商社が分かる

商社のダイバーシティ~Diversity & Inclusion~

~Voice~ 活躍する商社パーソン
「育児ができる今しかない時間を大切に
〜男性も育休を取得する選択肢を〜」

2022.04.15男性育休

石川いしかわ 龍平りゅうへい

住友商事株式会社
リスクマネジメント第五部 部長付
メディア・生活関連第三チーム

2013年住友商事入社。2016−18年ドバイ研修生。建設資材・不動産関連の投資や商取引におけるリスクマネジメント業務を担当。2021年4月〜現職。

男性の育児休職(以下、育休)の取得促進に注目が集まっています。2021年6月に改正育児・介護休業法が成立し、2022年4月から育休を取得しやすい雇用環境の整備や制度の周知の義務付けなどが企業に求められることになりました。しかし、男性による育休取得の事例は少なく、まだまだハードルが高いと感じる人も多いと思います。このような問題意識の下、より多くの人の背中を押すために、この冬に1ヵ月の育休を取得された商社パーソンに体験談を伺いました。

妻の負担を減らすため育休取得を決断

2013年に住友商事に入社してから一貫してリスクマネジメント業務に携わっています。2016年から2年間、トレーニーとしてドバイに駐在し、現在は建設資材や不動産関係の商取引、事業投資の評価や審査業務などを担当しています。

プライベートでは、2016年に結婚し2021年4月に第一子となる息子が生まれました。住友商事では、男女問わず子どもが満2歳になるまでいつでも育休を取得することができ(2022年3月時点)、私は年末年始を挟んだ2021年12月27日−2022年1月21日まで、土日を含め約1ヵ月の育休を取得しました。ちょうど息子が8ヵ月を迎える頃でした。

現在、住友商事には5千人を超える社員がいますが、2020年度に育休を取得した男性社員は34人でした(右図参照)。この数字は年々増えていますが、女性の育休取得率と比べるとまだまだ低いのが実情です。40人ほどが働く私の部署でも、育休を取得した男性は多くありませんでしたが、私は妻の負担を減らしたい、また自分自身も積極的に子育てをしたいという思いから、いつか子どもが生まれたら育休を取得したいと思っていました。業務の都合もあり、子どもが生まれてから実際の取得までには少し時間が空いてしまいましたが、理解ある上司をはじめ、人事部など周りのサポートがあって今回の育休を実現することができました。

想像以上の大変さを実感した育休期間

もともと家事や育児を主体的にしたいという気持ちはあったものの、恥ずかしながら育休前は十分に実行できていませんでした。実際に育休を取得して感じたことは、想像以上に育児が大変だということです。今まで妻に大部分を任せきりだったことを反省しました。育休中は業務から完全に離れて家事・育児に専念し、家族との時間を大切にしました。コロナの影響でもともと在宅勤務が中心だったため、育休前も息子と一緒にいる時間は比較的長かったと思いますが、育休中は子どもの成長を日々肌で感じることができたので、とても貴重な時間でした。抱っこのし過ぎで腰を痛めたり、寝かしつけてもすぐに起きてしまうので育休前より寝不足になったりしましたが、それらも含めとても良い経験だったと思っています。

育休を経て生まれた変化

1ヵ月の育休を取得して、仕事への向き合い方や気持ちの面でもいろいろな変化が生まれました。特に業務面では、今まで以上にメリハリを意識して仕事に取り組めるようになったと思います。復帰後も平日・休日問わず妻と分担して家事や育児をしているので、限られた時間の中でも仕事と家庭を両立できるよう、仕事のオン・オフをしっかり意識できるようになりました。妻は、以前に増して気遣いができるようになったと感じてくれているようです。育休中に大変さを実感し、妻へのリスペクトが増したからだと思いますが、疲れた顔をした妻に「息抜きしてきたら?」と言えるようになった時には、自分でも少し成長を感じることができました(笑)。

この4月からは妻が仕事に復帰し、息子は保育園に通う予定です。今まで以上に時間に制約がかかる毎日になると思いますので、今後もメリハリを大切に仕事と家庭への向き合い方を考えていきたいと思います。

周りの理解を得るために

休日は家族で過ごしたり、同年代の子どもがいる同期と集まったり、趣味に没頭したりと、自分にご褒美を与えてリフレッシュするようにしています。

育休を取得する上で最も重要なことは、いかに周りの理解を得るかということだと思います。一定期間育休を取得することで業務に穴をあけることを心配する人が多いと思いますが、時間に余裕を持って上司に相談することで、その心配はある程度軽減できると思います。私の場合は、定期的に実施している上司との1on1ミーティング等で今回の育休についても前もって相談していました。ありがたいことに、上司からも「育児は今しかできないからしっかりやってきてくれ」と背中を押してもらうことができました。

また、会社の制度も積極的に活用してほしいと思います。住友商事では2022年3月にダイバーシティウィークを設け、ダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けたさまざまな研修やイベントを実施しました。その一つに育休を取得した男性社員との座談会があり、これから育休を検討する人にはとても役立ったのではないかと思います。

このように会社の制度や私が実際に取得したことをきっかけに、この春から育休を取得しようとしている男性の部下や育休を検討する男性の同期も出てきました。仕事から一定期間離れることはハードルが高いと思う人もいるかもしれませんが、身近な人に続いて育休を取得する連鎖がどんどん起こると良いなと思います。

家族にとって唯一の存在であるために

以前の上司に言われた「会社にとって君の代わりはいるが、家族にとって君の代わりはいない。家族のことを大事に考えてほしい」という言葉を大切にしています。特に子どもを持った今は身に染みて感じています。個々の状況や価値観にもよりますが、今後ジェンダーを問わず育休の取得方法が広がる中で迷っている人がいたら、一度きりの人生、育児ができる期間は限られているので、貴重な時間を大切にしてほしいと思います。


インタビューを終えて

育児は周囲の理解・協力があってこそ成り立つものだと思います。インタビューでも、「周りに背中を押してもらえて今回の育休が実現した」とおっしゃっていた姿が印象的でした。
これからは、男性が育休を取得することで、出産・育児を理由とした女性の働きづらさや休みづらさを解消できているか、また女性が早く復帰できるようになることで女性活躍の促進につながるか、といったことにも注目していきたいと思います。
石川さん、貴重なお話をありがとうございました。

政策業務第三グループ 乙咩愛海