商社が分かる

商社のダイバーシティ~Diversity & Inclusion~

第10回ダイバーシティ推進セミナー
「個人も組織も成長するダイバーシティ経営」

2019.12.4ダイバーシティ推進

佐々木 常夫(ささき つねお)氏

(株)佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役

1969年東京大学経済学部卒業後、東レ株式会社に入社。繊維事業企画管理部長、プラスチック企画管理部長、経営企画室長などを経て2001年東レ取締役、2003年(株)東レ経営研究所社長、2010年から現職。

12月4日、佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表 佐々木常夫氏を講師にお招きし、第10回ダイバーシティ推進セミナーを開催しました。

私生活では自閉症のご長男と肝臓病とうつ病を患われる奥様のお世話に忙殺されながら、会社では大阪・東京と6度の転勤、破綻会社の再建やさまざまな事業改革など多忙を極められ、それに対して全力で取り組まれてこられました。その実績が認められ、東レ同期トップで取締役となられ、2003年に東レ経営研究所社長にご就任されました。

過酷な運命を引受けながら、社長に上り詰めた佐々木氏より、タイムマネジメント、ワーク・ライフ・バランス、リーダーシップ、ダイバーシティ等に対するご経験に裏付けされたお考えをお伺いしました。参加者は、勇気と希望、多くのヒントをいただけたのではないかと思います。

<ご講演のポイント>

① タイムマネジメント(生産性向上)はすべての基本 ~ 良い習慣は才能を超える

私は仕事を徹底的に効率的にやらなくてはいけないという状況にありましたから、タイムマネジメントを徹底しました。誰もが仕事と私生活・家庭を充実させること求めているのに実現できない最大の障害の1つが「長時間労働、非効率労働」です。仕事の成果と長時間労働とは必ずしも関係ない。部下に「仕事の進め方の基本10ヵ条」を毎日のように言って習慣付けるように伝えました。

<仕事の進め方の基本10ヵ条>

①計画主義と重点主義 仕事の計画策定と重要度を評価する すぐに走り出してはいけない
②効率主義 最短コースを選ぶこと
③フォローアップの徹底 自らの業務遂行の冷静な評価を行い、次のレベルアップにつなげる
④結果主義 仕事はそのプロセスでの努力も理解するが、その結果で評価される
⑤シンプル主義 事務処理、管理、制度、資料、会話、メールはシンプルを以って秀とする
⑥整理整頓主義 仕事の迅速性に繫がる
⑦常に上位者の視点 自分より上の立場での発想は仕事の幅と内容を高度化する
⑧自己主張の明確化 しかし他人の意見を良く聴くこと
⑨自己研鑽 向上心は仕事を面白くする
⑩自己中心主義 自分を大切にするということは人を大切にするということ

良い習慣は才能を超えると考えています。少々能力がなくても、良い習慣を持っている人は毎日確実に成長をしていき、才能がある人を抜いていくんです。良い習慣というのは、例えばこういうことです。これも上記10ヵ条と一緒に、課長の頃部下に伝えていました。

<良い習慣15ヵ条>

  • ① 3年で物事がみえてくる 30才で立つ 35才で勝負は決まり(今は志があればいつでも伸びると考えている)
  • ② 礼儀正しさにまさる攻撃力はない
  • ③ 朝出勤のとき走る者 遅刻する者は数歩の遅れをとる
  • ④ 沈黙は金にあらず 正確な言葉、表現に気を配ること
  • ⑤ 読書の価値は本の数ではない 多読家に仕事のできる人は少ない 本は選べ
  • ⑥ 名刺の持ち方、出し方、保管の仕方は、他人に対する思いやり、関心の程度を表わす
  • ⑦ 一つの外国語マスターは最低の条件
  • ⑧ 酒の飲み方はその人の品性を表わす 酒の上での失敗は高くつく
  • ⑨ メモをとるとよく覚え 覚えるとすぐ使う 使うと身につく
  • ⑩ 東レは最終の職場ではない
  • ⑪ 男にとって女性への考え方、対応は人生や他人に対する考え方の程度を表す
  • ⑫ 子供は親の鏡、親は子の鏡 子供の教育に関心を持ち、家庭、学校、社会に責任をもつこと
  • ⑬ 出世はその人の人間性、能力、努力の一つのバロメーター
  • ⑭ 友だちは大切にしよう 友情は手入れが必要
  • ⑮ 人生に必要なのは勇気と希望とSome Money 身分相応の金遣い

② ワーク・ライフ・バランスを実現する仕事術

タイムマネジメントのポイントは大きく2つです。
・「最も大事なことは何かを正しくつかむこと」
・「時間の管理ではなく、仕事の管理であるということ」
以下はポイント抜粋。

①計画先行・戦略的仕事術 戦略的計画立案は仕事を半減させる
仕事は発生したときに品質基準を決める 過剰品質の排除
デッドライン(締切)を決めて追い込む
時間予算の把握(確実に使えるのは3割)
部下力の強化(上司の注文を聞く 上司の強みを活かす 上手なコミュニケーション)
②時間節約・効率的仕事術 プアなイノベーションより優れたイミテーション
ビジネスは予測のゲーム 常に予測しフォローアップ
長時間労働は「プロ意識」「想像力」「羞恥心」の欠如
Emailは正確、簡潔に 時にメールより電話
③時間増大・広角的仕事術 パレートの法則(2割は8割)仕事を捨てる やらないで済ます 他の選択肢の提案
出ない 会わない 読まない 本当に人に会わなくてはならないか
上司との付き合い方は最重要課題
2段上の上司との上手な付き合い方
会議は最小限に ミーティングは頻繁に

③ 自分と人を活かすリーダーのマネジメント

私のリーダーの定義は、一緒に仕事をしていると、勇気と希望がもらえるような人です。働き方とは生き方のこと、働き方、生き方には決意と覚悟が必要です。

  • ① 自分なりの考え方を確立させる 主体性を持つ 働き方とは生き方のこと
  • ② 目的を明確に 自分のミッションは?
  • ③ 優先順位を決める 何が重要なことか
  • ④ 仕事の効率化の両輪は コミュニケーションと信頼関係
  • ⑤ その人に合わせた対応を 人の強みを引き出す
  • ⑥ 多くを語るな 多くを聴け
  • ⑦ 時間的(精神的)余裕を持つ
  • ⑧ 自分流のリーダーのあり方を 自然体で

セミナーの様子

④ 経営戦略としてのダイバーシティ

ダイバーシティの前提は、個人として自分のブランドを確立することです。自分の得意技を磨いておくことが大切です。自分はどんな人間で、どう考えるのか。何をしたいのか。個の強化とそれを活かす組織風土作りが必要です。

日本貿易会ダイバーシティ推進コミッティ座長
池内 貴由 氏
(豊田通商㈱人事部 D&I推進室 部長補いきワク活動推進プロジェクト リーダー)

ワーク・ライフ・バランスからタイムマネジメントの重要性、更にはダイバーシティ&インクルージョンの必要性について、ご自身のご経験や体験をベースにユーモアを織り交ぜながらお話を頂き、当日の参加者にとってそれらを推進する上での具体的なアクションや、何をしたら良いのかの気付きを頂けた内容でした。また私自身もリーダーのマネジメントについてご教示頂いた内容を、実践し行動に落とし込むよう努力したいと思いました。

昨今はダイバーシティの考え方や働き方改革の浸透が進みつつありますが、今回のご講演を通してダイバーシティ経営の原点・基本に立ち返るヒントになったのではと思います。素晴らしいご講演を頂いた佐々木様には、この場をお借りして改めまして御礼申し上げます。