2017年11月15日に開催された会長定例記者会見要旨

定例記者会見

2017年11月15日

皆さんおはようございます。本日は、まずTPP11の大筋合意実現を心から歓迎するとともに、実現に向けて粘り強く交渉された関係者のご尽力に敬意を表したい。

この場でも繰り返し申し上げてきたことであるが、TPPは21世紀型の包括的で高水準な協定で、今後のFTA、EPAのモデルになるものである。また自由、民主主義、法の支配、市場経済という共通の価値観、原則をベースとしたルールがアジア太平洋地域の幅広い国々の間で合意されたことは、世界で自国第一主義の風潮が強まる中で、自由で開かれた国際経済秩序実現に向けた非常に重要なステップとなる。先に合意した日EU・EPAと併せて、早期に発効にこぎ着けられるよう、関係者には引き続きご尽力をお願いしたい。

そのほか前回9月の記者会見以降、国内ではご案内の通り、衆議院選挙での与党大勝、第4次安倍内閣の成立、トランプ大統領来日。海外では中国共産党大会、ドイツやオーストラリアでの総選挙。国際会議ではAPEC首脳会議、RCEP首脳会合、東アジアサミットと非常に盛りだくさんであった。

当会の活動という点では、10月26日に創立70周年記念シンポジウムを開催したほか、『「内なるグローバル化」による新成長戦略と商社』という研究報告の書籍や、『日本貿易会70年の歩み』と題したパンフレットを発刊した。このパンフレットは皆さんのお手元に配布しているのでご一読いただきたいと思うが、これまで一貫して貿易振興の旗振り役として数多くの建議、要望をとりまとめ、その実現のために活動してきた当会の足どりを、創立70周年という節目に当たり冊子にしたものである。古くは1951年にJETROの前身となった海外市場調査会の設立に尽力し、1970年代には世界に先駆けて海外投資の倫理綱領「海外投資行動基準」を策定するなどのエピソードも紹介している。あらためてこうした70年の活動を振り返ってみて、貿易、投資の振興が一貫して当会活動の主軸であることを再認識したところである。今後もこの軸がぶれることのないよう活動にまい進したい、そんな思いを強くしたところである。私からは以上です。

質疑応答

(記者) 2点伺いたい。1点目はTPP11大筋合意について、これを評価するというコメントがあったが、巨大市場の米国が参加せず、また凍結項目も含まれ、当初想定していた姿から変わってしまったことへの評価もあると思う。これについて会長のご見解をお尋ねしたい。

2点目は、7-9月期GDPが発表となり、7期連続のプラス成長で、輸出にけん引されて好調であるが、他方、個人消費は伸び悩み、景気の実感に乏しいという評価もある。景気の実感を高めるために何が必要とされているか、また商社業界として、どのように貢献していくべきか、ご見解をお伺いしたい。

(会長) 米国を含むTPP12の方が良かったとは思うが、米国が離脱の意思を明確にした状況でTPP11などは無くてよいのかというと、それはまったく違うと思う。民主主義、自由経済の価値観を共有する国々と大きな連合体をつくっていくことで、今後の世界の新しい貿易協定締結に向けてイニシアチブを取ることができると思う。そういう意味では、1つのモデルケースができたということであり、米国も含め色々な国がこれに目を向け、参加への意向表明が出てくれば良いと思う。

加えて、できるだけ早く、参加11カ国に「このようなメリットが生じている」ということを実証していくのが、来年以降の課題ではないかと思う。また、日本がこのような国際的な取り決めのまとめ役の役割を果たしたことも大きい。EUとのEPA大枠合意も含め、EPAのパートナーシップのコアとして、日本が活躍していることは非常に評価できるのではないかと思う。こうした動きがさらに前進することを期待したい。

日本経済については、東京のような大都市にいると景気そのものは決して悪くないと多くの人が感じると思うが、地方に行くと、逆に景気が上向いていることが感じ取れないことも、認めざるを得ない。

日本全国で消費拡大を鍵として経済を発展させるには、観光振興や一次産業の6次産業化など、色々な課題にチャレンジしなくてはいけない。地方だけに任せるのではなくて、我々も含めて知恵を出し合いながら日本全体を盛り上げていくことが必要である。

そういう観点では、地方の若い世代の知恵を活用し、高校生、大学生、あるいは若い経済人と連携しながら、地方の人たちがもっと元気になることを行えば、おのずと景気の感触は全国に伝わっていくのではないかと思う。我々としてもそのような試みをしているが、ぜひ継続したい。

(記者) 中国では先の党大会でも環境規制強化の方針が打ち出されているが、この影響が今後、資源の上値を抑える要因になってくるのか、あるいは経済への影響をどのようにご覧になるか、その中で日本企業にビジネスチャンスはあるのか、お伺いしたい。

(会長) 中国が特に環境規制など、従前とは異なる分野に目を向けているのは確かである。それだけ環境が社会にとって大きな問題であることを、習近平主席以下、政府首脳陣が認識していることの表れであると思う。

そういう観点からすると、我々が協力できるところは多いのではないかと思う。日本経団連が、日中間での環境面の協力を進めており、枠組みの活用を含め、日本企業が貢献できることがあるはずだ。

中国の景気は、習近平政権が公約している6パーセント台のGDP成長率は維持されると思われ、中国の将来の不安感はない。

今回の日中首脳会談の結果を見ても、日中関係は緊密化していくと思われ、我々としてもそういう状況を踏まえ、できることは積極的に進めていきたいという思いである。

(記者) 通商関係の中でRCEPについてお伺いしたい。今回、合意は見送られ、引き続き協議ということになった。日本政府は質の高いものを求め、引き続き粘り強く交渉しているということであるが、一方で質ばかり追求せず、早目に合意して、そこからさらに質を高めるべきとの見方もある。日本政府の交渉スタンスに対して、会長はどのようにお感じかお伺いしたい。

(会長) 完璧ではないにしても、TPPである程度の水準までたどり着いて、1つのモデルケースを日本が主導して作ったわけであり、RCEPでも同様のものを要求していくのは基本的なスタンスであろうと思う。

TPPの水準をクリアしていかなければ、逆に何のためにTPPで合意したのか分からないということにもなる。TPPの合意水準であれば、少なくとも11カ国がこれに合意するわけであり、もちろんどこかのタイミングで政治的決着はありうるとしても、当面はこれをデファクト・スタンダードとして、この水準以下では受けいれられないというメッセージを示していくのが、適切ではないかと思う。

以上