商社が分かる

商社のダイバーシティ~Diversity & Inclusion~

第8回ダイバーシティ推進セミナー
「グローバルエリートから見たダイバーシティ社会実現の重要性について」

2018.9.28女性活躍推進

村上 由美子

経済協力開発機構(OECD)東京センター所長

上智大学外国語学部卒、スタンフォード大学院修士課程(MA)、ハーバード大学院経営修士課程(MBA)修了。その後、約20 年にわたり主にニューヨークで投資銀行業務に就く。ゴールドマン・サックスおよびクレディ・スイスのマネージング・ディレクターを経て、2013年現職に就任。

9月28日、経済協力開発機構(OECD)東京センター所長の村上由美子氏を講師にお招きし、第8回ダイバーシティ推進セミナーを開催しました。
長い間、グローバルに活躍されてきたご経験や国際比較データに基づいた日本におけるダイバーシティ推進の重要性について、お話を伺いました。ダイバーシティ推進はイノベーションを生むために不可欠なものであり、そのために日本および個々人が意識すべきこと等について、貴重なアドバイスをいただきました。
当日は、ダイバーシティ推進コミッティ委員会社より、商社女性総合職等、約70人出席があり、会合終了後、講師に質問の列ができる等、大変好評なセミナーとなりました。

<ご講演のポイント>

① 無意識の偏見をなくそう

  • 国籍や性別による無意識の偏見が世の中には存在する。例として、ニューヨークフィルでは、採用オーディションの際に、姿が見えないようにブラインド・オーディションを実施し始めてから、女性や非白人の団員の割合が大きく増えた。つまり、それまでは、何らかの偏見や先入観が存在したということだろう。先入観をなるべく最小限にすることがダイバーシティには大切である。
  • ダイバーシティは企業収益や成果に大きな影響を与える。リスクの軽減が可能になり、イノベーションも生まれる。

② 現代のリーダーシップは、羊飼い

  • リーダーシップの在り方が変わってきている。かつてはジャンヌ・ダルクのようなリーダーシップが模範だったが、イノベーションが重要な現代は、羊飼い型リーダーシップが求められている。いろいろなアイデアを救い上げることがイノベーションにつながる。また、変化の激しい予想しにくい現代においては、一人のリーダーが方向を示すことはリスクが高い。

③ 客観的データから見る日本の状況とチャンス

「日本人はもっと自信と大志を持とう」
  • 日本人は、国際比較データから見ても世界トップの能力や技術力があるにもかかわらず、自己肯定力(自信)や大志が低い。成人女性の読解力と数的思考力は世界的にトップである。労働参加における男女間格差解消により日本の経済規模はかなり拡大する。
「イノベーション」
  • 日本の生産性と生活水準は、上位のOECD諸国をかなり下回っている。働き方が変わらなければ、生活水準は上がらない。そのためにはイノベーションが不可欠である。
  • 日本はイノベーションを生むための条件がそろっており、技術力も高いが、それぞれをつなげる力が弱いだけ。

④ ピンチはチャンス

  • 日本は、高齢化先進国だったり、女性活躍が遅れていたりするが、これらは見方を変えれば、成長のチャンスである。イノベーションのための材料はそろっている。

日本貿易会ダイバーシティ推進コミッティ座長
武村 良平氏
(丸紅㈱人事部グローバル・グループ人事課長兼ダイバーシティ・マネジメント課長)

OECDの統計データを用いて、日本の強み・課題をあぶりだすとともに、ダイバーシティとイノベーションの相関、テクノロジーや教育水準の国際比較を踏まえ、ダイバーシティ経営がなぜ必要かを具体的にご説明いただきました。ご自身の海外経験で感じた文化ギャップに関する疑問、国ごとの教育環境の違いやご自身の子育てに関するエピソードなど、身近な例を交えたご講演で、参加者にとって大変分かりやすい内容だったと思います。

ダイバーシティはイノベーションの基盤といわれますが、中でも女性活躍促進は日本企業にとって中心的なテーマといえます。今回の講義が会員各社にとり、そうした経営課題解決のヒントになることを期待します。素晴らしいご講演をいただいた村上様には、この場を借りまして、改めて御礼を申し上げます。