商社における「内なる国際化」
事業環境が急激に変化し複雑化する中、商社活動の発展はグローバルな人材活用の推進に支えられてきました。
かつての商社は日本から海外市場に製品を売り込む「貿易商」としての役割が中心であり、日本人社員を中心とした人材構成でも業務は十分に機能していました。しかし、1990年代以降、事業投資中心のビジネスモデルへの転換が進む中で、現地の政治・経済・文化への深い理解や、継続的なパートナーシップ構築が求められるようになりました。とりわけ、2000年代以降の新興国市場の台頭や、資源・インフラ・消費関連分野への進出の加速に伴い、現地の商習慣や文化に精通した人材が事業成功のカギを握るようになり、戦略策定や交渉、現地企業との共同経営に主体的に関与できる「ローカルかつグローバル」な人材の確保・育成が不可欠となりました。
現在、商社では世界各地に展開する現地での人材雇用をはじめ、日本国内における外国人研修生や留学生の採用など、国籍に関わらず多様なバックグラウンドを持つ人材がそれぞれの専門性を活かしながら活躍しています。それに伴い、人事制度の見直しや教育研修制度の整備が行われ、事業価値向上に向けたグローバル規模でのマネジメント人材の育成や登用が進んでいます。また、社会貢献の面からも独自の教育支援や奨学金制度を設けるなど、未来を担う優秀な人材確保に努めています。
グローバル人材活用における商社の実践事例
グローバルプレゼンスを支える海外人材活用
世界規模で経済社会が目まぐるしく変化している時代において、多様な文化や価値観の中でマルチなWin-win関係を築くことが求められます。総合商社の最大の強みである、世界中の国・地域で事業を展開する圧倒的な存在感は、さまざまなグローバル人材活用・育成の取り組みに支えられています。
海外現地法人における外国人社員の採用
世界が目まぐるしく変化し不確実性の高い昨今の経済情勢において、商社に求められる課題解決には現地ステークホルダーとの緊密なコミュニケーションが不可欠です。各拠点の外国人社員(ナショナルスタッフ)と本社の連携は年々重要視されています。
さらには幹部候補となる外国人社員に向けた研修制度を設ける商社も多く、世界各地の海外現地法人に在籍する外国人社員には、日本での語学研修や商社ビジネスへの理解を深めるプログラムを活用し、各社視点や現地法人の管理職としてキャリアアップを経験する方も少なくありません。
日本における外国人社員・研修生の採用
海外関連ビジネスが収益の多くを占める商社各社では、多様な人材の活用を目指し、日本国内でも国籍や学科を問わず外国人社員の採用を行っています。また日本における外国人技能実習生・研修生も業務支援・人手補填・国際協力の視点で長年受入れが進んでいます。しかし労働環境や人権保護の不備など課題も多く、人材育成を重視した受入れ体制の整備が求められています。
グローバルな人事制度
世界規模で適材適所の人材配置を目指して、海外現地採用の社員と日本人社員の人事情報やキャリア形成の仕組み、転勤のルールを統一するなどの取り組みが進められています。どのような職種・職歴・スキルを持った人材がどこにいるのかを把握しやすくすることで、地域を越えて専門領域に精通した人材を育成し、グローバル単位で活躍の機会を広げています。
グローバル規模でのマネジメント人材育成
現地採用、本社採用に関わらず、世界中で活躍する外国人社員の事例が増えており、今後、さらなるグローバル化を目指して、マネジメント職においてもより多くの外国籍社員の活躍が求められています。日本の商社特有の企業文化、商習慣を学ぶために本社への出向研修や次世代リーダー育成プログラムが用意されている会社も多く、グローバル規模での人材育成が進んでいます。
外国人社員の活躍を目指した教育研修制度
外国人社員が日本の企業で活躍するためには、言語だけでなく、日本独自のビジネスマナーや文化、職場のルールを理解することが重要です。教育研修制度は、その理解を助け、円滑なコミュニケーションと定着を促進するために役立ちます。また主に発展途上地域における政府の認定を受けたトレーニングセンターでの人材育成は、経済発展および優秀な人材の雇用に貢献しています。さまざまな制度を通じて外国人社員が能力を最大限に発揮し、多様性を強みに変える組織づくりが期待されています。
海外現地における教育支援、奨学金制度
グローバルサウス諸国などいまだ経済格差の大きい地域を中心に、商社はグローバルな拠点網を活かしてそれぞれの地域の事情に合わせた教育支援を行っています。奨学金や学用品の寄付、人材育成プログラムの提供等を通じて、産業の持続的成長を支えるための人材育成や、各社の事業推進を支える地域社会の発展に貢献しています。
