新会長就任記者会見(2026年5月29日)要旨

会長記者会見

2026年5月29日

このたび、日本貿易会の第16代会長を拝命しました岡藤です。

日本貿易会は、2027年に設立80周年を迎えます。これまで偉大な足跡を残してこられた諸先輩方から重いバトンを引き継ぐことになり、その責任の大きさに改めて身の引き締まる思いです。私はこれまで現役として社業に専念してまいりました。業界団体のトップとしては未熟者で至らぬ点も多々あろうかと思います。皆さまのご意見を真摯に伺いながら、この重責を果たして参ります。

現在、商社を取り巻く環境は、地政学的リスクの高まり、サプライチェーンの分断、脱炭素への要請、デジタル技術の急速な進展など、かつてなく複雑で不確実なものとなっています。こうした時代にあって、商社業界に求められるのは、情勢を見定める嗅覚や困難でも前に進む実行力だと思います。世界の現場での経験やつながりを活かし、お客様のさまざまな課題を商機へと転換し、新たな価値を生み出す商社の役割は、今後ますます重要性になると感じています。

日本貿易会の使命は、会員各社がそうした世の中の期待に応えるための支援です。規制や税制など一企業では乗り越えられない課題について、実効性ある提言・要望を政府や世論に働きかけ、会員各社の事業環境を改善する重要な役割を担っています。

私は会長として、現場で得られた知見を政策提言に活かし、具体的な行動として実行していくことで、商社業界全体の社会的評価と存在感を一段と高めるよう、精一杯の力を尽くすつもりです。

今後とも変わらぬご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。

質疑応答

(記者)商社業界が抱えている課題は何か。かつてないスピードで事業環境が変化している中で、何に対応し、何を残していかなければならないか。

(会長)あまりにも変化が激しい状況。例えばトランプ大統領の関税措置やイランとの戦争は、誰も予測できなかった。企業だけでは何ともならず、政府の力を借りても何ともならない。長期的な大きな投資をするリスクをどう考えるかということは、非常に大きな課題。投資はしていかないと企業の成長も、国益を守るということもできない。しかし、一つ失敗すると、企業が飛んでしまうような大きなリスクを抱えている。このあたりが一番、商社にとって大きな課題ではないかと考えている。

(記者)商社業界の業績についての見方と、商社業界が世界から投資を引き付けている要因について伺いたい。

(会長)投資については、海外の資金が商社だけでなく日本全体に流れてきている。商社が見直されたきっかけは、やはりバフェット氏が投資を始めたことだが、元々商社はしっかり利益を出し、株主還元も大きい。商社はどんどん機能を進化させてきた。メーカーから見ても、商社が単に自社の販売代行だというのではなくて、パートナーとして様々な機能を持ってきたから、商社に価値を見出してくれている。収益は上がっている、配当も良い、学生の人気もあるということで、どんどん見直されてきたということ。本来、商社はもっと評価されてしかるべきだと考えている。

(記者)日本貿易会の印象、変えていきたいことは何か。また、以前から日本貿易会の会長になりたいと思っていたのか率直なところを伺いたい。

(会長)過去のものをいきなり変えてしまうというのは反対で、自分が良く分かった上で、徐々に時代に合ったように変えていくのが良いと考えている。例えば、キャッチフレーズについては、2年毎に変えるのでは、職員にそれが徹底されない。日本貿易会は長い歴史において時代に応じて徐々に変化してきたので、その流れは引き継いで、時代に合った形で多少は変えても、継続性というのが大事だと考えている。

(記者)中東情勢が緊迫化している中で、オイルショックの時と比べて、なぜ商社業界は好調な業績を維持できているのか。情勢が長期化すると状況は変わってくるのか。その中で商社業界として政府に求めることは何か。

(専務理事)オイルショックの時と比べて、日本経済の規模や構造が大きく変わっているということはあると思う。日本国内での付加価値の付け方が変わっているし、商社の機能として、当時トレードをしていたのが、現在は投資も含めて様々なことをしているという意味で、足腰が強くなっている面が商社業界にはあると言える。そういった中で官が持つ情報や、民が感じる現場の肌感覚を合わせれば、すぐに答えが出るものではないとはいえ、仮にホルムズ危機が収まったとしても経済安全保障を巡る環境が続いていく中では官民の緊密な連携・連絡が引き続き重要であるし、日本貿易会という個社を超えて業界で共有していくことは一つ役割としてあると思っている。

