商社が分かる

商社のダイバーシティ~Diversity & Inclusion~

~Voice~ 活躍する商社パーソン
「目の前のことに一生懸命取り組むことの大切さ」

2022.12.15女性活躍推進

松尾まつお あや 氏(右)

丸紅米国会社
Corporate Planning & Coordination Team, Manager

2007年に中途入社。地域総括部で海外拠点の管理・運営に携わる。2016−18年経団連出向。2020年9月から現職。

遠山とおやま 久美子くみこ 氏(左)

丸紅米国会社
Finance Team, Senior Manager

2008年に入社してから一貫して財務業務に携わる。2015年から2年間、情報企画部に社内出向。2021年4月から現職。

現在、丸紅株式会社では822人の社員が世界各地で活躍しており、うち女性駐在員数は45人です(2022年4月現在)。今回は、ニューヨークにある丸紅米国会社に駐在中の松尾さんと遠山さんに、これまでのご経験と後進へのメッセージを伺いました。米国駐在をかなえられた裏には、目の前のことに着実に取り組んでこられたお二人の姿がありました。

これまでのキャリアと印象深い経験

松尾:私は2007年に丸紅に中途入社し、地域総括部で主に海外拠点の管理・運営を担当してきました。途中2回の産休・育休を挟み、経団連への出向を経て、2020年9月から丸紅米国会社の企画室に所属しています。

元々海外に関わる仕事を志望して転職したのですが、入社3年目に担当した地域総括部アジア大洋州チームでの業務が印象に残っています。担当していたミャンマーが民政移管を控えていたため、開国後にいち早くビジネスを開始できるよう、当時軍事政権下で規制の多かった現地に赴いて情報を収集し、市場調査や新事務所の候補地選定などさまざまな対応を行いました。この経験から、全世界にネットワークを持ち、時代の先を見て動く商社のダイナミズムを実感し、その後も今に至るまで当社のインフラを支えるという気持ちで海外拠点の管理・運営に携わってきました。

米国会社では、これまで担ってきた管理・運営業務に加え、新規ビジネス創出支援など、今までとは全く異なる分野も担当しており、非常にやりがいを感じています。

遠山:2021年4月に丸紅米国会社に赴任してから1年半が経過し、現在は在米事業会社へのインハウス・バンキングとファイナンス関連業務を担当しています。私のバックグラウンドを少しお話しすると、元々大学では理系を専攻していました。就職活動を始めてさまざまな業種に出会い、その一つとして商社の存在を知りました。当時、少子高齢化や製造業のガラパゴス化などが日本の課題とされており、国内外から幅広く収益を得る商社に魅力を感じ、2008年に丸紅に入社しました。入社後は主に財務業務に携わり、決済業務や借入の条件交渉から社内制度等の企画、情報企画部への社内出向など、さまざまな経験をしてきました。

海外における女性の働き方 ─Inclusion & Equityの実現へ

遠山:現在、当社における新卒での女性総合職の採用比率は40%近くまで上がっていますが、私が入社した2008年当時は20%とまだまだ少数でした(下表)。そんな中、4−5年目に関わっていたプロジェクト案件でシンガポールへ出張したことが、その後の自分の考え方に大きく影響していると思います。当時、日本で財務の仕事をしていると、社外との会議で女性が出席してくる機会は少なかったのですが、プロジェクトを一緒に行っていたシンガポール企業では、法務・財務の主担当が女性、さらにファイナンス契約をレビューする弁護士も女性でした。海外ということもあり特別驚きはなかったのですが、今思うとこれがロールモデルを見つけた出来事であり、早い段階でこのような機会に恵まれたことはとても良かったと思います。現在の米国での業務でも、社外との会議で女性がいないことは少ないですし、リーダーとして出席しているケースも多くあります。また、こちらでは男女問わず全員が役職とそれに伴う担当業務を持ち、各自が専門分野を明確に持っている印象があります。

