会長定例記者会見(2023年2月8日)要旨

定例記者会見

2023年2月8日

最初に、2月6日にトルコ南部で発生した大地震によりお亡くなりになられた方々に心からお悔やみ申し上げるとともに、被災された方々にお見舞い申し上げる。

まず、岸田総理のG7歴訪について。
岸田総理は、1月9日から13日にかけて、G7メンバー国のフランス、イタリア、イギリス、カナダ、アメリカを歴訪し、各国首脳と会談された。総理ご自身も述べられたように、「トップ同士の信頼関係を深め、今後につながる結果を残すことができたこと」は大いに意義があったと考える。

各国首脳との会談において、安全保障協力の強化や法の支配に基づく国際秩序を堅持していくことが確認された。自由で開かれた世界市場の実現に向けて、各国がさらに緊密に協調して取り組むことを期待する。

特に、バイデン大統領との日米首脳会談においては、日米同盟関係をさらに揺るぎないものとしていくこと、そして日米同盟がインド太平洋地域の平和と安定の礎であることが再確認され、経済面を含む安全保障分野やエネルギー分野において、両国の一層の連携を強めていく方向で合意されたことを歓迎する。

今年は、アジアで唯一のG7メンバーである日本が議長国を務め、5月に広島でサミットが開催される。G7の結束が試されるこの機会を捉え、国際社会の平和と繁栄を脅かす地政学リスクの高まり、エネルギーや食料の価格高騰に伴うインフレの広がりなど、世界が直面する危機の克服に向け、岸田総理のリーダーシップの発揮、各国首脳との緊密なる連携による一層の関係深化を期待する。

次に、ウクライナ情勢とその影響について。
ロシアのウクライナ侵攻から2月で丸1年になる。戦闘は多くの犠牲者を出しながら今もなお続いており、深く心が痛む思いである。戦争の一刻も早い終結を願うとともに、ウクライナの皆さまが平穏な生活を取り戻されることを心からお祈りする。

ウクライナ危機は、多くの国際商品の需給バランスを変化させ、世界的なインフレ傾向に拍車をかける形となった。現在、世界が直面する大きな課題の一つがインフレへの対応であり、もう一つがサプライチェーンの強靭化、再構築である。

インフレについては、特に米国、欧州の金融政策等によって若干ピークアウト感こそ出ているものの、供給制約が完全に解消されるには至っておらず、金融マーケットを含めて目が離せない状況である。

サプライチェーンについては、わが国にとっても経済安全保障を前提にしたサプライチェーンの強靭性向上と再構築がますます重要性を増している。わが国にとって必要不可欠な物資については、経済安全保障の観点から、自由で公正な貿易・投資体制の追求という理念とのバランスをどのように取って供給体制を構築していくのか、非常に大きな課題であると考えている。

最後に、中国ゼロコロナ政策転換について。
中国は2022年12月に「ゼロコロナ」政策を事実上撤回し、人の往来を本格的に再開させるなど「ウィズコロナ」への大転換を図った。これによって、消費者、企業センチメントも回復するなど、明るい兆しが見え始めた。新型コロナの感染状況については、いまだ予断を許す状況ではないが、感染をうまく制御することを通じて、中国経済が好循環に入っていくことを大いに期待している。

先月末には、中国政府が日本人の中国渡航のためのビザ発給を再開したとの明るい報もあった。再び日中間の人の往来が活発になり、両国の経済に良い影響を及ぼすことを期待する。

質疑応答

(記者)2023年の世界・日本経済の見通し、商社業界への影響は。

(会長)欧米のインフレはピークアウトしており、マーケットでは年後半にも利下げに転じるとの見方が広がっているようだが、特に米国は金融当局のインフレを抑え込む姿勢が明確なので、もう一段の利上げがあるのではないか。中国はゼロコロナ政策の転換により経済が回り始めていると感じており、エネルギーなど商品価格に上昇圧力が掛かるという側面はあるが、世界経済にとってはポジティブなことと捉えている。日本は大企業を中心に賃上げの機運が高まってきており、需要拡大の好循環につなげる成長戦略が大事になる。
世界経済の回復は、商社業界にとっても貿易・投資の両面でプラスに働くだろう。

(記者)日銀の金融政策への期待は

(会長)非常に難しいnarrow passだと思うが、マーケットとの対話を通じて、予見可能な形でかじ取りをしていただきたい。

(記者)2022年の国際収支が発表されたが、受け止めは。

(会長)経常収支の黒字幅が縮小したのは、エネルギー・食料価格の高騰や円安の影響で貿易収支の赤字幅が拡大したためと認識している。貿易赤字は構造的なものであり、こうした状況でも海外投資からのリターンなどを含め経常収支が黒字をキープしたことは、日本経済の実力を示すものとポジティブに受け止めている。エネルギー・食料価格は落ち着いてきており、経常収支の黒字幅は以前の水準に戻っていくのではないか。

(記者)ウクライナ危機をどう受け止めているか。

(会長)経済安全保障の観点から地政学・地経学的なリスクへの対応が重要であると認識している。自由貿易の理念の下、ブロック化ではなく、フレンドショアリング的な考え方によりサプライチェーンをバランスよく再構築していく重要性がますます強まるだろう。

(記者)サハリンプロジェクトの権益維持をどう受け止めているか。

(会長)G7のコンセンサスの中で国益を守ることが重要であり、エネルギー安全保障の観点から権益維持は正しい判断と考える。

(記者)米中関係の見方についてどうみているか。

(会長)米軍による中国気球撃墜など予期せぬ話もあったが、両国とも本件をエスカレートさせ、決定的に事を構えることはしないのではないか。米中間の貿易・投資は相当伸びており、経済面のデカップリングは現実的でないと思う。

(記者)インドの経済をどうみているか。

(会長)外交的には、欧米諸国や中国と上手く距離を取っており、上手にポジショニングをしているとの印象を持っている。経済的には、州によって制度や考え方が異なり、ビジネス環境としては難しいところがある。その点はインド政府も意識しているし、いずれ中国を抜いて世界一の人口となることを考えると、インドのポテンシャルは相当大きいと言える。

以上