商社が分かる

商社のダイバーシティ~Diversity & Inclusion~

第11回ダイバーシティ推進セミナー
「海外駐在経験のある商社ウーマンによるパネルディスカッション 第2弾」

2020.2.12ダイバーシティ推進

日本貿易会は2014年から会員各社のダイバーシティ推進を支援するため、ダイバーシティ推進コミッティを人事委員会の傘下に設置し活動を展開しています。

11回目となる今回は、前回も大変好評であった「海外駐在経験のある商社ウーマンによるパネルディスカッション」を下記のとおり開催しました。

商社業界では、女性比率も徐々に上がり活躍が進んできている一方で、女性社員の海外駐在率はまだまだ低いという状況があります(特に営業部門)。そのような中で、先陣を切って海外駐在を経験し、活躍する商社ウーマンは貴重なロールモデルです。今回、ダイバーシティ推進コミッティ座長をモデレーターに、住友商事、豊田通商、丸紅、三菱商事から4名のパネリストをお迎えし、これまでのキャリア、海外駐在の掴み方、ライフイベントとの両立、海外での仕事と生活(日本との違い)、駐在を経験して良かったこと等について発表いただき、その後、パネルディスカッションおよび質疑応答を行いました。会員商社からの女性社員約110名で会場は満員となり、参加者は熱心に耳を傾け、質疑応答も活発に行われました。その後の交流会も、約50名の方に参加いただき、商社業界のネットワーク作りの機会となり、大変盛況でした。

参加者アンケートも大変満足度の高い評価をいただき、「自らチャンスを作りキャリアを広げていった姿はとても印象的だった」、「自分のキャリアに枠を設けないという点において背中を押してもらえた」という前向きな意見が多く寄せられました。

パネリストからのメッセージ

Panelists
11年入社 駐在地:ブラジル、モザンビーク
住友商事㈱ 電力EPC第二部第三チーム主任
入社以来、インフラ事業部門に所属。電力EPC第二部にてブラジル、インド等における電力案件開発を担当した後、ブラジルにて2年間ポルトガル語の語学研修とインフラ案件開発に従事。その後、モザンビーク・マプト事務所に赴任、発電所建設履行フォロー及び新規案件開発を行った。17年末に東京へ帰任後、主にサブサハラ地域の電力分野案件開発に従事。

「悩むよりも、一歩踏み出す勇気」

「比較的若い時期に途上国駐在を二度も経験できたのは、とても幸運であり、キャリアの土台になりました。私の場合は途上国だったため、特にカルチャーショックを受けたり、すぐに頼る人もいなくてどう動けばよいか分からなかったり苦労した事も多々ありましたが、大きな機会に取り組むことで成長に繋がる経験がたくさんできましたし、新興市場でパイオニアになることはとても楽しいものでした。駐在を通して、友人が増え、視野が広がり、かけがえのない経験ができました。途上国駐在というと心配される方も多くいらっしゃるかもしれませんが、パイオニアになれるメリットもありますし、会社のサポートもきちんとありますので、『なんとかなる』。考え過ぎず、一歩踏み出す勇気が大事だと思います。」

Panelists
94年入社 駐在地:シンガポール
豊田通商㈱ 投資・審査部東京投資・審査第二G部長補
トーメン入社、入社以来審査及びリスクマネジメント部門に所属。07年グローバル職(総合職)に職種転換。14年より3年間シンガポール現地法人のリスクマネジメント長及びアジア、豪州地域(豪亜極)のリスクマネジメント統括として与信、コンプライアンス等に従事。

「業務職から総合職への転換、会社の合併を経験。どんどんチャレンジして欲しい」

「2006年のトーメンと豊田通商の合併を転機に総合職への職種転換を実現しました。職種転換にチャレンジした理由は、一般職の頃から総合職の業務に高い関心があり、やってみたいという気持ちが強かったからです。そして、何か専門性を身に付けたいと考えていた時に、海外の与信管理体制構築の担当となり、海外与信に携わる事で、海外拠点への出張も多くなり、駐在のチャンスに繋がりました。海外駐在に行けるとは夢にも思っていなかったのですが、駐在を経験し、仕事の幅や視野が広がり、多様性ある部下のマネジメントの経験もできました。これからの皆さんにはどんどんチャレンジして欲しいと思います。」

