会長定例記者会見(2026年9月16日)要旨

定例記者会見

2026年9月16日

(専務理事より冒頭挨拶)
当会が毎年取りまとめている税制改正要望についてご説明します。税制は企業の投資判断を左右し、日本の成長にも深く関わります。とりわけ、資源・エネルギーの安定供給やサプライチェーン強靭化には、日本企業が海外で継続的に投資、事業展開できる環境整備が欠かせません。

今年度の要望は、企業活動の実態に即した制度、公平な課税、事務負担の合理化を重点に掲げています。例えば外国子会社合算税制では、米国でグループ全体として課税される事業でも、日本では会社ごとの申告が求められます。米国では会社数が数百から千社規模になる商慣行があるため、納税が生じない場合にも大きな事務負担が発生します。

要望では、海外企業との公平な競争条件を確保し、日本企業の資源・エネルギーや成長分野への投資を後押しすることを求めています。税制を「日本企業の投資力や競争力を支える環境」としてご理解いただきたいと思います。

質疑応答

(記者)バークシャー・ハサウェイのアベルCEOが来日し、商社5社と面談された。商社の評価について伺いたい。

(会長)バフェット前CEOは「経済的な堀(Economic Moat)」の有無を投資判断の基準としており、総合商社の場合は世界的なネットワークや情報力、巧みな資本配分が「堀」すなわち参入障壁となり、その競争力の高さを評価されていると理解しています。アベルCEOからは、長期保有し、買い増しも検討するとの話がありました。また、経営には細かく口を出さず、保有自体が商社株の市場評価にもつながっており、大変有難い投資家だと思っています。協業はコンフリクトもあり大規模案件には難しさがありますが、お互いにとって良い案件があれば積極的に取り組みたいと考えています。

(記者)アベルCEOとの会談で、商社が資源案件に取り組む意義や期待などについて話はあったか。

(会長)個別のことよりも全体のポートフォリオを考えており、少なくとも私が会談した際は資源についての話はまったくありませんでした。

(記者)中東情勢が落ち着かない中で、商社にとってのリスクや商機について中長期的な視点で伺いたい。

(会長)日本の石油輸入は従来UAE、サウジアラビアの順でしたが、この7月は米国が37%で最大となりました。中東情勢は少なくとも米国の中間選挙まで不透明さが続くでしょう。バブ・エル・マンデブ海峡封鎖で当面サウジからの供給は難しいものの、その減少量は世界全体では2%程度です。日本は米国からの輸入で代替し、石油備蓄も多いため、影響は想定ほど大きくないと見ています。
資源ビジネスについては、一時的に利益が増えていますが、これまで各社が何度も減損を出しながら、国益のために開発とリスク負担を続けてきました。政府のエネルギー政策に沿って事業を担ってきた点は評価いただきたいと思います。

(記者)日本企業が海外で大型の資源プロジェクトを行う際に、どのような政府サポートが必要だと考えるか。

(会長)資源開発や新エネルギーは、着手後の環境変化で採算が合わなくなれば、上場企業として株主の意見を受け撤退せざるを得ない場合もあります。特に産業のビタミンと言われるレアアースは需要が不確実で市場も小さく、なかなか商売になりにくいため、政府の後押しが欠かせません。国として必要な事業であっても民間だけで担うのは難しいプロジェクトについては、政府が一定のリスクを引き受けるなどの支援が必要です。

先ほど片山さつき財務大臣と意見交換しました。大臣からは、海外投資を進める上での障害について民間の声を積極的に聞きたいとの発言がありました。例えば、海外で適切に納税しているにも関わらず、再度日本のCFC税制(タックスヘイブン税制)の網にかかって日本で納税が必要となる過剰課税の問題があります。更に、グローバル・ミニマム課税とCFC税制という似て非なる制度が併存することで、情報収集や資料作成などに膨大な事務負担が発生しています。欧州各国でCFC税制廃止の議論も始まった中、日本企業のみが追加負担を要する税制は足枷となり、これを解決しなければ日本企業の積極的な海外進出は難しいと思います。日本貿易会では税制改正要望を取りまとめ、政府に働きかけてまいります。

明日(9/17)発表の内閣改造は、現時点では主要幹部が留任する見込みだと聞いています。政権の継続性と安定性の観点から、経済界として歓迎すべきことだと思います。
消費税の減税・廃止は各党全てが選挙で掲げた政策であり、早くしないと国民が一番犠牲になります。公約に掲げた以上は実行するのが政治の務め。各党が公約に出していたにも関わらず党利党略で決議を引き延ばすのはいかがなものかと思います。

(記者)円安が継続し、国内への投資に回帰する動きが出ている中で、商社業界が国内の消費ビジネスなどで果たすべき役割について伺いたい。

(会長)海外だけでなく国内にも目を向けるべきです。海外ファンドは思い切った企業再生により短期投資で利益を得ていますが、国民感情を考えると日本企業として同じことはできません。ただ、利益が海外に流出する点については対応を考える必要があります。

(記者)日本経済にとって適温な円相場、ドル円相場について伺いたい。

(会長)何事も極端はだめです。業界ごとの違いも踏まえてバランスを考える必要があります。円安は国民生活に直結しており、インフレや日本の財政悪化にもつながります。海外投資の利益が増えるから良いという単純な問題ではありません。日本全体を考えれば、もう少し円高方向に戻す必要があると感じています。

(記者)金利上昇について、商社業界としての受け止めについて伺いたい。

(会長)商社は大きな資金を使うため、金利上昇の影響を受けますが、むしろこれまでのゼロ金利が異常だったわけです。金利も為替も急変には対応しにくいものの、緩やかな上昇なら対応可能でしょう。投資時の金利負担も採算に織り込めばよく、日本はなお相対的に低金利で有利なため、マネージできると考えています。

(記者)渋谷西武が閉店となる中、堤清二氏のパルコ文化、ファッションが都市の消費を切り開く、文化の先導を担うといったスタイルについてどのように見てきたか。

(会長)ファッションは企業より個人の個性が原動力です。堤氏は優れた構想で一時代を築きました。今はデパートから直営店で展開する方向になっています。ニッチな世界を主流に押し上げるような個性ある創業者の登場を期待します。サラリーマンには難しいでしょう。