商社が分かる

商社のダイバーシティ~Diversity & Inclusion~

~Voice~ 活躍する商社パーソン
「互いの仕事を大切に、メリハリと仕事に対するプロ意識を持って」

2019.3.15ダイバーシティ推進

宮下みやした 藏太くらた 氏(左)

三井情報株式会社
執行役員 デジタルトランスフォーメーションセンター センター長

1997年入社。情報産業本部、ITソリューション事業部、ITアウトソーシング事業部を経て、2012年に米国三井物産シリコンバレー店にて3年間駐在。2015年より三井情報(株)へ出向。

伊藤いとう宮下みやした鼓月こづき 氏(右)

三井物産株式会社
コンシューマービジネス本部 不動産事業部 第一事業室長

1996年入社。文書部、通信機械・電線部、情報産業本部を経て、その後社内公募制度を活用し、2006年から不動産事業に携わる。都市開発事業部、三井物産都市開発(株)(出向)等を経て、2017年より現職。

「家族・職場の助け」を得て両立できた夫の海外駐在中の仕事と育児

乙咩:本日はお忙しい中ありがとうございます。今回のインタビューの目的は、夫婦で育児にコミットしながらもキャリアを築くロールモデルの発信です。ダイバーシティ推進の一つである女性活躍には、パートナーの協力が不可欠だと思い、商社で共に活躍しながら家庭も大事になさっているお二人にお話を伺いたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いします。

藏太さん、鼓月さん:こちらこそ、よろしくお願いします。

藏太さん:私たちは2004年に結婚し、その4年後に娘が生まれました。私が米国のシリコンバレーに駐在したのは娘が3歳の時。単身で駐在したので、当時娘の成長に立ち会えない寂しさはありましたが、ビデオ通話をしながらコミュニケーションをとっていました。その間の子育ては妻に任せっきりでしたので、迷惑を掛けたと思います。

乙咩:藏太さんが駐在されていた間、鼓月さんはどのように仕事と育児を両立されたのですか。

鼓月さん:私も夫も、いずれ海外駐在することは予想していましたが、その時にどちらかがキャリアを諦める選択肢はなく、お互いの仕事を大切にしたいというのが共通の思いとしてありました。夫が米国に単身駐在した3年間、私は時短などの制度も利用せず、今までと同じ働き方を続けました。そのような働き方ができたのは当時の職場環境と、家族の助けのおかげだと思います。当時の上司はとても理解があり、常に応援してくれる雰囲気でした。私が担当する仕事もチームで取り組む体制にしてくれ、チームの人にもたくさん助けてもらいました。周りの理解があるからこそ、「私もチームのために貢献しよう」と思いました。また、夫の実家が近くだったので、どうしても残業しなければならない時は、保育園の送り迎えなどを協力してもらい、家族みんなでやりくりしていました。

乙咩:藏太さんが米国駐在の頃、お嬢さんはまだ小さかったと思いますが、いかがでしたか。

鼓月さん:年に3回ほど米国へ行きました。幼い頃から海外へ行く経験をさせてあげられたことは良かったと思います。そのおかげもあって娘は海外に対する抵抗感は少ないと感じます。また、保育園の先生方、祖父母、お友達の家族など幼い頃から私たち以外との大人と接する機会が多いので、コミュニケーション能力は私よりも高いと思います(笑)。

乙咩:忙しい毎日をお過ごしかと思いますが、ご夫婦で何か工夫されていることはありますか。

鼓月さん:私は営業職なので、お客さまとの会食予定が入ること、時期的には残業をすることもあります。お互いのスケジュールを把握するために、二人で共通のカレンダーを作っています。

藏太さん:妻が不在の間は、私が食事を用意します。といっても、出前を頼むこともしばしばで、近所のタイ料理屋さんのシェフは私の顔を覚えています(笑)。家庭での役割分担は、日々の生活の中で自然とできています。また、家ではお互い仕事の話をしないので、そこで仕事と家庭のメリハリがついていると思います。

限られた時間だからこそ、最大のパフォーマンスをあげる


※三井物産(株) サステナビリティレポート2018より抜粋・作成

乙咩:お二人はどのような両立支援制度を活用されていますか。

藏太さん:私が今出向している三井情報は三井グループの中でも一番制度が進んでいるといわれています。在宅勤務制度やX勤務制度(自己都合による時差出勤制度の導入)も充実しており、オフィスにいなければできない仕事は減っています。私自身も家でできる仕事が多い時はそれらの制度を活用しています。

鼓月さん:私は時差出勤制度を活用し、毎朝15分遅く出勤しています。15分遅いだけで、子どもを送り出した後に少し余裕が生まれ、仕事への切り替えもスムーズにいきます。

乙咩:制度をうまく活用する上で心掛けることは何ですか。

藏太さん:働き方改革が進んでいるとはいえ、繁忙期などは、どうしても土日もつぶしてアウトプットしなければいけない時もあります。それを一概に否定するのではなく、メリハリを利かせて切り替えながら対応し、さらに今後は制度を活用しながらも、いかにアウトプットしていくか、を考えなければいけません。制度があることで業務の目標が達成されるのであれば、より活用していくというスタンスでいかないと、本末転倒になってしまいます。

鼓月さん:子育てをしていると、どうしても仕事の時間が制約されますし、物事も子ども軸で考えないといけなくなります。私自身、仕事の時間も子育ての時間も足りないように感じ、フラストレーションがたまった時もあります。しかし、時間が限られているのは誰でも同じなので、「この時に集中しよう」という集中力が仕事・子育てそれぞれに活かされてきたと感じます。限られた時間だからこそ、その時その時を大切に、きちんとパフォーマンスを上げようと強く思うようになってきました。


乙咩:上に立つ立場として、気を付けていることはありますか。

藏太さん:特定の人間に仕事が偏ることのないように、いかにバランスよく仕事をアサインしていくかを意識しています。現実的にはそう簡単にはいきませんが、この人がいないとダメというシチュエーションにならないように気を付けています。

乙咩:鼓月さんの職場の状況はいかがですか。

鼓月さん:両立支援制度(別表)を活用している社員は、男性・女性を問わず、仕事の質も生活の質もどちらも高めたいという意識が強い人が多いと感じます。全社的にも制度を活用している人は増えているのではないでしょうか。

「メリハリと仕事に対するプロ意識の高さ」(蔵太さん)
「仕事を良くして、人生を良くする」(鼓月さん)

乙咩:最後に後進に向けてのメッセージをお願いします。

藏太さん:共働きが当たり前になってくる状況の中でも、仕事の成果が求められる厳しさはますます増してきます。いかにメリハリと仕事に対するプロ意識の高さを持って進めていくかということが大事だと思います。それから、身体が資本ですので、健康に気を配りながら過ごしてほしいと思います。

鼓月さん:これからは、働き方も家庭の在り方もさらに多様化していくのではないでしょうか。時代の変化や多様性に戸惑うことも多くあると思いますが、むしろ前向きに捉えて、自分の生き方・働き方を自分で考え、決めていくことが大切だと思います。人生をより良いものにするため、仕事も生活も充実したものとなるよう私自身も日々思いながら生活しています。


インタビューを終えて

海外出張や海外転勤等が付きものであり、共に忙しいであろう商社のご夫婦がどのように仕事や子育てをこなしていらっしゃるのか、多くの方に参考にしていただけるお話を伺うことができました。ご夫婦として、そしてビジネスパーソンとして、お互いを尊敬し、支え合うお二人の姿がとてもすてきでした。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

政策業務第三グループ 乙咩愛海