2017年9月20日に開催された会長定例記者会見要旨

定例記者会見

2017年9月20日

早いもので2017年も半ばを過ぎ、残すところ3カ月余りというところになった。内外とも経済の基調は比較的しっかりしているが、世の中全体が何となくすっきりしない、明るさが見えないと感じておられる方も多いと思う。

その原因としては、北朝鮮をはじめとする地政学リスクの問題、米国でのトランプ政権におけるいろいろな混乱、英国のEU離脱交渉難航、さらにはフランスのマクロン新大統領の支持率低迷など、世界各地における政治面での不透明感の高まりがあるような気がしている。日本においても、先週末に解散総選挙というニュースが飛び込んできた。

このように先行きを見通すことが大変難しい外部の環境下ではあるものの、経済界としては総選挙後にも政権が引き続き成長志向の経済運営を進めるとともに、地政学リスクにもうまく対応していただくことを願っている。

一方、貿易・投資の自由化、経済連携の推進については、地道な努力が継続されており、7月には日EU・EPAの大枠合意、またTPP11については日本がイニシアチブを取る形で、関係国は毎月会合を開催しており、粘り強く交渉を重ねている。TPP11が発効して、関税撤廃のみならず高いレベルの経済連携が実現すれば、RCEPの交渉にも大きな影響を与える。また保護主義に傾きがちな米国に対し、自由貿易体制の堅持・拡大を訴えるメッセージとしても大変重要であると考えている。

明日からは日本でTPP11の主席交渉官会合が行われるが、日本のリーダーシップにより交渉が順調に進み、11月のAPEC首脳会議での大筋合意が実現することを切に願っている。

最後に日本貿易会の活動について2点、ご報告をしたい。まず日本貿易会賞懸賞論文の募集結果について。今年の募集テーマは「自由貿易体制の今後のあり方~課題と処方箋~」として9月8日に締め切ったところ、国内外から266点という過去最多の応募があった。これから厳選に審査をし、12月に審査結果を発表する予定である。斬新な提言を皆様に公表できることを楽しみにしている。

2点目は10月26日に開催する「日本貿易会創立70周年記念シンポジウム」について。今回のシンポジウムでは「内なるグローバル化の推進」をテーマにした書籍を10月17日に発刊するのを記念して、第1部でその研究成果を披露する予定である。また第2部では双日と三菱商事の現役社員、商社アナリスト、経営学者を交え商社の未来像について議論をする予定である。詳細は皆さんのお手元の案内をご覧いただきたい。多数のご参加をお待ち申し上げている。私からは以上です。

質疑応答

(記者) メキシコで再び大規模な地震が発生した。各商社も進出しており経済活動が活発なメキシコでの度重なる地震について、どういった懸念をお持ちかお伺いしたい。また、来週にも衆議院解散の見通しとなっているが、大義がないのではないかという批判の声も聞かれる。この時期の解散についてどのようにお考えかお伺いしたい。

(会長) 我々としては当然、こういう自然災害に関してのできる限りの対応を事前に行っており、メキシコの地震については、全体としての我々のビジネスのバリューチェーンそのものに関しては、大きな支障がないと認識している。

ただ、自然災害は世界のどこで、いつ発生するか予想がつかず、非常な危機に遭遇することもあるため、引き続き万全を期していきたい。特に大事なのはやはり人命であるから、我々の派遣している駐在事務所の社員も含め、安心・安全には万全を尽くしていきたい。

また、国会の解散については、冒頭にも触れたが、経済そのものはそれほど悪くはないけれども、どうもすっきりしないという状況からすると、ここでいろいろなことをリセットして成長のスピードを上げ、あるいは成長の幅をどんどん広げていくということの意思統一が必要ではないかと思う。選挙を通じて、オリンピック、あるいはそれ以降の、成長に向けた具体的な施策が示され、議論を戦わせ、結果としてより強い政権が生まれる、そういうことを期待している。

(記者) リセットした方がよいのではないかというご言及があったが、今、解散をして信を問い、新たな政権として政権運営をした方がむしろ経済にとってはプラスではないかという見方なのか。

