商社が分かる

商社のダイバーシティ~Diversity & Inclusion~

第14回ダイバーシティ推進セミナー
「海外駐在経験のある商社ウーマンによるパネルディスカッション 第3弾」

2023.1.17女性活躍推進

日本貿易会では、2014年から人事委員会の傘下にダイバーシティ推進コミッティを設置し、商社業界のダイバーシティ推進を後押しする活動を展開しています。第14回となる今回のセミナーでは、これまで大変好評であった「海外駐在経験のある商社ウーマンによるパネルディスカッション」の第3弾を開催しました。

当日は、ダイバーシティ推進コミッティ座長をモデレーターに、JFE商事株式会社、住友商事株式会社、双日株式会社、丸紅株式会社から4人のパネリストをお迎えし、これまでのキャリア、海外駐在のつかみ方、ライフイベントとの両立、海外での仕事と生活、駐在から得たものについて発表していただいた後、パネルディスカッションを行いました。

今回は、会場とオンラインによるハイブリッド開催とし、会場では約60人、オンラインでは約130人の方にご参加いただき、質疑応答も活発に行われました。その後の交流会は、パネリスト、モデレーターも交え参加者同士のネットワーク構築の機会となりました。

パネリストからのメッセージ

PANELISTS
2002年入社、駐在地:上海、シドニー
JFE商事株式会社 財務経理部 資金為替室 室長
一般職として入社し、財務部で外為業務(資金決済、預金等の実務)を担当。海外グループ会社の管理運営、支援を行う海外業務部へ異動後に、総合職へ転換。2011年に上海、2014年にシドニーに駐在。現地法人でアドミ業務を担当。上海は2年、シドニーは2年9ヵ月駐在。

「ブレない軸を持つことで、どんな変化にも対応できる」

一般職として入社しましたが、5年目に異動した海外業務部では、職種区分に関係なく大きな仕事も任されていたので、その後の総合職への職掌転換は自然な流れでした。2011年当時は、社内で女性2人目の駐在員だったこともあり、自分が海外に出ることによって、若手女性社員の道を開くきっかけになれば良いなと考えていました。駐在先で大事にしていたことは、ブレない軸を持つことです。揺らがない軸を持つことで、環境や時代の変化へもきちんと対応できると思います。また、部下や現地社員は駐在員の振る舞いをよく見ており、言葉に説得力を持たせるためには、日頃の姿勢や行動が大事だということも学びました。これらは、今の管理職として働く上での土台になっていると感じています。

PANELISTS
2011年入社、駐在地:シンガポール
住友商事株式会社 人事厚生部 労務チーム 課長代理
入社以来、人事で経験を積む。採用、異動や人事制度関連業務を経て、2016年よりトレイニーとしてシンガポールに駐在し、アジア大洋州地域全体の人事業務に従事。2018年に帰任後、約1年10ヵ月の産休・育休を経て、現在は働き方改革や育児・介護関連施策等を担当。

「『きっとなんとかなる』というマインドを持ってチャレンジしてほしい」

入社前から海外勤務を希望していたので、早い段階で海外に行けたことは良い経験でした。海外駐在は視野や人脈が広がり、現場を知ることができる貴重な機会です。長い会社人生では、その時々のタイミングで葛藤があると思いますが、そういう悩みもあってよい。私自身も、「きっとなんとかなる」というマインドを忘れずにいたいですし、皆さんにもそのような気持ちで目の前のことにチャレンジしてほしいです。人事の目線からお話しすると、上に立つ立場の人は、部下がどのようにキャリアを築いていきたいのか耳を傾けてみてください。「家庭があるから駐在は難しいだろう」などの思い込みで部下の選択肢を狭めることのないよう、丁寧なコミュニケーションを大切にしてほしいです。

PANELISTS
1999年入社、駐在地:ロンドン
双日株式会社 取締役会業務室 室長
大阪法務課に配属後、米国研修、育児休暇を経て、国内外の法務業務(金属資源・エネルギー・生活産業等)を担当。2016年より、夫と娘(当時6歳)と共に英国駐在。2019年に帰任後、法務部第二課課長を経て、現在は取締役会業務室室長として取締役会事務局を担当。