Panelists
07年入社 駐在地:オーストラリア
丸紅㈱ フォレストプロダクツ本部チップ・建材部 バイオマス課担当課長
入社後、主に植林事業と製紙原料となる木質チップのトレードを担当。15年より、植林事業会社の取締役と海外店駐在員との兼務にて豪州メルボルンに駐在。18年に帰国、半年間の産休・育休を経て、現在は木質バイオマス燃料の案件開発に従事。

人生は「トレードオン」

「『営業に出たい』『駐在に出たい』という希望は、多くの人に伝えました。伝える時は、ただ出たいと言うのではなく、『私を出して頂いたらこういうメリットがあります。こういう成果を持って帰ります』となるべく具体的に伝えるようにしていました。また回りに応援して頂けるように、目の前の仕事も結果を出すように一生懸命取組んだことを覚えています。また結婚後の上司とのキャリア面談では、駐在時は単身赴任で行くことや出産などのライフプランも明確に伝えました。
人生は『トレードオン』ということを皆さんにお伝えしたいです。女性は選択肢が沢山あって、結婚・妊娠・駐在など、自分もそうでしたが、ゼロサムの思考に陥りがちです。是非、皆さんには自分の価値を高めて、自分の欲望に素直に、実現したいことは2つ・3つと手にして欲しいと思います。」

Panelists
93年入社 駐在地:ドイツ
三菱商事㈱ 環境R&D 部総括マネージャー兼水素・環境事業チームリーダー
自動車部入社後、ポーランド三菱自動車販社立上げ等欧州自動車販売事業を担当。その後リチウムイオン電池等の事業開発を経て、2016年独国三菱商事環境事業部長として母(74歳)、息子(小5)を連れて赴任。2019年に帰任し環境R&D事業部にて水素事業開発に従事。

「自分の枠を越える」&「変化を恐れず、自ら変化のチャンスを取りにいく」

「これまでの人生を振り返ると、自分の中にある価値観がすごく邪魔をしていて『あの時、ああしておけばよかった』『こうしておけばよかった』と思うことがたくさんあります。でも、3年前にドイツに赴任する時、ずっと諦めてきたことを、勇気を出して叶えることができ、とても良かったと思います。皆さんはより多くのチャンスが目の前にあって、『自分の足かせを自分で外す』ことが一歩前に出るために一番必要なのだと思います。商社は、たくさんの選択肢を与えてくれるところだと思いますので、自分の殻を打ち破ってそのチャンスを十分に生かしてほしいと思います。より豊かな人生を生きていくために、皆さんにお伝えしたいことは2つです。まず『自分の枠を超えていくこと』。そして『変化を恐れず、自ら変化のチャンスを取りにいくこと』。これらは商社が目指していることと同じ。心が弱っている時ほど、自らに言い聞かせて欲しいと思います。」

Moderator
豊田通商㈱ 人事部D&I推進室部長補 いきワク活動推進プロジェクトリーダー
2019年度ダイバーシティ推進コミッティ座長

「所属や駐在地の異なる4人のパネリストが、海外駐在のきっかけから新興国でのご苦労や仕事と家庭の両立、更には今後のキャリアについて、生々しく且つユーモラスにお話し下さり、多くの参加者に海外で働く事への勇気や希望として伝わったのではと思います。今後益々多くの女性が、海外駐在にチャレンジされ、ご活躍される事を祈念しています。」

セミナーの様子
交流会の様子

今回のパネルディスカッション第2弾も、お申込みをお断りせざるを得ない程、多くの申込みをいただきました。商社の女性総合職の皆様が海外駐在に強い関心と少しの不安をお持ちだと分かりました。
世代も所属も駐在地も異なる4者4様のパネリストに共通していたのは、“異動も駐在も希望は諦めることなく伝え、叶えてきたこと”でした。時に、自分の価値観や外部要因で望んでいない業務に就くことがあっても、目の前の業務に一生懸命取り組んでいると、サポートしてくれる人が現れ、いつか実現する。参加者の多くから、「パネリストの皆さんが悩みながらも自らチャンスを作りキャリアを広げていった姿に勇気づけられた」という趣旨のコメントをいただきました。パネリストがおっしゃった「なんとかなる」「チャレンジ」「欲望に素直に」「自分で自分の足かせを外す」等.は、参加者全員に響いたのではないかと思います。パネリストの皆様、モデレーターの池内様、お忙しいところ、本当にありがとうございました。皆様の益々のご活躍を期待しています。(政策業務第三グループ 中村志保)