商社が分かる

商社のダイバーシティ~Diversity & Inclusion~

第5回ダイバーシティ推進セミナー
「世界は大きく変わる―これからのキャリアの作り方」

2017.3.29女性活躍推進

石倉 洋子

一橋大学名誉教授

専門は経営戦略、競争力、グローバル人材。上智大学卒業後、フリーランスの通訳を経てバージニア大学大学院経営学修士(MBA)日本女性初のハーバード大学大学院 経営学博士(DBA)修了。その後、マッキンゼー社でマネジャー、青山学院大学国際政治経済学部教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、慶應義塾大学大学院メディア・デザイン研究科教授を歴任。他にも、企業の社外取締役、世界経済フォーラムのGlobal Agenda Council Education & Skillのメンバー。
Yoko Ishikura 公式ウェブサイト

3月29日、一橋大学名誉教授で、双日㈱社外取締役の石倉洋子先生を講師にお招きし、第5回ダイバーシティ推進セミナーを開催しました。「世界は大きく変わる-これからのキャリアの作り方」というテーマで、これからの変化・変革の時代にキャリアを築いていく上で、とても重要なメッセージをたくさん頂きました。

ご講演要旨

  • AI等の新しいテクノロジーの進展や高齢化をはじめとする人口動態の変化等によって、今後世界は様変わりし、雇用のあり方も大きく変わる。
  • 日本においては、労働人口が急速に減少し、また経済・業界構造が大きく変化する中で、人材が質・量(必要なスキル)ともに不足している。
  • 日本は長時間労働でトップクラスであるが、生産性が極めて低い。日本はテクノロジーの活用が圧倒的に遅れている。それではホワイトカラーの生産性は上がらない。
  • 世界(日本含む)の人事担当者は、未来を考える上では、テクノロジーの変化よりも、働き方の変化・多様化が重要なファクターだと捉えている。正社員・フルタイム・終身雇用は時代遅れであり、「新しい働き方」や「柔軟な雇用」が鍵となる。そのため必要なスキルを常に学ぶ必要がある。社会制度も雇用のあり方に合わせて変えていく必要がある。
  • これからの社会で必要なスキルは、1.複雑な問題解決力2.ソーシャルスキル(多様な中での調整能力)3.システムスキル(How toではなく「なぜ」やるのかをよく考えることが重要)4.創造力・想像力、5.テクニカルスキルである。ひとつの箱(組織や価値観)に留まらず、多様な価値観に触れることが大切である。
  • 「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」(リンダ・グラットン、アンドリュースコット著)をお薦めする。世界は長寿化し、100年ライフを生きる時代になる。これまでの「教育→仕事→引退」という3ステージ後、まだ30年以上ある。本書では長寿化で増えた時間をどのように過ごすのかを問いかけている。経済的な問題に偏りがちだが、必ずしもそれだけはない。人生を決める3つの資産として、1.生産性資産(新しい知識・スキルや仲間・評判)、2.活力資産(健康・バランスや友人)、3.変身資産 (自己を知ること・多様な経験・ネットワーク)が大切であることが紹介されている。
  • 自分のキャリアや人生は、「自分」が決めるべきである。正しいキャリアなど無い。自分自身のストーリーをどう紡ぐか。会社任せにせず、年に一度くらいは自分のキャリアについて考えるべきである。
  • 常に「何を」「なぜ」を問いかけることが大切である。例えば、そもそもダイバーシティや女性活躍はなぜ必要か。「経済成長に必要なイノベーションが枯渇→イノベーションが必要→どうしたら生まれるか→多様な人がいて多様な意見があればイノベーションが生まれる→だからダイバーシティが必要だ」ということが解れば、How toに陥らずに済む。

当日は、ダイバーシティ推進タスクフォース委員会社12社より、これからキャリア形成を目指す女性総合職の方を中心に広く参加いただき(約80名)、質疑応答も活発に行われました。講演後半は、参加者がグループ毎に「プレミアム・フライデーに賛成派・反対派」に分かれてディスカッションを行いました。さらに、その後の交流会は、石倉先生にもご参加いただき、大変盛況でした。

参加者によるアンケートでは、自分のキャリア・人生を考えるきっかけになった旨のコメントが多数寄せられるなど、とても好評なセミナーとなりました。


  • 石倉先生を囲む参加者(交流会にて)