(会長) 日本経済そのものは決して悪い状況ではないが、何かもう一段、レベルアップできると良いという思いがある。選挙の結果として、ここでもう一段と経済を加速させていくという観点から、国民全体の意思統一が出来ればよいと思う。

(記者) プレミアムフライデーが導入されてから半年が経つが、その効果をどのように考えているかお伺いしたい。月末の実施ではなく、月初などに時期を変更してはどうかといった提案も聞かれる。その見直しが妥当であるのかどうか、そして見直すとすればいつごろの実施が適当なのかお伺いしたい。

(会長) 個々の業態によっても異なるため、一般論で言うのはなかなか難しい。企業としてプレミアムフライデーを実施しやすい、あるいは従業員も休みを取りやすいタイミングが最も良いのではないか。普及が進まないのはやはり何か理由があるということであると思う。「働き方改革」も踏まえると、こういうことは進めなくてはいけないということは確かであるが、実施時期が月末の多忙な時期でよいのかという点については、業界毎に、また、いろいろな立場によって考え方が異なるため、もう少し深掘りした議論をした方が良いのではないか。全体としては決して間違った流れではないと思うが、PDCAサイクルを回して検証した結果、具体的にどういうことが起きたのかということを確認した上で、新たなステージに入っていくようにしたらよいのではないかと思う。

(記者) この3年間の安倍政権についてどのような評価をされているのか、また、総選挙でどのような論戦を期待するかという点についてお伺いしたい。

(会長) 安倍政権が発足してから、経済の基調そのものはしっかりと回復しており、海外における日本のポジショニングも明らかに上がっている。従前のように「日本の首相の名前は何だったか」という質問が海外で出されることもないため、日本の存在感は向上してきたと思う。

ビジネス環境そのものに関しては、追い風が吹いていると思うし、これをより具現化して、それを経営の結果として世間に示していく、その結果として国の発展に貢献するというループに入っていると思う。

ただ、一方で、国内の地方では、経済回復の実感がなかなか伴わないということも確かであるので、どのように経済を加速させるべきであるかということも含めて、全体の政策をもう一度検証して、信を問い、再スタートをきることは非常に大事であると思う。

また、今回の論戦では、財政のプライマリーバランス、消費税の問題や、地政学的な問題、働き方改革も当然出てくるであろう。世の中全体が大きな転換点にあるのも事実であるから、もう一度、足元を見つめ直して、国民がこうした課題を考える非常に良い機会であると思う。

国をより良く、より強くするということが、我々としての最大の願いであり、そういう意味でこれからの論戦を見守りたいと思う。

(記者) 10月に、5年に一度の中国共産党大会が開催される。鉄鋼の過剰生産をはじめとする産業構造的な問題、国営企業の統廃合などの解決に向けた取り組みは先送りされているものの、現在のところ、比較的、経済状態は良好のようにも見える。共産党大会が閉幕した後の中国経済の見通しについてお伺いしたい。

また、国連において北朝鮮の経済制裁が追加されたが、北朝鮮に対する制裁の実効性について、どのようにご覧になっているかお伺いしたい。

(会長) 中国そのものの現在の経済状況については、基本的に堅調に推移していると理解をしている。地域別には東北部は多少苦労しているが、その他は極めて順調に推移している。全体の成長率としては、6.5%~7%の着地点に向けて推移しているという印象である。

今、中国経済で最もダイナミズムを感じるのは、「Eコマースの普及」である。それこそ多種多様な消費アイテムが大変な勢いで増えており、一方で労働者の所得も増加しており、当面、このような状況が続くのではないかという気がしている。5年、10年というスパンの間には、いろいろなことが起こるのかもしれないが、少なくとも、共産党大会終了後においても、それほど大きな懸念はないと今のところは感じている。

北朝鮮の制裁に関しては、お互いに適切に対応して、偶発的な衝突が発生しないことを願っている。北朝鮮を除く5カ国がしっかり協調して、国連決議を守っていく、あるいは北朝鮮に遵守させることが大事であると思う。

以上