グローバルサウスにおける商社の取り組み
日本の商社はグローバルサウスと持続可能な共生型ビジネスモデルの構築に取り組んでいます。具体的には、再生可能エネルギー、脱炭素技術、医療・衛生分野など、SDGsに直結する分野において、経済発展と持続可能性の両立を目指したプロジェクトを展開し、相手国の成長に資する形で貢献を続けています。
日本にとってグローバルサウスは、地政学的リスクの分散先であると同時に、共創を通じた新たな価値を生み出す重要なパートナーです。そして、商社の活動はその最前線に立ち、ビジネスと社会課題解決を両立させる取り組みを推進しています。
ここでは、商社によるグローバルサウスとの具体的取り組み事例を、「東南アジア」「インド・南アジア」「中央アジア・モンゴル」「中東」「アフリカ」「中南米」の6地域に分けてご紹介します。

東南アジアでの事業
東南アジアにおいて、日本の商社は成長市場での競争力を高めるため、食品、ヘルスケア、エネルギー等の各分野への取り組みを一層強化しています。
まず食品分野では、経済成長に伴う中間所得層の拡大や所得水準の向上を背景に、食生活の欧米化が進み、肉や乳製品の消費が拡大しています。これにより食品市場は急成長を遂げており、日本の商社は原材料の供給や製造流通体制の整備などを通じて、需要の取り組みを図っています。
また、食生活の変化とともに生活習慣病やがんの患者が増加しており、医療施設や専門人材の不足も相まって、クリニックや予防医療、さらにはスマートフォンを活用したデジタルヘルスケアサービスのニーズが急速に拡大しています。こうした中、医療機関や医療関連企業との連携を通じ、予防・ウェルネス分野の充実や医療アクセスの向上に取り組み、ヘルスケア体制の構築を進めています。
一方、経済発展に伴う電力需要の増加と気候変動への対応として、再生可能エネルギーやグリーンエネルギーの導入も急務となっています。日本の商社は、これらの社会的課題と経済的ニーズの双方に応える形で戦略的に事業を展開し、東南アジアの持続的成長に寄与しています。
インド・南アジアでの事業
日本の商社はインドやバングラデシュ等の南アジアでの活動を強化し、両国の地域特性に応じた戦略を展開しています。
インドでは、人口増加と中間層の拡大による内需拡大に加え、地政学的リスクへの対応かたサプライチェーンの分散先として注目されており、製造業を中心に積極的な投資が進んでいます。「Make in India」政策も追い風となり、商社は自動車の製造・販売から、アフターセールス、マルチブランドディーラー事業、リース事業にも注力しています。これは、生産台数で世界第4位、販売台数で世界第3位という有望市場であることが背景です。また、交通渋滞や大気汚染といった課題に対応する高速鉄道などのインフラ整備や、鉄鋼需要の拡大を支えるリサイクル事業、一定水準の医療を求める中間層向けの「日本式」総合病院なども、成長が期待されます。
一方、バングラデシュでは、経済特区での工業団地開発など、国家の経済発展と連動したプロジェクトが進行中です。加えて中間層の急成長により、バングラデシュの消費市場としての魅力も増大しています。
両国ともに持続可能な経済発展と雇用創出に寄与する中で、商社はデジタルインフラを活用した新規事業展開を進め、地域社会と経済への貢献を強めています。
中央アジア・モンゴルでの事業
中央アジア・モンゴルでは、エネルギー分野を中心に、インフラ、デジタル技術など多岐にわたる分野で、日本の商社は事業を展開しています。これらの活動の背景には、地政学的変化、各国の経済多角化の必要性、そして日本のエネルギー安全保障への寄与といった要因があります。
エネルギー分野では、ウズベキスタンでのガス関連プロジェクトへの投資やガス焚き発電プラントの建設などが進められ、地域の安定的な電力供給と経済成長に寄与しています。
