日本は中国、アメリカ、ドイツに次ぐ世界第4位の「貿易大国」です。貿易(輸出入)は、国内外の経済動向や産業の構造変化などによって、取り引きされる品目が変化します。
日本は資源がとぼしく、原油などの燃料資源や工業原料などの大部分を海外から輸入して、それを加工・製品化して輸出する加工貿易を得意として経済成長を遂(と)げてきましたが、日本の貿易構造はさまざまな変遷(へんせん)を経て今日にいたっています。
戦後は、原材料・素材加工型製品、軽工業・雑貨品の輸出が中心でしたが、その後、1960年代は鉄鋼(てっこう)、船舶(せんぱく)など重化学工業が発展し、重厚長大型(じゅうこうちょうだいがた)産業製品が輸出の主力となりました。70~80年代は、日本産業の競争力が大幅に高まり、電子・電気機器、輸送機器、精密機器など加工組立型製品の輸出が主力となりました。80年代の日本の高度成長期の時代には、貿易不均衡(ふきんこう)による貿易摩擦(まさつ)が継続的(けいぞくてき)に生じるようになったことなどから、日本メーカーの海外進出、海外現地生産が積極的に進められました。90年代に入ると、自動車やIT(Information Technologyの略:情報技術)などの高度な技術力や知識力を必要とする高付加価値のハイテク製品をめぐる競争時代となりました。21世紀に入ると、経済グローバル化時代を迎え、バイオ(バイオ・テクノロジーの略:生物工学)や太陽光発電などの新エネルギーなど新たな産業分野も生まれ、産業・ビジネスの環境はめまぐるしく変化しました。さらに中国など新興国(しんこうこく)の台頭(たいとう)や各国間での自由貿易協定(FTA)の締結(ていけつ)など、新たな競争時代を迎えています。そして今、新型コロナウイルスの感染拡大の影響などにより、日本の産業・貿易構造は転換期(てんかんき)に直面しています。
このような産業・貿易構造の変遷(へんせん)の中で、貿易で取り引きされる品目や貿易相手がどのように移り変わり、輸出入の貿易総額が100兆円を超えるまでにいたったのか、貿易の推移を見てみましょう。
2021年の日本の貿易総額(輸出額と輸入額の合計)は、約30年前(1990年)と比べると約2.2倍、約40年前(1980年)と比べると約2.7倍に成長しています。ただし、貿易は、国内外の経済動向などに影響を受け、大幅に伸びることもあれば、落ち込むこともあります。
【図1】日本の貿易額(輸出と輸入)の移り変わり(1980年-2021年)
出典:財務省
日本は、世界の中でつねに上位に位置する貿易大国であり、経済大国でもあります。これほどまでに豊かになった日本ですが、かつては第二次世界大戦により大きなダメージを受けました。その後、戦前から培(つちか)ってきた工業製品をつくる高い技術力を活かし、製品をつくるために必要な原料や資源を輸入し、世界に販売・輸出できる製品づくりに国民が力を合わせてがんばってきた結果、高度成長を成し遂(と)げ、今日があります。
2021年、日本の貿易総額(輸出額と輸入額の合計)は約168兆円。この金額は日本の国家予算(2021年度一般会計約106.6兆円)を大きく上回る金額です。前述の図1を見ても分かる通り、貿易額は、国内外のさまざまな経済動向や産業構造の変化などの影響を受けて増減を繰り返し、それぞれの局面(きょくめん)を乗り越えて、これほどの大きな規模に拡大するまでになりました。21世紀に入り、経済グローバル化時代を迎え、貿易環境はめまぐるしく変化し、そして今、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響で日本の産業・貿易構造は転換期(てんかんき)に直面しています。
たとえば、【図1】の貿易額が変化したポイントは!
現在、「ヒト、モノ、カネ、情報」などが国境を越えて地球規模で自由に行き交う時代になりました。このため、政治的・経済的・文化的な影響が地球のいたるところで同時に現れるという状況になっています。これが〝グローバリゼーション〟=「世界規模化」です。この流れにより貿易の内容も変化してきています。以前の日本の貿易といえば、モノの輸出入(財貿易)が主でしたが、グローバリゼーションの進展によって、サービス貿易(輸送、旅行、通信、建設、保険、金融、情報などの取引)や、海外の企業を買ったり(買収)、海外で会社を設立して工場を建てたりするなどの「直接投資」が増えてきています。
世界のGDP成長率推移
出典:IMF World Economic Outlook(2022年4月)
世界の貿易量伸び率と実質GDPの伸び率の比較
出典:WTO世界貿易見通し(2022年4月12日)
サービス貿易の貿易全体に占(し)める割合推移
備考:輸出額ベース
出典:WTO統計
直接投資の推移
出典:日本銀行