(会長)今回のイランの問題を通して感じたのは、脱化石燃料はなかなか容易ではないということ。単なる燃料としての石油だけでなく、石油から作られるものが非常に多い。つまりゴミ袋など様々な製品が石油を原料としている。こういうものを一気に他で代替するのは難しく、どれだけのものが石油からできているかを考えると、化石燃料をすぐ止めるというのはあまりにも短絡的。また、米国とイランとの関係については、商社だけでどうにかなるものではないので、本当に良く考えなければならないし、日本のエネルギー政策は、経済界が言っているように原子力発電も入れたバランスをとっていかないと、きれい事だけでは何ともならない。

(記者)不確実性の高い時代において、対応力・強靭性を発揮している商社の特徴、時代の変化に合わせてさらに強化すべき点、重要な点は何か。

(会長)私がいつも思っているのは、選択と集中は総合商社に当てはまらないということ。メリハリはつけるけれど、幅広くバランスよくポートフォリオを組んでビジネスをして、その時々に応じて比重を変えていく。また、ビジネスが幅広いので情報もたくさん入ってくる。総合商社は間口を広くして、バランスをとってやっていくことが重要。これは取扱い商品だけではなく、国についてもバランスをとっているから、何とか生き延びている。したがって、様々な国と仲良くし、敵を作らないことが重要。

(記者)安永前会長が重視されていたグローバルサウスについて、岡藤会長はどのような考えで取り組んでいくか。

(会長)安永前会長がされてきたことをしっかり踏襲してやっていく。

(記者)二国間ビジネスについて、主に米国・中国との向き合い方についてどのように考えるか。

(会長)どのような国が相手でも簡単なところはない。日本国内でも、そう簡単にビジネスができるような時代ではない。どこでもまずは自分たちの利益を優先して、交渉の最初は一方的なことを言ってくるが、最後には折り合うもの。表面的に言っていることと、中に入ってみての実際とはかなり違いがあるので、それを商社としては開拓していくことが大事だし、我々の務めだと認識している。

(記者)脱化石燃料は容易ではないとの認識について、その中で商社が果たす役割にはどのようなものがあるか。先日の伊藤忠商事のIR説明会で総合商社は資源をやるべきだという発言もあったが、資源調達の多様化を図る上での商社の役割、明らかになった脱化石燃料の難しさについて伺いたい。

(会長)まず国益のことを考えて資源をやらなければならない。また、一企業、総合商社として、資源をやらないと大きな業績を上げることがなかなか難しい。資源は儲かる時は儲かるし、駄目な時は駄目というのはあるが、ある程度のバランスをとってやっていかなければならない。ただし、どんどん投資額が大きくなっており、良い所は掘り尽くされているため新しい案件の難易度は高くなっており、企業で負えるだけのリスクの許容範囲を超えてきている。したがって、国の様々な機関からのサポートは現在もあるが、もっと進めていかないと一企業だけではなかなか難しくなるのではないか。

(専務理事) まさにそのような意味で国の支援に向けた具体的な制度について、日本貿易会として提案していくことが、我々のミッションだと認識している。

(記者)脱化石燃料の現実解として、2030年の脱炭素目標、2050年のカーボンニュートラルといった考え方が転換点にあるという考えはあるか。

(会長)それはない。地球温暖化を考えた時に、脱炭素は人類が生き延びるために今のうちから取り組まないといけない。一方で、データセンターなどが必要とする大量の電力をどうするかを考えなければならない。一気に風力や太陽光だけでは無理となると、やはりバランスをとって原子力発電などを入れていかないと、現実的には難しいのではないか。

(記者)事業環境が不透明で社業も忙しい中、あえてこのタイミングで会長を引き受けた理由を伺いたい。

(会長)総合商社として日本貿易会のメンバーに入っているわけで、自分の会社だけではなく、業界全体や、国全体のことを考えていかねばならず、引き受けさせていただいた。引き受けたからには、責任を持って取り組む。

(記者)中東情勢を踏まえて中東から離れた地域でも貿易環境の変化が起きており、供給先の多様化や安定供給に向けて力を発揮するのが非常に難解である中で、全世界で自国のエネルギーを確保していく動きは広がっていくのか、広がった場合に考えうる対応策はあるか。

(専務理事)国内供給が不安になると、その国から外に出すものについて、出せるだけ出して良いのかという議論は、どの国で起こってもおかしくはないし、そこをどう乗り越えていくのかが、まさに知恵の出しどころ。それは国と国との間、相手国企業と日本企業、あるいは商社が海外パートナーと議論する時でも同じ。自由貿易が正しいことだと信じられていた時代はもっとやりやすかったと思うが、それほど簡単ではなくなったからこそ、官と民とそれぞれ役割で知恵を出して、それらを組み合わせていくことが求められてくる。