インフラ分野では、中長期的な成長が見込まれるモンゴルにおける国際空港開港・運営に取り組んでいます。トルクメニスタンでは、タクシーおよびバスの大量輸出を通じて、慢性的な公共交通不足の解消に貢献しています。安全で信頼性の高い移動手段を提供することで、社会インフラの改善にもつながっています。
デジタル技術分野では、ウズベキスタンの国営通信事業者と連携し、基幹通信システムのデータセンターおよび通信インフラ整備を推進するプロジェクトが進行しています。先端技術の導入を通じた地域貢献が期待されます。
これらの活動を通じ、日本の商社は中央アジア諸国の持続可能な発展に貢献しています。
中東での事業
中東地域において日本の商社は、エネルギー分野を中心に多角的なビジネス展開を進めています。長年のLNG事業に加え、再生可能エネルギーや、グリーンアンモニア、水素といった脱炭素技術にも注力し、現地の国家戦略「サウジビジョン2030」や「オマーン・ビジョン2040」などと連動する形で、協力を深めています。これは、日本のエネルギー安全保障と、中東諸国のグリーン移行のニーズが一致した結果といえます。
また、商社はインフラ整備にも積極的に関与しています。UAE・ドバイ首長国で推進する大型廃棄物処理発電プロジェクトでは、同国初となる廃棄物処理・発電設備を導入し、環境負荷低減とエネルギー安定供給の両立に貢献しています。
加えて、ICT分野や消費者向けビジネスにも取り組み、スマートフォン関連サービス等の提供もしています。人口増加と若年層の多さ、そして一人当たり所得水準の高さといった市場特性に応じた、賞品・サービス開発も強化されています。
このように、日本の商社は中東各国との信頼関係を大切にしながら、持続可能な成長を支える取り組みを展開しています。
アフリカでの事業
日本の商社はアフリカ市場における事業を多角化し、持続可能なビジネスモデルへの転換を進めています。その背景には、急速な人口増加と経済成長、インフラ整備の必要性、そして再生可能エネルギーへの世界的な移行があります。
従来の資源開発中心のビジネスから、グリーンアンモニアや風力発電といった再生可能エネルギーへの投資が拡大しており、気候変動対策としてはカーボンクレジット事業にも注目されています。
また人口増加と経済成長に伴い、食料分野でもビジネスチャンスが広がっています。飼料効率が高く、宗教的制約も少なく、比較的安価に提供できることから、鶏肉ビジネスが活況を呈しており、所得向上やライフスタイルの変化により、即席麺の需要も拡大しています。生活習慣病などの非感染症が増える中、医薬品市場は高度医療ニーズの高まりとともに成長を続けています。
政府もアフリカ開発会議(TICAD)などを通じて企業の進出を後押ししており、日本とアフリカの経済関係は今後さらに進化することが期待されています。
中南米での事業
日本の商社は中南米地域において、資源・エネルギー分野、農業、環境事業など多岐にわたる分野で戦略的な取り組みを強化しています。特に、リチウムや鉄鉱石、銅などの重要鉱物資源や、大豆・とうもろこしといった食料資源の安定確保を目的に、鉱物資源の生産事業や農業関連事業への投資を積極的に進めています。また、バイオ農薬の使用を後押しする登録制度や大豆などの大規模畑作農家での使用拡大により、同市場は急成長しており、商社の関心も高まっています。環境対応にも配慮した、再生可能エネルギーを含む発電事業の開発・運営も注目されます。
中南米地域は、6.5億人超の人口と拡大する中間層を抱え、巨大な消費市場として今後一層の成長が見込まれます。また、中南米には約310万人の日系人が暮らしており、人的ネットワークを活かした地域連携の促進も期待されます。商社の多角的な事業展開は中南米の持続的発展に寄与するとともに、同地域に中国企業の進出が進む中、日本企業の国際的な存在感を高めることにもつながっています。