商社が分かる

商社のダイバーシティ~Diversity & Inclusion~

~Voice~ 活躍する商社ウーマン
「環境変化を恐れず、自分を成長させるチャンスに― 5回の異動から学んだダイバーシティの大切さ」

2018.9.18女性活躍推進

許斐このみ 理恵りえ

丸紅株式会社
ライフスタイル第二部(人事部より社内出向中)

1998 年丸紅入社。産業プラント部、ソリューション事業部、内部統制システム整備プロジェクトの参加(リスクマネジメント部)、情報企画部、人事部を経て、2017年より現職。

当会が商社業界のダイバーシティ推進プロジェクトを立ち上げた際に、タスクフォース座長としてご活躍された許斐さん。現在は、丸紅株式会社ライフスタイル第二部で、IFME(イフミー)というブランドの子ども靴の販路拡大・海外展開等に挑戦されています。入社以来、多種多様な部署で活躍されてきた許斐さんに、日本貿易会新人職員の乙咩が、ご経験と後進へのアドバイス等を伺いました。

「ギャップから生まれるビジネスがある」と気付いた学生時代

丸紅に入社し、今年(2018年)で21年目を迎えました。入社当時は、同期89人中、女性総合職は10人と、女性総合職の採用はまだまだ少ない時代でした。とはいえ、大学時代から女性が少ない環境に慣れていた私は、あまり気になりませんでした。

私が商社を志望したのは、学生時代のトルコへの留学がきっかけです。1年間トルコで暮らす中で、さまざまなギャップがあることに気付き、そのギャップがビジネスチャンスになるのではと思いました。ささいなことですが、例えば、海を泳ぐとウニがゴロゴロいるのに、現地ではウニを食べないことや、イスラムの国は清潔さを重んじるのにトルコのトイレには日本にあるようなウォシュレットがないことなど。たった1年トルコに住んだだけでこれだけのギャップが見つかるならば、きっと世界中を見渡した時にはもっといろいろなギャップがあって、それをビジネスにつなげることができれば面白いのではないか、総合商社だったらそのような発想を生かしたビジネスができるのではないかと思い、入社を決めました。

5回の異動から学んだダイバーシティの大切さ

商社では一つの分野を専門としてキャリアを重ねる方が多い中で、私の経歴は少し珍しいかもしれません。現在の部署は6ヵ所目の部署となります。入社後、配属された産業プラント部では、私が初めての女性総合職でした。その後、入社6年目に、内部統制システム整備に関するプロジェクトの新規立ち上げに参加し、そこでの経験がダイバーシティの大切さに気付くきっかけとなりました。このプロジェクトは、当時、日本に前例もなければ知識を持った人も少なく、プロジェクトメンバーとゼロから取り組みました。この取り組みを通じてゼロから新しいものをつくる時、キャリアや性別の異なる人がいればそれだけ多様な意見や発想があり、それはとても大事なことだと感じました。女性だから、男性だから、ということではなく、同質性より多様性がある方が、多彩なものが生み出されることに気付くことができたのです。


その後、出産・育休を経て復職と同時に人事部へ異動しました。ここが転機となりました。復職時、入社10年たち、そろそろ「自分の柱」を見つけたいという思いがあり、当時担当していたシステムの分野でエキスパートを目指すか、新しい分野に挑戦するか、とても悩みました。人事部への異動の打診を受けた時、当時の人事部長に相談したところ、「今、力を入れているワークライフバランスの取り組みには、許斐さん世代の女性総合職の意見が必要。ぜひ力を貸してほしい」と言われ、やりがいを確信し、私が役に立てるのであればと思い、異動を決意しました。

