会長定例記者会見(2026年7月15日)要旨

定例記者会見

2026年7月15日

(専務理事より冒頭挨拶)
専務理事の河津です。冒頭に、日本貿易会の役割・機能について簡単にご説明させていただきます。3つの機能と1つの個性という形でご説明いたします。

1つ目は、Government Relationsで、政府に対して意見や要望を伝える役割です。日頃から各省庁の皆さまと意見交換を行っており、こちらから伺うこともあれば、この場にお越しいただき、さまざまな委員会やゼミナールで発信いただいたり、クローズドな意見交換をさせていただいたりすることもあります。特に毎年9月には税制改正要望を提出しておりますが、そのように文書として、やや大がかりな形で要望書を提出することも行っています。こうした日頃からの役所との意見交換、あるいは国会議員の方々との対話を行っているのが、1つ目の機能です。

2つ目は、Member Relationsで、会員相互の情報交換です。基本的には、各社のコーポレート部門の皆さまがお集まりになる会合であり、例えば働き方改革をどのように進めているのかといったテーマについて、他業界の皆さまのお話を伺うことも含め、情報交換を行っています。

3つ目は、社会に対する発信、すなわちPublic Relationsです。特にホームページでは、小・中学生ぐらいを意識した「きっずサイト」が人気であり、この改修を現在進めているところです。

この3つはどの業界団体でも取り組まれているものと思いますが、もう1つ、日本貿易会ならではの特徴として社会貢献があります。ある意味で商社らしいところではないかと思います。商社はやはり人が命ですので、こうした人的資本に着目した社会貢献活動、特に国際的な活動に力を入れようということで、20年ほど前にNPO法人を設立し、OB・OGの方々にご登録いただき、その皆さまと社会貢献のニーズをつなげています。例えば、留学生の支援や、日本に来ている外国人の方に日本語を教える活動のほか、日本の中小企業の皆さまが海外と取引をしたいという場合に、助言やサポートを行う人材をご紹介することもあります。そうしたビジネスに関わる分野も含め、多様な形で人がサポートする仕組みを持っていることが、日本貿易会の特徴です。

そもそも商社がどのような歴史をたどって現在に至っているのか、また途上国でどのように活動しているのかといった内容を冊子にまとめた『商社ハンドブック』もご用意しておりますので、ご関心があればぜひご覧いただければと思います。さらに詳しい話をお聞きになりたいということがございましたら、いつでも遠慮なく広報を通じてお問い合わせください。

質疑応答

(記者)中東情勢に関する見解、商社としてどのように対処していくお考えか伺いたい。

(会長)ホルムズ海峡を通航していた日本の船は元々45隻ありましたが、残っているのは4隻だけだと聞いています。政府も状況を調査しているということですので、まずは日本の船が脱出できたのは大きなことです。また、当面はそこに入っていく日本の船もないわけですから、今のところは安心して良いのではないかと思います。これからしばらくは紅海ルートも危ないので通航は回避されるのでしょうが、喜望峰経由になると運賃も時間も非常にかかるわけです。一般的に、紅海経由では1か月ですが、喜望峰経由だと1か月半かかる。その結果、コストは3割以上増加するということになります。ホルムズ海峡を巡る問題は、今後も続いていくわけですから、政府には引き続き真剣に考えていただき、我々もその指示に従って、リスクを最小化していく必要があります。
一方で、価格上昇の影響はこれから出てくるわけで、価格転嫁ができる業界と、そうでない業界があります。例えば、航空・海運業界は、サーチャージの形で速やかに転嫁しています。化学品や石油業界も、理由が明確であれば転嫁ができます。一方で、トラック輸送業者、飲食や宿泊など、下請けや消費者向けの業界では遅れがちで、なかなか転嫁できません。電力やガス料金は、ルールに基づいて原油価格の上昇をスライドさせる仕組みですが、3-4か月は必要です。このあたりは影響が大きいのではないかと思います。エネルギー調達への影響については、量的には、米国からの調達で中東からの落ち込みをカバーしています。また、ガソリン価格については、補正予算での補助継続によって170円以上にはならない。こうした状況は当面続くでしょうし、根本的な問題を解決していかなければ、ホルムズ海峡はしばらく使えないと思います。

(記者)ホルムズ海峡がしばらく使えないというご発言について、具体的な意図を確認したい。通航にあたっては、どのようなタイミングを待ちたいと考えるか。

(会長)米国とイランとの戦争が恒久的に終結しないと、根本的な解決にはなりません。両者のチキンレースとなっており、すぐには難しいとは思いますが、解決しなければなりません。解決したとしても、再び起こる可能性もあるため、日本としてはホルムズ海峡を通航する量を減らしていくことに今から取り組んでおかなければなりません。原油はエネルギー源だけでなく化学品などにも影響があり、その点も考える必要があります。日本には250日分ほどの非常に多い原油備蓄がありますが、ASEAN全体で考えるとほとんど備蓄がない国もあり、日本だけの問題ではないという中で政府も動いている状況です。我々としても長期的な視点で様々な手を打っていくことが重要です。一方で、いつまでもこうした状況が続くわけではないでしょうから、それまでは我慢していくということになるのではないでしょうか。

