地球温暖化(おんだんか)を止めるには、世界中の国々の協力が必要です。しかし、先に経済発展(けいざいはってん)をとげている先進国(せんしんこく)と、経済発展をめざしたい開発途上国(かいはつとじょうこく)では、温暖化問題に対する考え方が異(こと)なり、協力しあうことは簡単(かんたん)ではありません。そこで、1997年に先進国(せんしんこく)の温室効果(おんしつこうか)ガスの削減(さくげん)目標を取り決めた京都議定書(きょうとぎていしょ)がまとめられ、その中で、目標を達成(たっせい)する方法として、他の国と協力して削減に取り組む「京都メカニズム」がつくられました。商社は、この「京都メカニズム」を活用して、国と国の協力を進めることで、世界全体での温室効果ガスの削減に取り組んでいます。
京都議定書(きょうとぎていしょ)で決められた日本の温室効果(おんしつこうか)ガス削減(さくげん)目標は、2008年から2012年までの5年間の排出量(はいしゅつりょう)の平均(へいきん)を、1990年の12億6100万トンから6%削減することです。日本政府は2013年11月に開かれた国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)で、この目標を達成したことを発表しました。2008年から2012年の実質的な排出量の平均は12億7900万トンで、1990年とくらべて1・4%増えていますが、森林による吸収や排出量取引などの京都メカニズム京都メカニズムを使い達成したのです。
また、日本政府は2009年に「2020年までに1990年にくらべて25%の削減をめざす」という目標を発表していました、しかし、その前提としていた原子力発電所の稼働状況が不透明なことから、国内の削減目標を「2005年にくらべて3.8%削減する」という新たな目標をCOP19で発表しました。これは、すでに世界最高水準にあるエネルギー効率をさらに20%改善することを目標としています。
京都メカニズムとは、国と国が協力して、地球全体で温室効果(おんしつこうか)ガスをへらしていくしくみです。温室効果ガスの削減目標がある先進国(せんしんこく)は、自分の国だけでは目標達成(たっせい)がむずかしい場合でも、この京都メカニズムを活用すれば、他の先進国や開発途上国(かいはつとじょうこく)でへらした温室効果ガスの量を、自分の国の削減量として使うことができます。京都メカニズムには、次の3つの方法があります。
- ●共同実施(きょうどうじっし)
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先進国(せんしんこく)同士が共同で温室効果(おんしつこうか)ガス削減(さくげん)を行い、資金や技術を提供(ていきょう)した先進国Aが、先進国Bで削減できた量を先進国Aの目標の達成(たっせい)に利用します。
- ●クリーン開発メカニズム
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先進国(せんしんこく)が開発途上国(かいはつとじょうこく)に資金や技術を提供(ていきょう)し、開発途上国において温室効果(おんしつこうか)ガスの削減(さくげん)を行います。削減した分は先進国が目標の達成(たっせい)に利用します。
- ●排出量取引(はいしゅつりょうとりひき)
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目標達成(たっせい)がむずかしい先進国Aが、目標以上の排出削減(はいしゅつさくげん)に成功(せいこう)した先進国Bから、目標をこえた分の排出量を買い、自分の国の目標達成に利用します。
商社は国と国が協力して温室効果(おんしつこうか)ガスをへらす、京都メカニズムを積極的(せっきょくてき)に進めています。アジア諸国(しょこく)では、先進国(せんしんこく)が開発途上国(かいはつとじょうこく)で温室効果ガス削減を行う「クリーン開発メカニズム」を多数実施(じっし)しました。養豚場(ようとんじょう)内の豚の糞尿(ふんにょう)や、でんぷん工場から出るメタンを集めて燃やす事業(じぎょう)のほか、オゾン層を破壊するフロン類の回収(かいしゅう)・燃焼(ねんしょう)事業(じぎょう)などを行い、日本の温室効果ガス削減に利用できる排出権(はいしゅつけん)をつくり出しました。
また、先進国同士で排出量を売買(ばいばい)する、「排出量取引(はいしゅつりょうとりひき)」をもっと活発(かっぱつ)にするために、排出量を売りたい国と買いたい国を取り持つ会社を、商社が共同で設立しています。このように商社は、京都メカニズムを事業として行うことで、世界全体での温室効果ガス削減と、日本の削減目標の達成(たっせい)に協力しています。
メタンガス回収施設(チリ)
メタンガス回収施設(フィリピン)