2020年2月19日に開催された会長定例記者会見要旨

定例記者会見

2020年2月19日

皆さん、おはようございます。

本日は今年初めての記者会見です。国内外を振り返りますと、年明けから、経済や貿易・投資に関わる重要な出来事が、相次いで発生しています。

はじめに、足元では、新型コロナウィルスの感染拡大が世界的にも大きな問題になっています。亡くなられた方々及びご遺族にお悔みを申しあげるとともに、現在治療中の方々の一刻も早い回復をお祈りいたします。厚生労働省を中心に政府の皆様には、感染拡大をくい止めるべくご対応頂いておりますが、身近での感染も聞かれるようになっており、可能な限りの手段を使って、感染阻止をお願いしたいと思います。

感染者が、我が国を含め世界各地に広がったことで、人や物の移動が滞っており、経済活動に暗い影を落としています。日本国内ではインバウンド観光客が減少し運輸、宿泊などサービス業へ影響が出ており、アジア全体では製造業のサプライチェーンに影響が出始めています。現時点では終息時期を見通すことが出来ず、世界経済全体のリスクとなっています。早期に事態が収束に向かい、経済活動への影響が最小限に留まるよう願っています。

その他の貿易業界を取り巻く状況に目を移しますと、1月1日に日米貿易協定・デジタル協定が発効、15日には米中貿易協議の第1段階合意に署名されるなど前向きな話がある一方で、1月31日には遂に英国のEU離脱が実現しており、まだまだ予断を許さない不透明な時代が続くと予測します。

しかしながら、日本貿易会と致しましては、例えばRCEPのように、公正なルールに基づく自由貿易を推進していく活動を今後も支援し、より一層強化して参りたいと思います。

1月に開催されたダボス会議では、地球環境や格差など社会問題にも配慮する「資本主義の再定義」が大きなテーマとなりました。株主以外のステークホルダーにも広く配慮する企業運営が必要との認識が共有されたと聞いています。このような時代だからこそ、企業は、俯瞰的に世界を捉え、様々な社会的課題も視野に入れて活動しなければなりません。

日本貿易会の活動について申し上げますと、昨年12月11日に、モビリティをテーマに商社シンポジウムを開催しました。自動車に関連の深い、製造業、サービス業、情報通信など他業種の皆さまを中心に、過去最多のお申込みを頂戴し、ご好評を頂きました。登壇者の話をお聞きし、改めて強く感じたことは、新しいモビリティサービスの提供が、高齢化や気候変動など社会課題の解決に結びついていることです。特に商社の若手・中堅社員が、世の中の役に立ちたいという熱い思いを語っていたのが印象的でした。

最後になりますが、当会が2000年に設立した国際社会貢献センター(ABIC)が、この4月に創立20周年を迎えます。商社OB・OGを中心とした、年間のべ2,600名以上の人材が、事業承継や海外展開に悩む中小企業、地方活性化に取り組む自治体、さらには、日本に居住する外国人向けの日本語教育や生活支援などの現場で活躍しており、社会的課題の解決に大いに貢献していると自負しています。20周年を機に、ABICの活動をより多くの人に知っていただき、活躍の場を一層広げて行きたいと考えております。

私からは以上です。

質疑応答

(記者) 新型肺炎による貿易への影響は。

(会長) 国内のインバウンド需要が減少しており、例えば、桜の行楽シーズンの京都でもホテルにまだ空きがある。貿易関連では、特にサプライチェーンが大きな影響を受け、長引けば経済全般に影響が広がる恐れがあると懸念している。商社では、外務省発表の渡航情報に沿って対応しており、中国湖北省の駐在員・家族は退避し、拠点も閉鎖中で、再開の見通しも立っていない。中国のその他地域でも、テレワークや電話会議などを駆使し、在宅勤務を併用しながら拠点運営しており、活動レベルが平常時に比べ低下している。同国内では製造に支障が出ている事に加え、物流網も影響を受け、物資を運べないケースもあり、日中貿易に影響が出ている。

(記者) 足下で具体的にどのような品目に影響が出ているか。

(会長) 電子部品、自動車部品、その他機械部品などが中心で、中国製部品を使用している日本企業も影響を受けている。

(記者) 新型肺炎問題が長引くことへの懸念を表明されたが、影響は当初の予想を超えているのか。

(会長) 感染力は強いが、致死率は低いと理解している。パニックになり買いだめなど過剰反応をすれば影響が拡大しかねない。(予断を持たず)状況を正確に把握し、冷静に行動することが大切である。

(記者) 中国からの輸入が困難な中で、他国から代替品を調達する動きは出ているか。

(会長) 直ぐに代替品を確保する事は難しい。先ずは備蓄で対応する事になるが、特に精密品は代替品の調達は難しいので、長引くと影響が出やすい。

(記者) 景気の見通しは、新型肺炎の感染拡大前と現在とではどのように変わったか。

(会長) 19年10-12月期の実質GDP成長率が年率▲6.3%と落ち込んだ。消費増税や自然災害の影響もあり、ある程度のマイナスは想定内であった。20年1-3月には米中貿易協議の第1段階合意の署名などもあり、回復すると予測していたが、感染拡大の影響で、回復が遅れるのではと懸念する。

(記者) 国内での感染拡大対策につき、商社業界ではどのような動きがあるか。

(会長) 日本貿易会の会員商社では、在宅やサテライトオフィス勤務を増やしたり、時差出勤により感染を防ぐ対応を取っている。直近では、一定規模以上のセミナーや会議への参加、開催は慎重に検討するなどの予防措置も始まり、発熱の症状が出た場合は、直ちに出勤を控えるよう徹底している。

(記者) 目に見えないリスクへの対応につき、ビジネスではどのように向き合っていくべきか。

(会長) 災い転じて(福となす)ではないが、ITを活用した働き方改革をさらに進める機会とも捉えられる。具体的には、時差通勤や在宅勤務、テレワークなどを推進していくという事である。

(記者) SARSの感染拡大時との違いはあるか。

(会長) SARSの時はパンデミックリスクということが言われ、オフィス内でひとり感染者が出ればオフィス全体を閉鎖し、代替場所を探さねばならないという危機感があった。今回は、在宅勤務、テレワークなど選択可能な対応策も増えている。

(記者) 中国向け以外のビジネスへの影響は。

(会長) 海外のパートナーから、出張者との会議をメールやテレビ会議で代替したい旨、提案される例が、複数国で出ている。正確な感染リスクに関する情報が十分に浸透していない国がまだまだあるのではないか。欧米におけるビジネスへの影響という点では、中国との経済関係が強い韓国、台湾、日本など東アジア地域ほど大きくないと感じている。

(記者) 企業のBCPは大震災などへの備えが中心ではないかと思うが、新型肺炎対応で見直す動きはあるか。

(会長) 従業員の健康状態を把握する事が重要であり、必要に応じ、関係機関に相談する事を励行すべき。それでも、目に見えないリスクへの対応は難しい。

(記者) 学生向けの就活イベントを中止するなどの影響が出始めているが、商社ではどうか。

(会長) 就職活動は学生及び企業にとって重要なものであり、全て中止することはできないが、大勢が集まるイベントについては、対応を考えていかなければならない。

以上