売却によるキャピタルゲインや配当収入に重点を置くのではなく、長期保有によって自ら事業を育成し、トレードの拡大や、自らが保有する他の事業とのシナジー効果を期待して行われます。また、単独で出資することもあれば、新しい分野でのノウハウ獲得を狙って、有力なパートナーを探し出し、共同出資することもあります。いずれの場合においても投資先の経営に深く関与し、比較的長期にわたる戦略的な投資を行うのが特徴です。
商社の収益構造は、従来型のトレードから発生するコミッションを中心とする形から、投資先である製造業・サービス業を通して得られる多様な収益機会を、子会社を含むグループ全体で捉える動きへとシフトしつつあります。

特徴1

トレードと事業投資が「車の両輪」

トレード 牛肉の生産者 牛肉の輸入 客先(加工業者、卸売り業者、 外食産業など) 商社の収益(コミッション)
事業投資 農場 肉牛の飼育・生産 (牧場経営) (事業投資) 生産プロセスに関与 飼料、飼育方法等の改善による高品質化 食肉加工場 ※客先ニーズに合わせて牛肉を加工 (事業投資) 加工プロセスに関与 品質・衛生管理、ブランド戦略等による高付加価値化 客先 (卸売り業者、外食産業など) 商社の収益 (コミッション+工賃、事業からの配当収入)
特徴2

商社の事業投資

特徴1
川上から川下まで幅広い領域のビジネスを手掛けている。
特徴2
資本力、経営力、オーガナイザー機能などいわゆる商社機能を基盤とする総合力を活かすことで、未知の事業領域にも進出している。
商社が今日持ち合わせているさまざまな機能は初めから備わっていたわけではなく、さまざまな専門分野のパートナーとの事業を通じて、習得してきたものであり、世界中のパートナーとの投資経験が、商社の総合力を高めてきたという側面がある。
特徴3
商社が事業投資から得るリターンは、配当や持分益が基本だが、それ以外にも原材料などのトレードに関わる販売コミッション、設備納入など売買に伴う利ザヤ、経営に対するアドバイス料などがある。
特徴4
単独の投資案件の採算だけでビジネスの成否を捉えるのではなく、同様の投資を別の会社と同じスキームで展開したり、さらにそれを別の国で展開することで、利益を上げる場合もある。
特徴5
短期的なキャピタルゲインを狙う投資銀行やファンドと異なり、長期保有で戦略性のある投資を行う。。
特徴3

商社のバリューチェーン戦略

「バリューチェーン」とは直訳すると、「価値の連鎖」。
商社は、原料の開発・調達から、製造・加工、流通、販売・サービスまで、いわゆる「川上から川下まで」携わっています。
幅広い領域でのビジネスの知識や情報をもとに、各々のビジネスの付加価値を高め、それらを連鎖させることで、トレーサビリティ、信頼性、安定供給の確保などのより高いリターンを目指す取り組みであり、今日の商社ビジネスを理解する上で重要な観点です。

例:牛肉のバリューチェーン
商社の活動領域 1飼料の開発・生産・調達 2牧場経営、肉牛の飼育・生産 3牛肉の加工 4スーパーなどの小売業 4レストランなどの外食産業
  1. 1肉牛の飼育に欠かせない飼料を開発・製造・調達するための飼料メーカーに投資を行い、調達した飼料を畜産農家に供給しています。
  2. 2肉牛の飼育・生産事業への投資を行い、自らが経営を手掛ける牧場にも飼料を供給しています。
  3. 3食肉加工事業に投資を行い、客先のニーズに合わせた加工処理、徹底した品質管理、ブランド化等により付加価値を高めています。
  4. 4川下のビジネスでは、スーパーなどの小売業やレストランなどの外食産業にも販売、自らこれらの事業にも従事しています。

このように川上から川下までの幅広い領域で、互いに関連するビジネスに入り込むことで、ビジネスプロセス全体を俯瞰し、必要なところに「金融」「情報」「物流」といった機能を提供することにより、顧客の利便性を高め、より付加価値の高いビジネスを目指しています。
商社がバリューチェーン全体に関わる意義はここにあり、エネルギー開発、食料、繊維など、さまざまな分野でバリューチェーンが構築されています。