「一度きりの人生、自分のしたいことを追求してほしい」

女性はとても真面目ゆえ考え過ぎてしまう人が多いと思いますが、人生は一度きり。時には周りの人に相談しながら、自分の目指すべきところに真っすぐ向かってほしいです。社内のルールがない、制度が整備されていないと悩む人もいるかもしれませんが、できるようにするためにはどうしたらよいかを考えることも大切です。私はこれまで法務畑を歩んできましたが、現在はプラスアルファの軸を作るため模索を続けています。自分が何をしたいか迷ったときは、自分は何を大切にしているか、何に燃えるか、何をしているのが好きかを自己分析してみるとよいかもしれません。そうすることで、自分のやりたいことが見えたり、軸をつかめたりするのではないでしょうか。

PANELISTS
2006年入社、駐在地:シンガポール
丸紅株式会社 電力本部 電力戦略企画室 企画課長
入社以来、電力本部に所属。電力経理部3年、アジア地域のIPP営業部で10年の経験を経て、2019年よりシンガポールの電力会社へCFOとして出向。2022年に東京へ帰任し、本部全体の各種運営・戦略履行に携わる。駐在には夫(勤務先の配偶者転勤帯同制度にて休職)と子供(赴任時1歳半)を帯同。

「複数の経験、スキルを掛け合わせるこの時代に、駐在でしか得ることのない経験を」

女性は120%できると思わないと手を挙げないと言われることがありますが、これからのキャリアは複数の経験・スキルの掛け合わせの時代です。駐在先でしか得ることができない経験があるので、少しでもできそうだと思ったタイミングでチャレンジしてほしいと思います。家庭と仕事の両立という意味では、自分の守るべきものがあると、どうしても自分の思いだけでは決断できず、もどかしい思いをすることがあるかもしれません。私自身、家族帯同での海外駐在を実現するに当たっては、家族の在り方やお互いのキャリア形成について、パートナーと何度も話し合いを重ねました。駐在だけでなく、今後さまざまなライフイベントを迎える皆さんには、パートナーやそのご家族の思いも大切にしながら、それぞれの道を模索してほしいと思います。

MODERATOR
伊藤忠商事株式会社 人事・総務部 採用・人材マネジメント室長
(2022年度ダイバーシティ推進コミッティ座長)

商社におけるキャリア形成上、海外駐在という特徴的な機会への挑み方や、それに限らず仕事との両立、役職者となっていく上での心構えなど、さまざまなご経験をされたパネリストの方のお話を参加者の皆さんと共有し考えることができたことは、大変貴重な機会となりました。ロールモデルは一つではないことから、多様なご経験やお考えを参考に、皆さん流のやり方や道を見つける一助となったのではないかと思います。私自身も人事制度やキャリア形成支援の参考となるいろいろな刺激や気づきを得ることができました。

参加者の声

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交流会
  • 女性は完璧を求め過ぎる傾向があるものの、一歩踏み出すことで道は開けていくというメッセージに勇気づけられました。
  • 良い意味で「楽観的」であることがキャリア形成にはポジティブに働くという点が皆さん共通しており、自分で枠を作らずにやってみる姿勢の重要性を感じました。
  • 結婚や育児と海外駐在は両立しえない(どちらかを選ぶ必要がある)と考えていましたが、決してそんなことはなく、むしろ育児の環境のために海外駐在を選択するという考え方もあるのだなと、目からうろこでした。
パネルディスカッション
質疑応答

パネルディスカッションを終えて
2016年、2020年に続き、第3弾となった今回のパネルディスカッションでは、会場とオンラインのハイブリッド開催とし、過去最多となる200人近くの方にご参加いただきました。実体験に基づいた四者四様の駐在経験、キャリア形成を伺い、さまざまな困難を柔軟な考え方で乗り越えてこられたパネリストの皆さまに勇気づけられた方も多いのではないでしょうか。今回のパネルディスカッションが、参加者の方々の不安や悩みを解消し、次のステップにチャレンジするきっかけにしていただけたのであれば幸いです。ご登壇いただいたパネリスト、モデレーターの皆さま、本当にありがとうございました。(政策業務第三グループ)