会長定例記者会見(2023年5月17日)要旨

定例記者会見

2023年5月17日

まず、「G7広島サミット」について。
5月19日から21日に、アジアで唯一のG7メンバーであるわが国が議長国を務めるG7サミットが広島で開催される。

ロシア・ウクライナ問題、国連安保理の機能不全、世界的な食料・エネルギーの供給停滞など、比較的安定していた「ポスト冷戦」時代は終焉を迎えている。地政学リスクの高まりや、生態系の破壊、温暖化など広範多岐にわたる地球規模の重要課題の克服に向けて、国際的な連携・協調の重要性が非常に高まっている。残念ながらコンセンサス型の枠組みがなかなかワークしていない中、今回のG7は非常に重要な位置付けの会合であると思う。

特に、平和のシンボルである広島の地で、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有するG7諸国の首脳が一堂に会する機会を得られることは、非常に意義深いことである。

G7各国首脳および招待国・国際機関のトップが、自国中心主義や排外主義を排して、自由で開かれた国際経済秩序の再構築、持続可能な社会の実現に向けて、ぜひ具体的な成果を出していただきたい。

通商・外交における国際的な連携・協調に向けて、わが国が果たすべき役割はますます重要になっている。岸田首相には、アジアで開催するG7サミット会合であることを踏まえ、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた各国・機関との一層の連携をリードしていただくとともに、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国を含めた国際社会全体で重要課題の解決に取り組むという、日本の強い決意を示していただきたい。

当会としても、会員企業一丸となって、政府省庁・関係機関、他業界・他団体と連携し、その取り組みを後押ししていきたい。

次に、「気候変動問題」について。
気候変動問題は、一部の国や地域だけではなく、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国を含めた国際社会全体で、官民一体となって取り組まなければならない。

2050年のカーボンニュートラル実現は共通の必達目標であるが、この目標をどのように達成していくかの道筋は、国や地域の事情に応じて多様であるべきであり、その多様性が認められるべきであると考える。4月15日、16日に札幌で開催されたG7気候・エネルギー・環境相会合において、そうした認識が共有されたことは、一つの前進であったと思う。

今後、カーボンクレジット、カーボンプライシングなどを含めた国際ルール作りにおいて、日本としてイニシアティブを取っていただきたい。またカーボンニュートラルの実現には、莫大な資金が必要となってくるので、トランジションファイナンスの枠組みもしっかり作っていただく必要があると考える。政府には一層の官民連携を図り、日本企業の大胆な投資やイノベーションを促す具体的政策を打ち出していただきたい。

商社業界にとっても気候変動問題は最優先の重要課題であり、政府・関係機関と連携し、国情や国益を踏まえた上で、事業活動を通じた解決に取り組んでいきたい。

最後に、「自由貿易・投資体制の強化」について。
先般、わが国にとってグローバルな戦略的パートナーであるとともに、重要な貿易・投資相手国である英国のCPTTP加入交渉が妥結した。今般、ブルネイがCPTTP発効のための国内手続きを完了し、7月に参加11カ国全てで発効することとなったことと合わせ、心から歓迎する。

世界経済の分断が非常に大きな問題となっている中で、ハイレベルの貿易・投資ルールが環太平洋を越え欧州まで広がることは大きな意義を有しており、自由で開かれた地域経済連携が一層強化されることを期待する。政府には、米国へのTPP復帰を引き続き粘り強く働きかけていただきたい。

一方、近年、経済的な措置を使って相手国に政策変更を迫る経済的威圧が問題となっている。4月4日に開催されたG7貿易大臣会合において、この経済的威圧に「深刻な懸念」が表明され、対抗および被害の緩和のためにG7として共同で検討することが声明に明記されたことを評価する。

経済的威圧は、経済安全保障および自由で公正なルールに基づく国際秩序を損なう恐れがある。G7広島サミットでも議論されることになると思うが、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国を含め、G7以外の国々との連携も必要な重要課題であり、岸田首相のイニシアティブを大いに期待する。

質疑応答

(記者)商社は好業績の一方でPBRが低いとの指摘があるが、どう考えるか。

(会長)好決算の内容を見ると、従来のオールドインダストリーに対応したビジネスモデルの好調が根幹にある。各社とも次の時代を見据えた投資、成長に向けた取り組みを行っており、その成果がいつ、どういう形で出てくるかを期待も込めて注目している。
PBRだけでなく、PERも含めて商社のバリュエーションが必ずしも高くない理由として、一つにはコングロマリットディスカウントが効いていることがあると思う。マーケットが各社の成長戦略をどのように受け止めているかの表れと認識している。

(記者)来日したウォーレン・バフェット氏が商社に期待を示したことへの受け止めは。

(会長)私もお会いしたが、商社について非常に深く正確に理解しておられるとの印象を受けた。長期的な観点から商社に投資していただき、非常にありがたいことと受け止めている。一緒にできる分野での協業についてもお話があり、印象的だった。

(記者)米国の債務上限問題への受け止めは。

(会長)米国の政府・議会が米国債のデフォルトを容認できるかという点に尽きると思う。私は比較的楽観的に捉えている。

(記者)Chat GPTなど生成AIの雇用などへの影響について、どう考えるか。

(会長)技術革新が雇用に与える影響は必ずしもプラスとは限らないが、基本的には、技術革新を止めるという選択肢はないと思う。ただし、個人情報の取り扱いなどさまざまな課題があるので、国際的な枠組みやルール形成が重要と考える。また、こうした技術を使用する側の人間のクオリティも非常に重要と考える。

(記者)トルコ大統領選挙の状況をどう受け止めているか。

(会長)対ロシアにせよ、対中東にせよ、国際情勢におけるトルコの立ち位置は非常に重要であり、決選投票が民主的プロセスにより混乱なく行われることを願っている。

(記者)日経平均株価の1年8か月ぶり3万円台回復、1-3月期GDPの3期ぶりプラス成長をどう受け止めるか。

(会長)海外経済の減速懸念はあるものの、日本経済はサービス消費など内需を中心に強めの回復基調で推移するのではないかと期待も込めて受け止めている。

(記者)内需回復は持続すると考えるか。

(会長)コロナ禍の反動により消費が伸びている可能性はあるが、足元での雇用増や賃上げ、物価上昇の状況から、内需回復は当面持続するのではないか。その意味でも、新総裁の下での日銀の金融政策を注目している。

(記者)G7サミットのグローバル・サウスを取り込む動きは、中国との溝を深めることにならないか。

(会長)サミットでのグローバル・サウス取り込みの有無に関係なく、G7にとって対中関係は最大の懸案であり、コンフリクトが大きくない環境分野などを含めて、総合的に対応していくことが非常に重要である。

以上