(記者)ホルムズ海峡の通航ができないことによる商社への影響とその代替策、政府に求める支援、消費者への影響について伺いたい。

(会長)現在、商社はホルムズ海峡経由の中東産だけでなく、米国や豪州など他地域産の原油も多く扱っています。日本が困っている時に、商社は代替先を見つける、あるいは従来の調達先から追加で持ってくるということで協力しているのが現状だと思います。ただ、化学品などの分野で値上げが進んだり、目詰まりが起きたりする可能性もありますが、すぐに他へ切り替えることは難しく、日本で製造していないものもあります。例えば、食品包装用の袋などはベトナムなど東南アジアで生産されているようですが、ベトナムに石油備蓄がほとんどないため、どのように供給していくかという点では、商社としてできることがあるのではないかと思います。政府には、こちらからお願いするというよりも、政府の方から協力を求められている状況ですから、率先して協力していくということだと思います。消費者への影響については、今回の件で値下がりしたものは少なく、大半が値上がりしているわけです。国の支援には限界があり、できる限りエネルギー消費を減らすことも考えなければなりませんが、消費者としてできることにも限界があるのではないかと思います。

(記者)「エネルギー需給構造強靱化のための総合パッケージ」について、どのような施策が盛り込まれるべきとお考えか。

(専務理事)政府内で様々な会議体も含めて検討が進められるものと理解しています。私どもの方にも、一緒に参加して欲しいというお声がけも頂いていますので、そうした中で議論を積み上げていくことになると思います。ホルムズ海峡に依存していることが、非常にリスクが高いという認識は、官民で共通していると思いますので、そこに依存しない供給を確保するために、一体何ができるのかということです。産油国を探すということもあるでしょうし、中東でもホルムズ海峡を通らない供給ルート、つまりパイプラインを確保していくということもあると思います。そうしたことも含めて考えるとなると、企業だけでファイナンスなどを担うのは難しい面もあるでしょうから、そうしたことが論点になってくるのだろうと理解しています。エネルギーということであれば、石油以外も含めたパッケージなので、何か一つが切り札になるということではありません。従来言われてきたことも含めて、今一度しっかり整理することが重要です。中東依存度についても、かつては7割を切る水準まで下がったことがありますから、その時に何が効果を上げていたのか、なぜその効果が失われたのかということも、もう一度検証したうえで、同じようなことが起こらないようにするにはどのような手段を組み合わせるべきかを考えていくということだと思います。何か新しいものが出てきて、それが切り札になるということではないと思っています。

(会長)商社として最も関心が高いのは、政権が掲げる17分野の成長投資です。やはり投資なくして成長なしということですから、我々商社としては積極的に海外へ投資していかなければなりません。今回のエネルギー問題でも、海外で新たなエネルギーを開発していこうとしているわけですが、投資額は大きくなります。そこで一番の問題は、やはり円安です。海外のファンドは日本にどんどん投資しています。円安なので、彼らから見れば割安だからです。逆に、我々が今の円で海外に投資しようとすると、非常に高くなっており、かつてと比べると5割ほど高くなっています。したがって、この円安の状況の中で、我々が積極的に海外に投資するには、しかも競争相手には海外企業もいるわけですから、この問題を解決しないと政府の旗振りを我々が実際の形にしていくことはなかなか難しいと思います。

(記者)円・ドルの適切な為替水準はどの程度とのお考えか。

(会長)適正な為替水準というのは、我々から見ると、例えば円安であれば、海外の企業から得られる利益は大きくなる一方で、投資をする時にはなかなか勝てないという矛盾があります。したがって、どの水準がよいのかは難しいところです。かなり努力して、今の160円でも対応できるようにはしていますが、これまで投資してきたものから得られる収益は大きくなる一方で、これから新たに投資することは非常に難しい状況にあります。その点はご理解いただきたいと思います。

(記者)メルコスールとのEPAに関する動きのほか、高市総理が訪印された。国際関係が不透明な中で、多国間の外交関係や通商関係はどうあるべきか。

(会長)様々な地域に進出しようとすると多くの障害がありますが、それでも取り組んでいかなければなりません。例えば、メルコスールについて言えば、経済規模はASEANの半分程度ですが、距離も遠く、貿易額は現在10分の1程度です。だからといって、そこを無視することはできません。これから取り組もうとすれば大変な状況でしょうし、難しい面もありますが、そこへ進出することで、長期的なエネルギー権益の確保につながりますし、食料についても同様です。ブラジルなども重要ですから、今から取り組んでいかなければなりません。インドにも様々な課題がありますが、中国の次という位置づけで、やはり取り組んでいく必要があります。政府に率先して動いていただき、その後に我々がついていく。その際に、我々がついていきやすいようなサポートをして頂ければ良いと思います。これは長期的には取り組んでいかなければならない課題であり、我々の出番でもあると思います。

(記者)円安の問題はどうすれば解決できるとお考えか。

(会長)誰にも分からないのではないでしょうか。おそらく日米の金利差が大きいわけですが、日本は金利を上げていこうとしている一方で、米国FRBもインフレを警戒して、金利を引き上げる方向の発言をしています。トランプ大統領は金利を上げることに強く反対しているという状況もあります。こうした中でどうすれば良いかというのは、難しい問題です。日本としては、これだけ円が安いことは、国力がそうした評価をされているということにもなりますので、何とかしなければならないと思います。年初には今年は円高に進むと言われていましたが、逆に160円を超えているわけです。ただ、上がるものは下がりますし、下がるものは上がりますから、じっと我慢するしかないと思います。したがって投資のタイミングが非常に難しいということです。これまで投資してきたものは、円に換算すると自動的に増えていますが、次のことを考えた時にこれだけ円安だと、海外勢が日本市場に投資しに来ている一方で、我々が海外に展開する際には競争しにくいのが問題です。