農薬の大量使用、工場などから化学物質(かがくぶっしつ)が流れ出ることによる土壌汚染(どじょうおせん)が、世界で問題となっています。土壌汚染は土だけでなく、その下にある地下水を通して、どこまでも広がる危険(きけん)があります。商社は、さまざまな方法・技術を使って、世界各地で土壌汚染の防止や汚染された土壌の再生に取り組んでいます。
みなさんも着ることがある木綿のシャツ。その原料となる綿花(めんか)栽培(さいばい)にも、多くの農薬が使用されている場合があります。農薬の使用は収穫量(しゅうかくりょう)を増やしてくれますが、大量に使いすぎると、土壌(どじょう)や水質の汚染(おせん)を引き起こし、農作業を行う人の健康にも害をあたえます。農薬の使用をへらして土壌汚染を防ぎながら、農作業を行う人の生活が豊かになる方法が必要です。
土壌汚染(どじょうおせん)を引き起こすのは農薬だけではありません。工場などから出る鉛(なまり)や水銀などの金属、ダイオキシンなど、さまざまな化学物質(かがくぶっしつ)が汚染の原因になります。日本にはこれまで田畑など農地の土壌汚染を防止する法律はありましたが、工場などがあった土地の汚染を取りしまる法律はありませんでした。そこで2002年に「土壌汚染対策法(どじょうおせんたいさくほう)」がつくられ、土壌汚染の調査が行われた結果、多くの汚染が見つかっています。
商社では、これまで農薬や殺虫剤(さっちゅうざい)が大量に使用されてきた綿花(めんか)の栽培(さいばい)を、無農薬に切りかえるオーガニックコットン事業(じぎょう)をインドなどで進めています。オーガニックコットンとは、3年以上農薬や化学肥料(かがくひりょう)を使用していない畑でつくられた綿花のことです。きちんと無農薬でつくられているかは専門(せんもん)の機関(きかん)がチェックして証明(しょうめい)するしくみになっています。農薬を使わないことで最初は収穫量(しゅうかくりょう)がへってしまうおそれがあるため、商社では通常より高い価格で農家から購入(こうにゅう)することを約束し、オーガニックコットンへの切りかえを支援(しえん)しています。
日本国内では、汚染(おせん)された土壌(どじょう)や地下水を微生物(びせいぶつ)できれいにする「バイオレメディエーション」事業を行っています。これは化学物質(かがくぶっしつ)を食べてくれる微生物を使って、有害(ゆうがい)な化学物質を無害化(むがいか)する技術で、汚(よご)れた土壌や地下水が生まれ変わるための新たな方法として期待されています。
世界各地で農業にも工業にも関わっている商社は、さまざまな方法・技術を使って土壌汚染(どじょうおせん)問題の解決(かいけつ)に取り組むことができるのです。
オーガニックコットンの栽培
ダイオキシンの無害化装置