令和7年度与党税制改正大綱についての安永会長コメント

会長コメント

2024年12月25日

令和7年度与党税制改正大綱(以下、与党大綱)では、「少子高齢化、働き方やライフコースの多様化、経済活動のグローバル化・デジタル化といった経済社会の様々な構造変化に対応し、適正・公平な課税の実現を図る観点から、税制の見直しを行う」との方針が示された。「骨太方針2024」でも「デジタル社会にふさわしい税制を構築し、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を確保するため、EBPM(Evidence-Based Policy Making/証拠に基づく政策立案)の取組を着実に強化しながら、税体系の全般の見直しを推進する」としており、当会が目指している各国とのレベル・プレイング・フィールド(公平な競争環境)の実現につながるものと評価できる。

特に国際課税分野においては、「100年に一度」の包括的見直しとされる国際合意に基づき、世界共通の最低税率を15%とするグローバル・ミニマム課税(デジタル課税「第2の柱」)の導入が日本をはじめ、各国・地域で進んでいる。当該制度は我が国企業にとって、海外企業との公平な競争環境の整備につながることが期待される一方、我が国には外国子会社合算税制(CFC税制)という租税回避防止を目的とした複雑な制度があり、両制度の課税範囲が一部重複することから、我が国企業の過重な負担をさらに増大させ、租税回避的でない会社も課税されることも相まって、海外企業との競争力を著しく削いでしまう懸念がある。こうした状況から、当会では、令和7年度税制改正要望においてCFC税制の適正化、簡素化を強く求めた。CFC税制は、企業にとって申告手続きや準備作業の膨大な手間暇を要すること、また、税務当局にとっても調査やチェック作業が発生しており、これらのタイムパフォーマンスを官民ともに改善し、その時間を生産性の向上につなげることが重要との認識だ。与党大綱において、当会の要望の1つである合算時期の見直しが措置されることが明示されたことは評価しているが、業務負荷の平準化には寄与するものの、残念ながら作業量の軽減・簡素化とはならない。現在、経済産業省において、「日本企業の海外展開動向を踏まえた国際課税制度のあり方に関する研究会」がスタートし、当会も参加している。この研究会は、グローバル・ミニマム課税とCFC税制が併存する中で両税制の「あるべき姿」について産学官を交えて協議する場だ。与党大綱にも「引き続き令和8年度以降の税制改正において、今後発出されるガイダンスの内容等を踏まえた見直しを検討するとともに、『第2の柱』との関係を踏まえて適正な課税を確保する観点から既存の税制について必要な検討を行う(中略)令和8年度以降の税制改正においては、『第2の柱」の実施等に伴う環境の変化を踏まえつつ、国際的な経済活動により生じる課税上の問題に適正に対処する観点等から必要な検討を行う」と記載された。我が国企業が一層積極的に海外展開し、国際市場において競争力を発揮できる環境を整備し、海外の成長を我が国に取り込みやすい制度構築に向けた議論となることを期待している。

以上