松尾:そうですね、私も日本での会議では女性は自分一人という状況が当たり前でしたが、米国企業との会議にはトップも含め女性が複数出てくることが多いです。ダイバーシティは前提としてあり、その先のInclusion & Equity (包括性と公平性)の実現に意識が向いているように思います。あとは、女性という観点から少し外れますが、先ほど遠山さんも触れた通り、日本企業との大きな違いはジョブ型(職務内容を明確に定義して雇用契約を結び、職務や役割で評価する雇用システム)が導入されているという点ではないでしょうか。仕事の境界線が明確なため、業務をお願いする際には、その人の職務範囲に入っているかという点を意識しています。

これまでの経験が形になった米国駐在

遠山:米国に駐在することは新入社員のころからの夢だったので、今こうしてかなえることができてとてもうれしいです。商社は米ドルによる投資や取引をたくさん行っていますので、本場のマーケットがどのように回っているのかを勉強することは、財務を専門とする者として貴重な経験になると感じています。

一方で、現在の業務を全うするため、これまでの経験を総動員しているようにも思います。海外拠点は本社に比べて人数が少なく、いったんはそのメンバーでさまざまな問題に対応しなければなりません。これまで経験してきた業務は楽しい分野、かっこいい分野ばかりではありませんでしたが、それぞれ真剣に取り組んできたことがここにきて生きています。

実はここまでの道のりは決して真っすぐではなく、もう駐在には行けないかもしれないと思った時期もありました。そのようなときでも、自分の目標を忘れずに、どこかでこの経験が役に立つはずと信じて目の前のことに精いっぱい取り組んでいれば、その時々の上司だけでなく、隣の部署の方、その業務で関わった方などいろいろな人が見てくれています。そのようなことが積み重なると、ある業務に人が必要だとなったときに思い出してもらえる存在になれるのではないかと思います。


お気に入りのジャズバーにて

私が大切にしている言葉は、新入社員のころに先輩に教えてもらった「遊ぶように仕事をし、仕事をするように遊べ」です。遊ぶときと同じように仕事をすれば、仕事を自分事として捉えることができ、もっと工夫してより良い結果を出したいという思いが自然と出てくるので、クリエイティブに取り組むことができるという意味です。この言葉を大切にしながら、これからも財務の専門家として頼りにされる存在を目指していきたいと思います。


家族帯同での海外駐在

2022年11月 日米南東部会
@フロリダ・オーランドにて

松尾:私も、キャリアパスを考えると駐在は必須と考えていたため、内心ずっと希望していました。しかし、当時は周りに子を帯同する女性駐在員がいなかったためイメージが湧かず、仮に機会をいただいても家庭の状況次第では断らざるを得ないのではないかという葛藤もあり、積極的に駐在したいとは言い出せずにいました。結果的に今回会社が打診してくれたことで、挑戦する勇気をもらったという感じです。夫は自身のキャリアもあり正直乗り気ではありませんでしたが、話し合いを重ねて最終的には一緒に来るという決断をしてくれました。コロナ下の赴任、かつ二人の子供たちは初めての海外生活だったこともあり、家族にとっては大きな挑戦でしたが、2年たった今、こちらの生活にもなじみ、楽しむ余裕が出てきました。

実際来てみると、子を帯同して赴任している他社の女性駐在員と知り合うことも多く、また当社内でも同様のケースが増えてきており、珍しいことではなくなってきていることを実感しています。子を帯同して駐在する際、赴任先でどのようにワーク・ライフ・バランスを維持するかは最も不安に感じる点かと思いますが、今まさに参考事例が積み上がってきているところですので、社内外さまざまな方のケースを参考にしながら、機会があればぜひ前向きに挑戦していただきたいと思います。


インタビューを終えて

米国出張の際に、現地で活躍されている女性駐在員の方にお話を伺う機会をいただきました。オフィスビルが立ち並ぶマンハッタンの中心地で働くお二人は、まさにロールモデルという言葉がぴったりでした。インタビューでは、「目の前のことに一生懸命取り組んでいると、見てくれている人は必ずいる」という温かいメッセージに励まされました。
松尾さん、遠山さん、貴重なお話をありがとうございました。

政策業務第三グループ 乙咩愛海