そして、さまざまな社内のデータを見るようになり初めて、自分より上の世代の女性総合職の割合がとても少ないことを知りました。先ほど申し上げた内部統制整備プロジェクトの経験等から、同質性より多様性の大切さを身をもって感じていましたので、これはなんとかしなきゃという思いが湧き上がりました。結果、9年間人事部で女性総合職の活躍を中心にダイバーシティ推進に力を入れて取り組み、私が入社した当時0.9%だった女性総合職比率も、現在は約10%まで高めることができ、当社における女性活躍推進はますます高まっています。

周りの人の支えがあったから
―「伝えること」で見つけた自分なりの方法

子どもを出産後、特に復職後3年ぐらいは、ほとんど記憶がないほど忙しい毎日でした。それでも、仕事と家庭を両立できる方法を見つけてきました。というより、仕事を辞めることが自分の選択肢にはなかったのです。復職後は人事部にいましたので、時短のことなどを気に掛けてくれる人が多く、とてもありがたかったです。また、職場以外でも、家庭では私と夫のキャリアの重みは同じ、男女のキャリアに違いはないよね、ということを夫婦で理解し合いました。そして、地域のママ友の助けも大きかったです。どうしても早く帰れない時は保育園のお迎えを頼んだり、その代わり週末はわが家で預かったりと、助け合いました。そうした中で、特に工夫したことは、日頃から自分の思いや状況を言葉にして周りに伝えることです。行き詰まりそうになった時、心配事がある時、助けが必要な時は、早め早めに相談するようにしました。すると、思いがけないところでサポートをいただけたり、物事がうまく運んだりすることが多々ありました。黙っていると何も起こらないけれど、周りに伝えることで助けてくれる人が必ずいます。今商社で働く女性の皆さんも決して一人で抱え込まず、うまく周囲の人の助けを借りながら、乗り越える方法を見つけてほしいと思います。

「明るく、楽しく、前向きに」

課長に就任した時、課のスローガンに、「明るく、楽しく、前向きに」という言葉を掲げました。少し幼稚な言葉かもしれませんが、人生のある程度の時間を過ごす仕事だからこそ、どんな時でも前向きに、明るく、楽しく、取り組みたいと思っています。また、人事という仕事は、社員が求めていることを聞いて初めて役割が果たせると思いますので、相談しやすい明るい部署であることを心掛けていました。

http://ifme.jp/

今の部署では、IFMEという子ども靴の販売に携わっています。今後は国内だけでなく、アジアなど海外展開も積極的に行っていきたいと考えています。IFMEは「子どもたちの足を健やかに育む」ことをブランドコンセプトとした産学協同開発の靴です。その良さをもっと広められるよう、これまでと違う発想で、しっかり取り組みたいと思います。

そして、これからも「許斐さんがやってくれて良かった」「あの人がいるといいよね」と思っていただけるような仕事を続けていきたいです。

環境変化を恐れず、自分を成長させるチャンスに

異動や環境変化に対して、不安な気持ちを抱いている女性は多いと思いますが、チャンスが来た時や、これがやりたいと思ったその時が一番良いタイミングだと思います。「キャリアドリフト」という考え方があります。まずは変化に飛び込み急流をがむしゃらに下る、そして、そのうち下流になりスイスイこげるようになる、しかし、そこで安住してしまったら新たな成長はありません。スイスイこげるようになったら次の急流に飛び込むタイミングです。流れに身を任せ、思い切って新しい分野に飛び込むことや、ある程度困難な状況に身を置くことは、自分を成長させる良い機会になります。

女性はとても真面目ゆえに、いろいろ考え過ぎてしまう人が多いのですが、根拠がなくとも、「何事もなんとでもなる」ぐらいの気持ちで少し前に進んでみることで、チャンスが広がると思います。


インタビューを終えて

自分自身も含め、これからのキャリアに不安を感じている方々を勇気付けられるような記事になったらいいな、と思いながらインタビューに取り組みました。
許斐さんのお話を伺い、何事も明るく前向きに取り組むこと、時には周りの助けを借りながら前へ進むことの大切さに気付くことができました。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

政策業務第三グループ 乙咩愛海