2019年11月20日に開催された会長定例記者会見要旨

定例記者会見

2019年11月20日

皆さん、おはようございます。

最初に、台風19号、21号の大雨などによる災害で犠牲になられた方々に、哀悼の意を表すると共に、被災され、今も避難生活を送られている皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

さて本日は、会見前に、梶山経済産業大臣と商社トップの懇談会を開催しました。様々なテーマについて意見交換をさせて頂きましたが、当会からは全部で5点、要望させて頂きました。

1点目は、ルールベースの貿易・経済秩序を維持・発展させること。2点目は、投資協定の締結促進。3点目は、デジタル経済への課税の範囲を限定すること。4点目は、インフラシステムの輸出促進。5点目は、外為法改正が、市場の活性化を阻害するとの懸念をもたらすことのないようにという点です。この他、国際社会貢献センターABICの活動についてもご紹介し、大変有意義な意見交換になったと思います。

さて、世界貿易の問題では、米中協議で暫定合意に向けた交渉が長引いています。両国間の貿易摩擦の長期化の影響は、世界の貿易・投資、さらには経済全般に影を落とし、商社を含めた企業業績にも影響が広がりつつある状況であり、早期の暫定合意に期待します。

企業活動への影響という点では、日韓関係の正常化が遅れていることも懸念しています。企業活動には、政治的安定が不可欠であり、東アジアでは、良好な日韓関係の維持に加え、安全保障面で日米韓が一枚岩となって協力することも大変重要です。GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の失効が11月23日に迫っていますが、関係者が知恵を出して、良い解決策を見出すよう望みます。

一方で、日米貿易協定が昨日衆議院を通過し、批准に向けて大きく前進したことは、日本製自動車への追加関税の発動や数量規制発動のリスクが回避されるという意味で、大きな安心材料です。今後の交渉で、自動車、及び関連部品の自由化拡大も含め、より包括的で高度な合意が形成されていくことを期待します。

次に、日本貿易会の活動を2つ紹介させていただきます。

ひとつ目は、12月11日に開催する商社シンポジウムです。「モビリティ革命の進行と商社の役割」をテーマに開催します。モビリティ分野で起きている大きな変化については、改めてお話しするまでもないと思います。商社は、自動車産業のみならず、情報、金融、鉄鋼などモビリティ革命の関連分野、プレーヤーと深いかかわりを持っています。各分野で起きている変化をいち早くつかみ、異業種のプレーヤーや技術をつなぎ合わせ、新しいビジネスやサービスを生み出す力を、商社は持っています。今回のシンポジウムでは、まず各分野の専門家に、モビリティ革命と商社への期待についてお話しいただいた後、4商社の若手・中堅社員が、その期待に商社がどのように応えられるかを、パネルディスカッション形式で語り合います。皆さんの参加をお待ちしています。

ふたつ目は、12月2日に行う、「2020年度の貿易収支、経常収支見通し」の発表です。当会の貿易見通しは、マクロの見通しに加え、会員各社の営業部門や業界団体へのヒアリングを基に、商品別に数字を積み上げて作成するユニークなものです。米中貿易摩擦の先行きに不透明感がある一方で、ITサイクルの底入れなど明るい要因もあり、現在数字を固めているところです。公表を開始し、46年目になりますが、貿易記者会で作成者がレクチャーを行いますので、ぜひご参加ください。

私からは以上です。

質疑応答

(記者) GSOMIAが失効した場合の日本経済及び日米韓安保への影響は

(会長) 国や地域の安全保障や政治面の安定は、商社や企業がビジネスを行う上で大切な基盤であり、そこに懸念が発生すると、新規投資を中止したり様子見をしたりという影響が出る。GSOMIAの継続は、日米韓の安全保障体制にとって非常に重要であり、残された日数は限られているが、延長合意の道を探ってもらいたい。

(記者) 経済産業大臣との懇談会で要望した5点に対して、何か言及はあったのか。経済産業省側から商社業界への要望は、何かあったのか。

(会長) 本日の懇談会は、新任大臣をお迎えして、経済産業省と商社業界の間で、課題認識の確認を含め、相互理解を深めるという趣旨で開催された。私に続き、副会長や常任理事より発言いただき、大臣、副大臣からは包括的なコメントをいただいて終了した。

経済産業省から個別事項についての言及は無く、要望もなかった。

(記者) 安倍首相の在任期間が最長となった。政権の評価、今後力を入れてもらいたいことは何かをお聞きしたい。

(会長) グローバルにビジネス展開をしている商社にとっては、長期安定政権の下、政治も経済も安定が続き、世界と比較してもビジネスがやり易い環境が続いたことを評価している。今後の要望としては、第一にインフラ輸出への支援。第二に、デジタルトランスフォーメーションにより、かつてないスピードで変化する環境の中、日本企業が遅れをとらないよう、国内諸制度の整備を迅速にお願いしたい。

(記者) 香港では学生と警官隊の衝突がエスカレートしている。ビジネスへの影響も含めどう見ているかお聞きしたい。

(会長) 双方の暴力が激化してきていることを憂慮している。香港の都市機能が低下し、駐在員や出張者の行動が制約されてきている。事態が長期化すれば、更なるビジネスへの影響も懸念される。話し合いによる早期解決を望む。

(記者) RCEP(東アジア地域包括的経済連携)協定交渉からインドが離脱と報じられたことについての見解は。

(会長) TPP11も含め経済連携の枠組みを拡大していくことは、ビジネス拡大や新規ビジネス発掘の為にも、商社にとって非常に重要なことだと考える。インドは人口が巨大で市場としても存在感のある国なので、RCEPはぜひインドを含めた16カ国で実現できるよう期待しており、日本政府としても同様の方針で交渉に臨んでおられると理解している。

(記者) チリで開催予定だったAPEC(アジア太平洋経済協力)会議が中止となったことをどう見ているか。

(会長) APEC会議の中止は残念だったが、その機会を利用した首脳外交の機会が失われ、諸課題解決に向けた進展も見られず、非常に残念だ。

(記者) 外為法の改正につき、議論が煮詰まっていないのではとの意見もあるようだが、商社業界としては投資規制により活動に支障が出る可能性はないのか。

(会長) 一律に投資規制が行われるということではなく、政省令も含め、投資活動の阻害要因にならない形での運用が行われると理解している。政省令の詳細に注目していきたい。

(記者) 英国のEU離脱の行方は12月に行われる総選挙結果待ちだが、商社業界として合意なき離脱への備えは十分か。

(会長) 商社は大陸側にも拠点を持っており、大規模な体制変更が必要というところはあまりないのではないか。一番影響を受けるのは、英国と大陸間の貿易だが、取引量はそれほど大きくないと思う。しかも、離脱方式の結論を出すのに相当時間がかかっており、大多数は、既に必要な対策を講じていると思う。とはいえ、通関や物流に混乱が起きないか心配であり、総選挙の行方を注視している。

以上